第12話 影のヒーロー

ゴブリンダンジョンが氾濫を起こしたが、市民の避難は順調に進んでいた。なぜならばダンジョンが氾濫を起こすことはそう珍しいことではないからだ。それに加えて今回は探索者となった10名程度が奮闘していた。


しかし、ゴブリンたちはダンジョンからあふれ続ける。これを止めるにはゴブリンエンペラーを討伐するしかないのだが、ゴブリンキングでも中級上位。ゴブリンエンペラーとなると上級下位に位置するモンスターとなる。


つまり、ゴブリンエンペラーに重火器は通用しない。今まで重火器に頼った攻略をしていた自衛隊では手も足も出ないのだ。


そんな調子で攻めあぐねていたが、自衛隊の救援が次々に到着しゴブリンを殲滅していく。最上種はめったにダンジョンから出てこないので防壁を作ってダンジョン外にモンスターが出ないよう閉じ込めるのが最も簡単かつ迅速に行える方法だ。


そうして時間を稼いで、海外の上級探索者へ多大なお金を払い最上位種を討伐してもらうのが今までの日本のやり方だった。


だが、今回はゴブリンダンジョンが今、俺が滞在しているオークダンジョンのある街だった。そして、いつも通り家でパーティーでの攻略について研究している最中にゴブリンが家に何度も襲い掛かってきているのに嫌気がさした。


俺はギルドマスターに連絡を取り、ゴブリンエンペラーが出現しているという情報を得ると、探索者上位クラスの【ドッペルゲンガー】を4体作り出した。なお、これはオークダンジョンを攻略しすぎた影響でレベルアップを繰り返した俺のステータスの余りで作り出したものだ。


そして、その4人を武器を変え、防具を変え、さらには作戦を変えてゾンビアタックさせた結果。ゴブリンエンペラーは討伐された。


これは日本が、自身の国の力のみで上位種のモンスターを討伐した初めての出来事だ。しかも作戦の結果を知るために全て動画を撮影していた。


これがスポンサー契約を結んでいるアメリカの会社の目に留まり、さらに自社の装備が使われたということで提携している装備制作会社との会議の結果。動画は俺のあずかり知らぬところで編集されアップデートされてしまった。


日本は初めての上位種討伐の快挙に国民が熱狂したが、肝心の討伐した集団の個人情報が見つからない。政治家も天皇でさえも探し出そうと画策していたが一向に見つからなかった。


知っているのは、探索者ギルドのギルドマスターと受付嬢。この2人が俺の情報を漏らさなかった理由はただ1つ。この事件後から2人は俺の【ドッペルゲンガー】に監視という名の撮影班が常に付きまとうようになったからだ。

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