第10話 レベリング開始

ギルドマスターが再び俺の家を訪れたのは3日後だった。その時には、レベリングに参加するという4人も一緒に来ていた。


「春樹君。例のレベリングの件なのだが1人につき、月100万円出すと決まった。そしてこの4人をスライムダンジョンで1月面倒を見て貰えないか?」


もはや決まったものと思い込んでいるギルドマスターへ俺は却下を申しつけた。


「確かにやると言いましたが、面倒を見る気はありません。そこは探索者ギルドで面倒を見てください。俺はダンジョンを貸すだけです。なので今回は個人の資料も必要ありません。やる気があれば死にはしないでしょうから。あ。お金はもらいますよ。手間賃として」


こういったのにも理由がある。俺のスキル【読心】で連れてきていた4人の心を読んで見たのだが、どうもやる気が感じられず、というか、生きる意味を失っていた。それは社会人として生きてきたがギリギリの生活に心が折られているのと例のギルドマスター左遷事件で倒産した会社の若い人材だったからだ。


事件の詳細を知って、俺のせいだと難癖つけられるのを避けるためにも可能な限り接触は避けておきたかった。


だがギルドマスターにその思いは伝わらない。まあ話していないので伝わるわけがないのだが・・・。ギルドマスターは難しい顔をして考え込んだ後。


「分かった。ダンジョンでのスライムのポップ管理だけお願いする。面倒は私が見るとしよう」


その後1月、本当にスライムダンジョンを解放して、俺はオークダンジョンの攻略を進めていた。探索者ギルドとしてはオークの魔石が入手できるようになったのでウハウハだったらしい。俺は、スライムダンジョン同様にポップ管理と装備のメンテナンスに気を付ければオークダンジョンを放置できるようにまでなった。


まあステータスが限界なのでこれ以上ダンジョンの管理をするのは無理という判断を下すくらいにはギリギリだったのだが。


この間、例のレベリングを行っていた4人は1人も欠けることなくステータスをALL5にすることができた。今後は個人の裁量でゴブリンダンジョンに潜るようだが、俺の知ったことではない。


確かにステータスで圧倒できるだけの能力は与えられたが、何事にも例外はある。そのことを4人は知ることもなく、ギルドマスターも何も伝えていなかったようだ。


そんな思いは杞憂だったというがごとく4人はパーティーを組むことなく個人で探索業に励みゴブリンダンジョンで荒稼ぎしているという噂まで出るようになった。


そのため、俺のところでレベリングさせてほしいという依頼がちょくちょく来るようになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る