第5話 汚職

【ギルドマスター視点】


春樹の家から探索者ギルド本部へと戻ると、俺へ命令をした別部署の上司が来ていた。


「で、例の探索者を魔石集めのサポートに回す手はずを整えて帰ってきたんだろうな」


流石上司なだけあって、かなり上からの物言いだ。


「つまり、彼が入手してこの国が消費している魔石の5%は減ってもいいというお考えでよろしいでしょうか?」


「いいわけないだろ。それを踏まえたうえで魔石の量を増やすようにするのがお前の役目だろうが」


上司はかなり短気なようで正論で返すと切れ始めた。


「ではお聞きしますが、あなたは私の直属の上司でもないのになぜ探索者ギルドに首を突っ込んでいるのですか?」


「お前が不甲斐ないせいでどの部署でも給料が上がるどころか下がる一方、しかも何もかも資金カットばかりで首が回らなくなっている。それが魔石の高騰が原因だと分かっているからお前に何とかしろと言っているんだ」


「それを1国民に労働を押し付けて何とかしろとは横暴ではないですか?」


「それだけの力があるのならば全国民の役に立つのは義務だろう。それにそいつは養護施設出身だというじゃないか。それならばなおさら国の役に立つべきだろう」


どれだけ正論を言おうが自分の意見を曲げない上司にいらだちを覚えたが、話をするだけ無駄だと感じた私は、探索者ギルド本部内で仕事を行うため戻ろうとした。


すると肩をつかまれ上司がまた話し出す。


「結果が得られなかったならそう言え。出来なかった場合は私が探索者ギルドのギルドマスターになるということが先ほど決まったところだ」


「あなたに仕事を任せられる気がしませんが、上の指示なら仕方ないですね。資料をまとめて出ていくので離して貰っていいですか?」


その言葉に上司はにやりと笑ったが、どうせ探索者など数人しかいないのだからと思い込んでいた。そのため楽して稼ぐことができるとしか考えていなかった。


もしも失敗したときは前任となる今のギルドマスターに責任を投げつければいいとさえ思っている始末だ。


その日、私は資料をすべてまとめて退館の準備も済ませて探索者ギルドを去った。


「明日は春樹君に謝りに行かないとなぁ」


翌週、新たに探索者ギルドのギルドマスターとなった男の汚職が発覚した。それだけで済めばよかったのだが、その間魔石が半分しか納入されなかったことにより少数の会社が倒産に追い込まれた。


そして私は何の因果か、探索者ギルドのギルドマスターに返り咲いてしまった。

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