第4話 お願い

俺は話が終わったと思ったのでギルドマスターと受付嬢を玄関まで見送ろうと思い立ち上がったが、ギルドマスターは一向にどけ座姿から動こうとしない。


俺は【読心】スキルを使い、ギルドマスターの心を読む。


ギルドマスターはかなり焦っていたが意地でもここを動くわけにはいかないという意思が前面に伝わってきた。俺は溜息を吐いて畳の上に座った。


受付嬢は頭の上に?を浮かべていたがギルドマスターはどけ座を止めない。


「ギルドマスター。話してくれないのであれば追い出しますよ」


この一言で決心をしたようで話を始めた。


「実は探索者を副業として、お金を貯めようという風潮が復活しつつある。そこで、春樹君にはそういった人物をサポートするように上から命令が来ています。私は春樹君が探索者登録していないことを報告したのですが、なんとしてでも登録してもらってサポートに回すように命令して来いといってまして」


この間、ギルドマスターは冷や汗がダラダラ零れ落ちていた。受付嬢は口をあんぐり開けて閉じなくなっていた。


「はぁ。日本から出て行っていいですかね?」


ギルドマスターと受付嬢はうろたえる。俺が日本から出ていくというのは最悪のパターンだったのだろう。


「しかも、副業で探索者って、その人たち自殺志願者ですか?」


「春樹君にこういうことを言っても仕方ないとは思うが、歴史とは繰り返されるものでね。ひと昔前に流行った俺tueeとかいう小説が再熱したらしい。かといって本業でやるには危険だということも身に染みているのか簡単なダンジョンであれば副業でやれるんじゃないかという話になったらしい」


「なんというか、堅実ですね。それにそういうことならスライムダンジョンを俺に売らなくてもよかったのでは?」


「それは、氾濫を止めるために致し方なかったということで決着がついている。だが、探索者協会とは別のお偉いさんがどうにかしろと口をはさんできていてね。我々は結果を出せていないから口をはさむことができなかったわけだよ」


やはり〇〇〇はろくでもないな。というのが俺の感想だ。


「ギルドマスターにはお世話になっているので、そのパーティーのスキルと能力値、あと潜ろうとしているダンジョンを教えていただければ、そのダンジョンを攻略している動画を撮影してきますよ。ただし動画の編集はそちらの人員でカバーしてください。これが妥協点です」


「ちなみに探索者登録は?」


「命令されるような機関に入るつもりはありません。個人でも十分やれているのですから」


「ですよねー」


ギルドマスターと受付嬢が口をそろえて言った。

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