第2話 ギルドマスター

春樹のスキル【ドッペルゲンガー】は自分のステータスを分け与えて、自分の分身を作り出す能力だ。


その数に制限は今のところない。しいて言えば、春樹のステータスが残っている限り分身を生み出すことができる。


また、分身が消えた場合はステータスは自動的に春樹のもとへ戻る。経験値は魔物を倒すたびに春樹の元へ送られるため、今の春樹はトマトをつぶすかのように人の頭を握りつぶすことができる。


【ドッペルゲンガー】で作られた分身は自我を持つことはなく、簡単な命令しか実行できない。が、春樹は1年の時間をかけて魔物がポップする場所を特定し出現した瞬間、スライムの魔石をゴム手袋を装着した分身の手でつかみとるという荒業を続けてきた。


スライムは酸性の生き物ではあるが、すぐに溶かせるほどの強力な酸は持ち合わせていない。


後は稼いだお金でカメラや装備を整えてやれば自動で魔石を回収する機構が完成するというわけだ。



そんな春樹のもとに、探索者ギルドのギルドマスターと受付嬢がやってきていた。


「春樹君。君の日本への貢献度は分かっているつもりではいる。その上で失礼だとも思うがスライム狩りの情報を公開してはくれないか?」


「ギルドマスター。本気で言ってます。俺に飯のタネを寄越せって言っているんですよ。しかもこの辺りにスライムダンジョンなんてここしかないじゃないですか」


「実は近くにスライムダンジョンが見つかって氾濫寸前の状態なのだ。それで早急に対処する必要があるのだが探索者の数は全くそろっていない現状、最も安全に駆除を行っている君に協力を仰ぎたいのだ」


「ならそこも俺が買いますよ。いくらですか?。ああ、持ち合わせが足りなければ魔石で支払います」


「春樹君は既にスライムダンジョン1つ氾濫を止め続ける義務があるのだぞ。それに加えもう一つダンジョンの氾濫を止める余裕があるというのかね?」


「そういっているのですが・・・。心配なら魔力診断でもして氾濫がどのくらい抑止されているのか確認してもらってもいいですよ」


ギルドマスターはたじろいだが、受付嬢のアンナにすぐにダンジョンに向かって氾濫の度合いを確認してくるように命じた。


その間に、ギルドマスターにもう一つ発見されたというスライムダンジョンの話を聞き、時間をつぶしているとすぐに検査を終えた受付嬢が戻ってきた。


「魔力濃度は0。氾濫は少なくとも1年は放置しても氾濫は起こらない状態でした」


ギルドマスターは口をあんぐり開けて、ふさがらないようだった。

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