第7話 領地土木改革 その4
多少の脱線はあったけれど、研究所での実験はうまくいっている。土嚢を積み上げた道路に関しては、土嚢5,6個の実験じゃぁ何とも言えないねと言いつつ、でも役場の土木課の面々は本当に食いついて質問をしてくれた。
これは、役場のエリアの実験場でもやってみるって。
「で、お前さんは何を思って土木課の実験を魔法研究所側でしようと思ったのかな」
「そこなのよ」
ここは所長に突っ込む。今は土木課に呼ばれたので役場側の土木課の人たちやら、道路整備課の人たちやらと親睦会かねてランチ会議中。
「皆さんに助けてほしいことがあって」
「何なの?」
これは前世の知識なんだけど、できるかなぁ、暗渠排水。
それから雨水浸透桝も導入したいの。
実験場であれこれやったんだけど、魔法と私の知識ではうまくいかなかった。
「ええっとね、図に書く」
本当に簡略化した図を描く。
穴を掘って、その穴に砂利を少し引き、その上に水を通すための管を置き、砂利やもみ殻で埋めて管を保護する。
必要なのは、この管。単純に、パイプに穴をあけたものでも良いんだけど、パイプというものはこの世界にはない。
もう一つは、浸水型の雨水桝。こちらは、パイプの親玉とか、コンクリ筒というか、下部に穴をあけたちょっと大きなものが必要。これも図に書く。
「なんだこれ?」
「水はけをよくするために土地を改良するの。順番に説明するね」
私はちょっとずつ、わかるように説明する。
「欲しいのは、この土の中に埋める管。雨が降った時、地中の水はこの管を通って排水路に流したり、通常の水分もここに流れ込むことになる」
「なるほど、丈夫で、加工しやすくて扱いやすい、安価なものですね」
「例えば、素材は木でも良いの。何年か経って土に帰っちゃうものは困るけど」
「こっちの縦型はなに?」
「同じ原理で、こっちは雨どいからの水をここに落とすのよ。少量の水なら浸透させて、どばどば流れてきたらこっちの排水管で排水路に流す」
こちらには、雨どいという考えがあって、建物にはそれがついている。ついているが、建物の下に到着した後は流しっぱなしである。だから雨の日は道路はぐちゃぐちゃになる。
「うーん、煮ても焼いてもどうにもならない木があったなぁ。不思議な木で、自分で自壊したらそのあとは人工的に加工しようが何しようが3年くらいで土にかえるんだが、人間が切り倒すと不思議なことに30年位は土に還らない。細かく切って、燃やすしかない燃料にしかならないとも言われているよな」
「ああ、バンブードのこと?だってあれは使い道が広がらない奴じゃないか」
「バンブードって、どこにでもあるの?」
「あるある。普通に生えてる」
「硬くて加工できないのが厄介だよな。でも役に立つから栽培農家もあるし」
「そうそう、んだんだ」
「あー、物干しざおになっているのは食堂の中庭にあるよ」
「本当に?」
「だってテーブルの布巾を干すのに使っているから」
それは良いことを聞いた。
コマちゃんコマちゃん
「何でしょうか、マスター」
私に鑑定能力ってないの?
「あったらチートすぎるでしょう」
それで、暗渠排水の役に立つような知恵ってないの?
「私は関知しませんね。ああ、バンブードというのはあちらの世界での竹と一緒ですよ」
おお、すごいじゃん。良いこと聞いた。
「じゃぁさっそく見せて。加工できるなら加工したいし話を進めたい実験したい」
「お嬢様、落ち着いてください」
所長にいさめられた。くすん。
「あ、そうそう、所長が作っていた模型のことなんだけど」
「はい?」
「そっちも話もここでしようよ」
「何の話ですか?」
土木課の面々が目を輝かせた。まずは模型を持ってきてってお願いする。
その間に、バンブードの知識を広げる。そもそも王都周辺で生えていた植物で、竹に似ている。魔力の影響を受けて細くなったり太くなったりする性質があって、生え始めの時に魔力の影響を受け、そのままの太さで成長するそうだ。野生では25メートルから30メートルに成長すると、自壊といって、根元から倒れるらしい。栽培する場合は20メートルくらいで伐採するそうだ。
面白いかも。
それが手に入ったら、あれこれできるかもね、と思う。
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