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僕が通う青葉学園の頭部置き去り事件が起きてから、すでに一ヶ月が過ぎようとしていた。
あれから、近隣の学校、三校の校門の前に頭部が据え置かれる事件が続き、テレビのワイドショーを賑わせた。見るからに頭の悪そうなコメンテーターは、なんらかの主義主張であるだとかなんだとか、説得力があるのかないのかよくわからないコメントをしていた。
猟奇殺人は、世紀末の忘れ物のようなもので、それを見て体験してきた人間にとって、目新しくもなんともない、誤解を恐れずにいえば、ありふれた事件以下でも以上でもないものだ、なんてことを僕の親父は、懐かしそうな憐憫の表情を浮かべて、僕に言った。
それからしばらくして、
「しーんじくん。警察なんかに任せてられねーよな、実際。退屈しのぎに、いっちょ私たちが首切り連続殺人事件の犯人つかまえよーぜ」双葉はなんの重みも感じさせない気楽な調子で僕に言う。
「なんか嫌な予感がするんだよ。この事件の裏に潜んでいるものがなにか大きな、僕たちの手に負えない決定的な、なんかそんなもんがあるような気がしてしょーがねーんだよ」弱気な声で僕が言うと、双葉は、
「まあ、生命の危機?ってやつってのはあるけどさ、でもそんなの伸二くんらしくないよ。私が知ってる伸二くんは、無謀で無鉄砲な、怖いもの知らずなやつなはずじゃん」きゃはは、と双葉は笑う。
簡単に言ってくれるよな。まあいいか。この先に待っているのが蛇だろうがなんだろうがどうでもいい。僕はなにせ黒崎伸二なんだから。そういって、僕は重い腰を上げたのだった。
その頃、僕の与り知らない場所でうごめく存在が活動を開始していた。それが善人なのか悪人なのか、それともそれらを超越したなにものなのかはわからない。
ただひとつ言えることは、そいつの存在はこの世界にあってはならない、禁忌だということだ。
そいつを人はこう呼んだ。
『ジョーカー』と。
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