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僕は双葉を乗せて、街の外れに向かってバイクを走らせる。
そこは、細い道が入り組んでいて、飲み屋やコンビニやカラオケボックスなどがみっしりと詰まった場所だった。そして、そのなかに僕の自宅であるコーヒーショップ〈カルメン〉がある。
「へー、伸二くんの家ってば、喫茶店なのね。洒落てんじゃん。私、こう見えてもコーヒーにはうるさいのよ?」きゃはは、と双葉は笑う。
今日は〈カルメン〉は定休日だったので、扉の施錠を外して、店内に足を踏み入れる。
「いい雰囲気ね、この喫茶店。テーブルも床もぴっかぴかだし」双葉が興味深そうに視線をあちらこちらに向けていると、店の奥から、
「おお、伸二。いつの間に彼女なんかつくったんだ?」顔を出したのは、僕の親父だ。
「そんなんじゃねーよ、こいつは。彼女っていうよりは疫病神みたいなもんだ」僕はしれっと言う。隣で双葉がむう、と唸っている。
「気を悪くしないでくれよ、お嬢ちゃん。 柄にもなくこいつ照れてんだよ。どうだ、コーヒー淹れようか?」
という親父の気遣いを無視して、行くぞ、と双葉の腕を掴んで、二階にある僕の自室に連れていった。
僕が双葉を自室に招き入れると、さっそく本題に入った。
「お前、さっきの奴らのことプロって言ってたけど、いったい何者なんだ?」
双葉は、ふん、と鼻を鳴らして答えた。「男との別れ話が事の発端さ。その男、彼氏っていってもいいんだけどさ、そいつがヤクザの組員だったわけよ。面子っつーの?そーゆー安いプライドを傷つけられた腹いせにお金を要求してきたってわけ」笑わせるよな、まったく、と双葉はため息を吐いた。
面倒なことに顔を突っ込んだものだな。しかし、僕は内心楽しんでいた。この退屈な日常をぶち壊すような刺激をどこかで求めていたのだ。
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