第19話 おっさん、エルフを救いたいー5

 一週間後、夜。


 まだ予断を許さない状況のエルフもいるが、多くのエルフは回復へと向かって言った。


 つまり、死の病、ペストは倒された。


 エルフの森の彼らの集落は消毒され、抗生物質はエルフの中に潜むペスト菌を消滅させた。


 明けないと思われた黒き呪いは、日の丸の元、遂に明けてエルフ達にも笑顔が戻る。


 失った命は多くとも、助かった命を繋いでいかなくてはならないと、今の彼らには生命が満ち満ちていた。


 そして俺は夜、ガルディアにリーフ族の集落に呼ばれた。

日本の代表達来てくれと言われたので、とりあえず大泉とビビヤンとあとはシルフィも連れていくことにした。


『む? 来たか!! よし、座れ! こっちだ、信二!! こっち、こっち!』


 俺を見るなり笑顔になるガルディアが大きく手を振っている。


 あんなに嬉しそうに笑う奴だったかな、ずっと仏頂面だったのに。


 言われるがままに座ったのは、滅茶苦茶デカい木のテーブル。

こんなテーブル、こっちの世界ではどうやっても作れないぞ。なんの木だ、これ。

滅茶苦茶すべすべするし、不思議な木だな。


 そしてその木のテーブルの上には、これでもかというほどの豪華なごちそう。

見たこともない料理や、うまそうな肉の丸焼きなど、素材を生かしたエルフの料理だろうか。

見てるだけで涎が出てくる、滅茶苦茶美味しそうだな。


 どうやら、これはエルフ達による宴会のようで俺達はお招きされたのだろう。


『よし、では全員酒を持て。では始めよう! ……信二とその仲間達、異界の友に!! 心からの感謝を!』

『異界の友に、感謝を!!』


 俺達もまるで異世界的な木造のジョッキに入った葡萄酒を持ち、合わせて叫んだ。


『乾杯!!!』


 どうやら今日は俺達への感謝という意味を込めたおもてなしだったようだ。


「これって……ビックボアの肉!? Kg100万の!? すげぇ……一回は食ってみたかったんだよ!!」

「ははは、これはエルフ族による大歓迎だな。うん、うまい……やはり魔力は我々の味覚に作用するようだな。せっかくだ、信二。配信を始めたらどうだ?」

「そうだな、エルフのことを理解してもらうにはいいな」


 俺は言われるがまま配信ドローンを取り出して起動する。


 コメントなどは読めないが、まぁ俺達の食事を見て飯テロ配信で我慢してくれ。

これも異世界と日本の交流のためだ。


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名無しのモブ1:配信きたぁぁぁ!! と思ったら飯テロだぁぁ!!

名無しのモブ2:おい! 今俺カップ麺だぞ! 虚しくなるだろ!

名無しのモブ3:うまそう……それビックボアでは!?

名無しのモブ4:kg100万の? 既得権益者しか食べられないと噂の!?

名無しのモブ5:羨ましすぎる。俺も異世界配信者目指すか……。

飯テロを食らったドンパ:正当な報酬だな。宴だぁぁぁ! って奴か

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『さぁ、食ってくれ! 信二! 我らの最大のもてなしだ! ほら、何をしているエルディア! 隣に座って信二に酒を注がぬか!』

『はい、お父さん!』


 すると俺の隣にエルディアが座る。


 民族衣装だろうか、いつもの服よりも少し派手でちょっとだけ露出が多くてエッチだ。


 俺は少し身を引いて遠慮しながら酒を注いでもらう。


 おっさんになると若い子というのは少し怖いものなのだ。


 主にセクハラと言われそうで。


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名無しのモブ1:おい、おっさん。顔が赤いぞ

名無しのモブ2:エルディアちゃん顔色良くなったら絶世の美女で草。

名無しのモブ3:エルフの美人さやばいな、モデルとかやらないのかな?

名無しのモブ4:奥さん! 旦那さんが浮気してますよ! 美少女エルフに篭絡されてますよ!!

独身で寂しいドンパ:エルフ……萌……俺もエルフとお酒飲みたい……

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 しかしそんなことは関係ないとエルディアは俺に近づく。

滅茶苦茶美人すぎて、少し上がってしまうな、顔俺の半分ぐらいしかないぞ、いやそれはいいすぎか、いやほんとに半分しかない?

ってバカ野郎、一回り以上、下の小娘に俺はなんで緊張しなくてはならんのだ。


 と自分で自分に突っ込みながら堂々とすることにした。


「元気になってよかったよ。エルディア」

『あの時、弓矢を向けてすみません。あなたの言葉は届いていたのに……あなたのおかげでこんなに良くなりました。ありがとうございます』

「いや、あれで当然だよ。無理やり話そうとした俺達も悪いから」


 すると、俺のさらに隣にもう一人可愛い女の子が現れる。


 こちらも可愛らしい民族衣装を着けた10歳ほどの幼女、ソフィアだった。


『シンジさん! お酒つぎましょうか! シンジさん、何が美味しかったですか! とりわけますよ!』


「あぁ、ありがとう。ソフィア、じゃあお酒頂戴。すごくおいしいね」


 俺はソフィアにお酒を注いでもらう。

グレープ味のワインのようなお酒


『じゃ、じゃあ私もちょっと飲んじゃおうかな……シンジさんと飲みたいな』


「こら、子供がそんなこと言っちゃダメだろ!」


『私は成人してるので飲めますよ、信二さん。こう見えて16歳です』

「あ、エルフは16歳で成人なんだ」

『むぅ! お姉ちゃんばっかりずるい!』

「ははは」


 なんだか妻にかまってたら間に入ってきた一花を思い出すな。


『じゃあ、シルフィはここ!』

「お、おい……絶対に加護を切らすなよ、シルフィ。俺がつぶれる」

『大丈夫だよ!』


 そういって俺の両隣が埋まっているからとシルフィは俺の膝の上。

全員足しても(まぁシルフィは見た目年齢だが……)俺と同じぐらいの年の三人に囲まれながらおっさんの俺は疲弊する。


「んもう♥ モテモテね。でもあなた……ほんとにかっこよかったわ。お疲れ様」

「我ながらおっさんにはきつかったぜ」


「だが、そのおかげでどうやら国交は開かれそうだ」

「そうなのか?」

「あぁ、もちろん一番は信二に感謝しているだろう、しかし多くの医療従事者に彼らが頭を下げる場面を見た。きっと日本とエルフ達はうまくやっていける。お前は最高の仕事をしてくれた。政府を代表して礼を言う。ありがとう」

「よせよ、俺は自分のためなんだし」


 するとガルディアが俺の隣に座る。

相変わらずイケメンなおっさんだな、嫉妬するわ。

すると俺の肩を組んで酒を注がれた。


『飲んでいるか。わが友、信二』

(わが友李朝みたいだな……)


「あぁ、すごいうまいな。いくらでも飲めそうだし食べれそうだ」

『気に入ったか! それはよかった。ちなみにお前が食べているものはエルディアとソフィアが愛情を込めて……』

『『ちょっとお父さん!!』』

『がはは! ここまで娘が元気になるとそれはそれで面倒だな!』


 するとガルディアが真剣な目で俺を見る。


『信二。お前の妻は事故で亡くなったと聞いた……私も妻を亡くしている。気持ちは痛いほどわかるぞ』

「そうか……うん。娘もいるし、結構似ているな、俺達は」

『そこでだな、一人で寂しい夜もあるだろう。どうだ、うちのエルディアは。器量は十分だと思うんだが』

「美人すぎてびっくりだよ、俺の国ならトップアイドルも夢じゃないぞ」

『そうだろう、そうだろう!! 嫁にしたくはないか?』


 こいつ相当に酔ってるな。

まぁ俺も随分と飲んでとても良い気分でまぁまぁ酔っているが……。


「そりゃこんな子が嫁にきて嬉しくない男はいないだろう」

『聞いたか、エルディア!』


『は、はい……//』

『わ、私だってあと数年すればお姉ちゃんみたいになります!! だからもうちょっとだけ待ってください!!』


(そりゃ、そんだけ顔似てたらそうなるだろう……何を張り合っているんだこの子達は)


==================

名無しのモブ1:鈍感系おっさん来たぁぁぁ!!

名無しのモブ2:許せねぇ、俺。許せねぇよ。

名無しのモブ3:もうじれってぇな! 俺がちょっとやらしい雰囲気にしてきます!

名無しのモブ4:今人生で一番幸せだろこいつ。

嫉妬で狂いそうなドンパ:正当な報酬だ。俺は応援する…………ぬぁぁぁぁぁ!! やっぱり許せねぇ!!!!

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 そして夜は更けていく。


 俺もどんどん老けていく。


 このまますべてが円満に進めばいいのに。


 そう思っていたが、世界はそんなに単純ではなく。




……数日後。


 俺は荘厳な装飾が施された玉座の間にて、大勢の騎士達に囲まれながらその男に見下される。そしてその男は、眉一つ動かさずに俺に言った。


『エルフ共をだまし、余に全てを差し出せ。さすれば我が帝国との国交を認めてやろう。そうだ。何人かのエルフのメスもくれてやろうぞ。簡単な話であろう? のう……』


 俺の目の前には、この世界で最大数を誇る種族の長。


 つまるところ、世界を牛耳る帝国の皇帝が俺にエルフを差し出せと言ってくる。


『――エルフの英雄よ』









あとがき。

どうでした? エルフ編。

これが私が最近の配信系に対する答えかな。

配信でなければできないことを、配信だからできることを。

胸が熱くなって楽しく見れたなら嬉しいです。

あと空島編ってよかったよな。


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作者のKAZUでした。

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