第12話 おっさん、エルフに会いに行くー1

「はぁ? 今俺のことシンジって呼んだ?」


『あ、昨日ね。久しぶりにぐっすり寝たら魔力が回復したの! だから人化したよ。シンジと一緒だね! この方がお話しやすい!』


「ちょっと待ってくれ……」


 俺は周りの人に聞いてみる。

でもやっぱりギャギャと何を言っているかは分からないとのこと。

見た目は人間だが、別に言葉をしゃべれるわけではないのか。


「いや、疑うわけじゃないけど……ほんとに?」


『む! シルフィ、嘘つかない! ほら!』


ドン!!


「うわぁぁあ!?」


 シルフィが銀色の光に包まれたと思ったら、次の瞬間、巨大な龍が現れる。

俺達は思わず吹き飛ばされて、先ほどの美しい銀色の幼女がシルフィであることを実感させられる。


「質量保存の法則とかどこいった……もうファンタジーすぎるな……」


ドン!!


 するとやっぱり銀色の光に包まれてシルフィは元の銀色の幼女に戻ってしまった。


 見た目は6歳ぐらいだろうか、一花とほぼ同い年だろう。


 俺はちょっとだけ気になって持ち上げてみようとする。


「――!?」


 岩?


 シルフィを持ち上げようとしたら圧倒的な質量を感じた。

無理無理、持ち上げるとかそういうレベルじゃない。

まるで鋼鉄の幼女、一応質量保存の法則は成り立っているようだ、一体どんな密度だよ。


「あら、信ちゃん。おかえり! あ、そういえば聞いたわよ、大石さんから! 私をパートナーに選んでくれたって! うふ♥ 精一杯ご奉仕しちゃうわね」

「あぁ、ビビヤン。よろしく頼む」


 すると相変わらず陽気なオカママッチョが女の子走りで走ってくる。


 でも俺は知っている。


 昨日全力で走った時は、まるで陸上選手のように美しいフォルムだったのを。


「あら? もしかしてシルフィちゃん?」

「ギャギャ!」

「ふふ、よろしくね。もう一度挨拶しておくわ、私はビビヤン」

「ギャギャ!」

「んもう! お世辞が上手ね!」


「なんで会話できるんだよ」


『くんくん……すごくおいしそうな匂いが、シンジからするよ?』

「ん? あ、そうだ。これ約束の甘い奴。ケーキっていうんだ。あとで歯磨きするの約束だぞ」

『わぁぁ!!』


 俺が持ってきたケーキをみるとシルフィは滅茶苦茶キラキラした目でケーキを見つめる。


 幼女が笑顔になる姿はやはり何度見ても良いものだ。

千円ほどのケーキだが、これほど喜んでくれるなら毎日買ってしまいたくなるから親というのはバカなもので。


「じゃあいくでしょ? 車用意してるわ」

「おう」


 そして俺とビビヤンは目的地へと向かうことにした。

シルフィは自由に過ごしていいよと伝えておいた。

ここの人達はみんな良い人ばかりだし、問題ないだろう。


ガシッ


 しかし俺の服が掴まれた。


『一緒にいっていい?』

「いいけど……危ないとこだぞ?」

『シルフィ、強い』

「そ、そうだな……」


 シルフィも同行するというので、俺とビビヤンとシルフィの三人でエルフの森へと向かうことになった。


 車で丸一日の距離だが、シルフィは車で我慢できるだろうか。


 いや、だめだな。完全に子持ちの親目線で考えてしまっている。


 そして俺達は三人で、ビビヤンの車へと乗り込もうとする。

そうだ、配信を付けないとな。信一郎にもできるだけ配信して異世界と日本を繋げて欲しいと言われたし。


ピロン♪


==================

名無しのモブ1:配信きたぁぁーーー!!

名無しのモブ2:全裸で待機してました!

名無しのモブ3:今日も頑張ってください! これ少ないですが!

名無しのモブ4:じゃあ、俺も応援します!

名無しのモブ5:楽しみ!

==================


 一瞬で俺のスマホにたくさんのコメントが流れ出す。


 また通知が一瞬でカンストしそうだが。


「はぁ? 登録者数50万人!?」


 昨日10万人だった登録者数は、気づけば50万人まで膨れ上がる。

同時接続数も気づけば100,500,1000,10000と見たことない速度で増えていった。


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名無しのモブ1:ちなみに昨日ニュースになってました!

名無しのモブ2:みた? ニュースアナザー

名無しのモブ3:滅茶苦茶かっこよく編集されてるんでみた方がいいです! →URL

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 俺は言われるがままURLを押してみた。


 某有名動画チャンネルが開き、そこには。


「シルフィ! 俺はずっとここにいる!! もし俺が嘘ついていたらこのまま嚙み殺せ!! 俺は絶対にここから逃げない!! 助けたいんだ!」


 俺がなんかかっこいい感じで映っていた。


 あいたたたたた! 恥ずかしい! なにこれすっごい恥ずかしい!


 いや、あの時はただ無我夢中で全力だったんです、いや、ほんとに。


「ふふ、いつの間にか時の人ね。ハロー! 彼氏募集中の信ちゃんの護衛ビビヤンでーす」


 するとビビヤンがドローンに向かって挨拶する。


「ぎゃぎゃ!」


 シルフィも真似するようにドローンの配信に映ろうと背伸びしていた。

ドローンは基本的に俺を取るように動くので俺はしゃがんでシルフィを映してみる。


『シンジ、なにこれ! なにこれ! 美味しい?』

「はは、食べ物じゃないぞ。こんにちはってできるか? どうも、皆さん。この子はあの銀龍のシルフィです。なんか人になっちゃいました」


「ぎゃぎゃ!!」


 まぁ案の定、みんなには何言っているかわからない鳴き声だが、シルフィはドローンに向かって挨拶ができた。


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名無しの変態:幼女きたぁぁぁぁぁ!!!

名無しのロリコンじゃありません、フェミニストです:シルフィって言った? 今シルフィって!?

名無しの幼女好き:龍の幼女化だぁぁぁあぁ!!!

名無しの変態という名の紳士だよ:龍の幼女化だぁぁぁあぁ!!!

新人に嫉妬するドンパ:さすがファンタジーな異世界。まさか龍の人化か……羨ましい

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 どうやらここにいる人達はみんな幼女が好きらしい。

うん、俺も大好きだぞ、ほんとに小さい子は可愛いからな。

 

「ふふ、じゃあ乗りましょうか」


 そして俺達はビビヤンの車に乗り込む。


 バキッ。


 シルフィが足を掛けた瞬間、車の床が抜けた。


「わ、私の四駆が……」


「そうか、シルフィは重いんだった」

「ちょ、ちょっと! 乗れないわよ、そんな超重級の龍なんて! 見た目可愛いくせに中身あの巨大な龍でしょ!?」


 その通りだ。


 さてどうしたものか。


『軽い方がいい?』

「ん? そりゃな……」

『ふーん、じゃあ……はい』


 するとシルフィが指をクルリと回す。

その瞬間、シルフィが浮遊しだした。

なんというか水の中に卵をいれたようなちょっとした振動で沈むと浮くかというようなふわふわした存在に。


「な、なにしたんだ?」

『シルフィの加護だよ。シンジも欲しい? 一人だけあげれるんだ』

「え? そんな大事なもの、俺でいいのか?」

『うん! 助けてくれたもん! シンジ好き!! だからあげる!』


 するとシルフィが飛び跳ねて俺の頬にキスをした。

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