『ゆうれいたくし〰️〰️』

やましん(テンパー)

『ゆうれいたくし〰️〰️』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、今夜も走る。


 乗ったら最後、どこかしらない


 しらない場所に運ばれる。



 客は、そこから、帰ってくることはできない。


 だって、


 しらない場所だから。




 ある晩、


 ゆうれいたくし〰️〰️は、


 深夜1時に、やましんを乗せた。


 

 どれほど恐ろしい客か


 しらなかったから。



 『たがたがたま湖に、行ってくらさい。』


 『たがたがたがたま湖? しらないなあ。』


 なんと、ゆうれいたくし〰️〰️は、しらなかった。


 『GPSは?』


 『あります。しらべます。たがたがたま湖。あ、ありやした。へえ〰️〰️。お客さん。ひどくレアなとこに住んでますね。』


 『いえ、墓参りれす。』


 『はあ。この時間にね〰️〰️。ま、いいや。行きます。』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、イレギュラーだが、どっちにしろ、そこに行く気はなかったから。


 例によって、次元を越え、


 パラレルワールドに入った。


 見た目は、さほどはすぐには変わらないが、もはや、この世ではない。


 それは、次第に明らかになる。


 あたりが、怪しい光に包まれ、景色がどんどん、変わってくるから。



 しかし、この客は、いつもとはちがう。


 さっぱり、反応しないのだ。


 おかしいとも言わず。


 騒ぎもしない。


 静かに乗っている。



 ゆうれいGPSは、なんと、いまだ、たがたがたま湖を、ちゃんと表示していた。


 ありえないだろ。


 『ありえない。そんなはずはない。』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、焦った。


 ゆうれいGPSは、必ず、異世界のしらない場所に、無作為に案内するが、ゆいいつ、ただ、一ヶ所、正しく表示することがあるという。


 もしも、それを、表示すると、かならずや、そこに行ってしまうといわれる。


 それが、どこかは、分からないが。


 行くと、恐ろしいことが、起こるという。


 ゆうれいたくし〰️〰️業界の、都市伝説である。


 が、そのようなことは、ありえない。


 しかし、まちがいなく、聴いたことのないはずの『たがたがたま湖』を指示している。


 ゆうれいたくし〰️〰️が、しらない場所はないはずだ。入社のときに、鬼教官から、しっかり、勉強したし。


 しらない場所はないから、しらない場所に行けるのだ。


 この、ゆうれいGPSが、ゆうれいたくし〰️〰️のしらない場所を示したのは、始めてだった。


 『まあ、たまには、いいか。客の要望に答えるのも。』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、まだ、たかをくくっていた。


 ゆうれいたくし〰️〰️は、自分以外の、心霊現象とかは、まるで信じないからだ。


 


 やがて、怪しい光は、深い霧に変わり、見たことがないような、背の高い植物に囲まれた。


 異常に、静かである。


 間も無く、左側には、確かに、湖が拡がってきた。


  

 『そこ、左れす。もうちょいね。あ、この先に、お墓があります。もうちょい、先ね。』


 たしかに、なにやら、かなり大きな墓地がある。


 しかし、『GPS』は、ついに、警告を発した。


 『この先、きけん。』


 『あら、お客さん。ここまで。侵入禁止みたいだ。』


 『あ、いいれす。ありがとう。帰り道は、なにがあっても、このまま、直進ね。さようなら。』


 やましんは、30100ドリム、ちゃんとお金を払って降りた。


 それから、さらに、向こうに歩いていったが、すぐに、見えなくなった。



 『やれやれ、あんな客は、始めてだ。目的地にちゃんと行ったなんて、おいらも、焼きが回ったか。脅しもできなかった。引退かなあ。真っ直ぐゆけだと? け。』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、転回しようとした。


 しかし、動けない。


 深い、どろ沼にはまったみたいだ。


 この先は、道がない。


 『まっすぐゆけだと? ふん。よく言ったもんだ。よし、そうしてやろうか。』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、GPSを見た。


 『うそだろ。』


 GPSは、どうやら、もはや、ちゃんとは、機能していない。


 あきらかに、へんだ。


 すると、真っ直ぐ走れないばかりか、


 『到着。ヘルプ』


 と、でかく、真っ赤に、表示されている。


 『到着。ヘルプ』。と表示して、固まっている。


 もしも、『ヘルプ』が、表示されたら、緊急事態だから、すぐに、車を出ろ、と、言われている。


 救難信号が発信される。


 どこにいても、助けがくるはずだ。


 究極の、レスキュー信号だと聞いた。


 だから、あわてて、そとに出た。


 最後の瞬間、表示されていた、地名を見た。



 『たがたがたま湖・てんごくさかいめぼち』



 ゆうれいたくし〰️〰️の天井に、明々と、ヘルプ、サインが回転していた。


 だが、車は、次第に沈んで行く。


 『あわ、わ、わ、わ、わ、わ❗』


 一分も掛からずに、たくし〰️〰️は、地面に沈没した。


 『お、おそろしやあ〰️〰️〰️‼️』



 からだの一部が水没した、ゆうれいたくし〰️〰️は、もはや、動きが鈍い。


 ヘルプ表示と、車検以外では、分離して外には出られないからだ。


 ゆうれいたくし〰️〰️は、車と一体である。


 で、ゆうれいたくし〰️〰️は、じりじりと、後ずさりした。




 なかなか、助けが来ない。


 普通なら、10分以内に来るはずなのに、もう、1時間は経つのだ。



 ぷるぷるぷるぷる。



 やっと、救援ゆうれいへりが来た。


 ゆうれいへりは、足元から、長い、太い腕を伸ばして、地面の中を探った。


 かなり、深い場所から、ようやく、タクシー本体を掘り出した。


 『みき、どうする?』


 ゆうれいへりが言った。


 『乗ってくか? それとも、車に帰るか?』


 『おいらたちは、24時間離れたら、消えてしまうが、まだ、時間はある。こんな、どろんこには、入りたくないよ。キレイ好きなんだから。』


 『ははあ。じゃ、乗りな。』


 ゆうれいへりが、離陸した。


 『よく、こんかとこに、来たもんだ。どこの空間にいるのか、なかなか、わからなかったんだ。おれ以外なら、たぶん、さっさと帰ったろう。みろ、あそこ、天国の門だ。近付いたら、おれたちは、浄化されて消える。』


 『なんと。ああ。まだ、こっちで、遊んでいたい。ま、多少不便だが、脱地獄した、「現世鬼連合」が協力してくれる。まあ、たまに、捧げ物が必要だがな。ふへへへ。しかし、あいつは、なんなんだ。』


 『まあ、よくわからんな。ざっとデータをみる限り、人間みたいだが、生身ではないな。おそらく、生霊か、ゆうれいか。』


 『んなもん、居るわけがない。この、科学時代に。転送されたのかも。宇宙船インタープライズとか。』


 『ぶっ、それこそ、空想小説だぜ。』


 『あのまま、おいら、もし、真っ直ぐ行ったら、どうなった。』


 『まあ、道はないが、たぶん、お陀仏だったなあ。めでたく、成仏だ。』


 『な、な、な。いや、おそろしやあ〰️〰️〰️。やつが、GPSも、操ったのかあ。』


 『うわさだがな。最近、ぷろねたりあーさん、とかいう、人間の怪物がでるらしい。夢の中で、異次元に飛び、あちこちの次元で、まさに、異常な力を発揮する。GPSなんか、ちょろいもんらしい。ただ、やってることは、かなり無意味だが、現世でもあの世でもない場所から、無意識に地球侵略を企てているとか。その、リーダーがいるらしいが、わからないと。そいつらが、いま、増加傾向にあるらしいとか。人間政府も密かに対策に乗り出しているとかだ。おれたちは、かなり、まずい立場かもな。』


 『な、なんと。』


 ゆうれいたくし〰️〰️は、しばし、固まった。


 


    🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭



 注) 『ぷろねたりあーさん』は、やましんのおはなしで、フィクションである。

 



 


  

 

 

 

 


 

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『ゆうれいたくし〰️〰️』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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