第11話 私と貴女⑪
「ふふ、寝顔可愛いなぁ……」
つい声に出してしまったけど幸い起きる気配はなかったようだ。
(今のうちに悪戯しちゃおっと)
心の中でほくそ笑むと、まずはほっぺをツンツンと突いてみる事にした。
ぷにっとした柔らかい感触があって癖になりそうだったけれど我慢する事にしたわ。
(次はどうしようかな〜そうだ!)
思いついたことを実行するべく、私はゆっくりと顔を近づけていく。
そしてそのままキスをしたのだ。
もちろん唇にね♡
(ふわぁ……♡すごい……これが大人のキスなんだぁ……♡)
「んっ……♡ちゅぱっ♡」
舌を入れて絡ませていると、だんだん気分が高揚してきた。
(もっとキスしちゃお)
もう止まれなかった私は、夢中で貪るように愛梨を求めた。
10分くらい経っただろうか、ようやく満足して唇を離す頃にはすっかり息が上がってしまっていた。
そこでようやく我に返った私は、自分のしたことを思い出して恥ずかしくなった。
(うわああ! 何やってるの私!? いくら好きだからってこんなことするなんて……!)
あまりの恥ずかしさに悶えていると、隣で寝ていたはずの愛梨と目が合った。
その瞬間顔が熱くなるのを感じたが、それ以上にパニックになっていたせいで何も言えなかった。
そんな私を他所に彼女は落ち着いた様子で話しかけてくる。
その声を聞いているうちに段々と冷静になっていったんだけど、それと同時に罪悪感に苛まれていった。
(嫌われちゃったかな……? どうしよう……怖いよ……)
「ねぇ、花音」
名前を呼ばれてビクッと身体を震わせてしまったが、覚悟を決めて続きを聞くことにした。
「なに……?」
恐る恐る聞き返すと、意外な答えが返ってきた。
「もう一回してくれる?」
一瞬何を言われたのか理解できなかったが、すぐに理解すると同時に一気に体温が上がるのを感じた。
(え? 今なんて言ったの? 聞き間違いじゃないよね?)
動揺しつつも、言われた通りにしようとしたところで愛梨が口を開いた。
「冗談だよ、ごめんね変なこと言って」
そう言って笑う彼女を見てホッとした反面、少し残念な気持ちにもなった。
(あれ? なんで残念に思ったんだろう?)
自分でもよくわからない感情を抱いていることに戸惑っていると、愛梨が再び話しかけてきた。
「どうしたの? 大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込んでくる彼女にドキッとする。
「う、ううん大丈夫だよ……」
そう答えると、ほっとしたような表情を見せた後でこう言った。
「そっか、なら良かったよ」
それからしばらく沈黙が続いた後、唐突に彼女が立ち上がってどこかへ行こうとしたのを見て咄嗟に腕を掴んで引き止めた。
(嫌だ……行かないで……お願いだから一人にしないで……)
心の中で懇願するも虚しく、するりと私の手をすり抜けるようにして離れていく彼女の後ろ姿を見つめることしかできなかった。
やがて視界から消える寸前になってようやく我に帰ることができた私は、慌てて追いかけようとしたのだが遅かったようで見失ってしまった。
(なんでだろう……すごく寂しい感じがする……どうしてなんだろう……?)
そんなことを考えながら立ち尽くしていると、不意に後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには愛梨が立っていた。
その姿を見た瞬間、涙が溢れてきた。
愛梨はそんな私の様子を見て驚いているようだったが、すぐに駆け寄ってきて抱きしめてくれた。
それが嬉しくてたまらなかった私は、彼女に抱きつくと声を上げて泣いた。
そんな私を優しく包み込んでくれる愛梨の手はとても温かく感じられたのだった。
泣き止んだ後もしばらくの間抱き合っていたのだが、さすがに恥ずかしくなってきたので離れることにした。
すると愛梨の方から提案があった。
「お風呂入らない?」
確かに汗かいちゃったし、ちょうどいいかもと思って頷くと手を引かれたのでついていくことにした。
脱衣所に着くと服を脱がせ合いっこしてから浴室に入る。
湯船に浸かりながら愛梨の背中を流したりしているうちにだんだんとムラムラしてきてしまい、
我慢できなくなってしまった私は愛梨に抱きついた。
「わっ! ど、どうしたの!?」
驚く彼女を他所に、私は構わず続けることにした。
「好き……大好き……」
そう呟きながら首筋に吸い付くと、赤い痕が残るのが見えた。
「愛梨、キスしよ」
「えっ? ちょっ待っ……!」
慌てる愛梨を無視して強引に唇を奪うと舌を差し入れる。
最初は、戸惑っていた様子だったが次第に受け入れてくれたみたいで
積極的に絡めてくるようになったので嬉しくなった。
(えへへ、愛梨も積極的じゃん♡)
そう思うとますます興奮してきてしまい、もっともっと激しく求めてしまう。
「ぷはっ!」
息苦しくなってきたところで一旦離れると唾液が糸を引いて切れたのが見えた。
それを見ただけで興奮してしまい、またすぐ口付けを再開する。
今度は触れるだけの優しいものではなく、貪るような激しいものだったため愛梨は、
少し苦しそうな表情をしていたがお構いなしに続けた。
「んっ! んん〜!」
しばらくすると限界を迎えたらしく背中を叩いてきたので仕方なく解放してあげることにした。
「はぁ……はぁ……激しすぎだってばぁ……」
肩で息をしながら抗議してくる彼女だったが、その表情は完全に蕩けていて説得力はまるで無かった。
(ふふっ可愛いなぁ……♡)
そう思いながら見つめていると睨まれてしまったので誤魔化すために謝った後、もう一度キスをすることにした。
今度は、軽く触れるだけのものだったがそれでも十分だったようで顔を真っ赤にして俯いてしまった。
そんな様子が可愛くてつい笑ってしまうと怒られてしまったので素直に謝ることにする。
「ごめんごめん、許して?」
上目遣いでねだると仕方ないといった様子で許してくれたので安心することが出来た。
その後、お互いに体を洗いあったりしてから風呂を出た私たちは、
リビングに戻ってきたところで再び抱きしめ合った。
さっきと違って今は、服を着ていない状態なので直接肌の感触を感じることができる。
そのため余計にドキドキしてしまうわけだが、不思議と安心感を覚えるのだった。
しばらくの間そうやって抱き合っていたが、愛梨が突如、キスしてきた。
「んむっ!?」
突然のことで驚いたもののすぐに受け入れる体勢を取ることにした。
ちゅっと音を立てて吸われた後、舌が入ってくる感覚に背筋がゾクゾクするような感覚に襲われる。
(あぁ……幸せだなぁ……ずっとこうしていたいよ……)
ぼんやりとした頭で考えているうちにどんどんエスカレートしていき、
気づけばお互いを求め合うように舌を絡め合っていた。
(気持ちいい……頭が真っ白になりそう……)
「花音の唇は柔らかいね♡」
「愛梨こそ、甘くて美味しいよ」
そう言いながら更に深く口づけを交わす私たちの表情は完全に蕩けてしまっていた。
しばらくしてから名残惜しそうに口を離すと銀色の橋がかかった。
それを舐め取る仕草に色気を感じてしまって思わず見惚れてしまった。
そんな視線に気づいたのか、彼女は妖艶な笑みを浮かべると言った。
「花音~舌出してね、もっとキスしてあげるからっ♡」
「うんっ♡」
言われるままに口を開けると、愛梨の舌が侵入してきたのでこちらもそれに応えるように絡ませていく。
(愛梨の舌柔らかくておいしいよ♡)
夢中になって味わっていると、突然強く吸い上げられてビクンッと体が跳ね上がる。
「んんっ!」
驚いて声を上げるが、そんなことはお構いなしとばかりに何度も繰り返される。
(やばいこれっ! 気持ち良すぎる!)
あまりの快感に意識を失いそうになるが、それを察したかのように愛梨が口を離した。
「ぷはぁっ! はぁ……はぁ……愛梨ぃ……もう無理ぃ……♡」
涙目になりながら訴えるが、
「ふふっ、まだまだこれからだよ〜」
と言って押し倒されてしまった。
(あ、これは逃げられないやつだ……)
と思った時には、既に手遅れで抵抗虚しくされるがままになってしまうのだった。
それから数時間後、私はベッドの上でぐったりとしていた。
もう何回したのか覚えていないくらい愛梨に求められて疲れ果ててしまったのだった。
そんな私に寄り添うようにして横になっている彼女は、満足げな表情を浮かべているように見えた。
(うぅ〜疲れたぁ〜でも気持ちよかったなぁ〜)
そんなことを考えていると不意に頭を撫でられた気がしたので顔を上げると愛梨と目が合った。
どうやら無意識のうちに頭を撫でていたようだ。
私が、不思議そうな顔をしているのを見て察したのか説明してくれた。
「いや、なんかね、つい撫でたくなっちゃったんだよ」
そう言って微笑む愛梨を見ていると胸がキュンとなるのを感じた。
(ああ、やっぱり好きだな)
改めてそう思った瞬間、自然と口が動いていた。
「愛梨、愛してる」
それを聞いた愛梨は一瞬驚いたような表情を浮かべた後で、微笑みながらこう返してきた。
「私も大好きだよ、花音」
その言葉を聞いた途端、胸の奥が熱くなるのを感じて涙が出そうになったけど何とか堪えることができた。
そして、どちらからともなく顔を近づけていき唇を重ね合わせた。
お互いの存在を確かめ合うかのような長いキスの後、ゆっくりと顔を離すと見つめ合って微笑み合った。
(幸せだな……)
「ねぇ、もう一回しようよ」
「いいよ、何度でもしてあげるからね」
そう言って笑う彼女を見て、心が満たされるのを感じた。
(愛梨、大好き)
心の中で呟くと同時に、私は愛梨の胸に顔を埋めるようにして抱きついた。
そのまま彼女の柔らかさを堪能するように頬ずりしていると、愛梨の手が伸びて来て髪を撫でてくれる。
それが心地よくて目を細めると、眠気がやってきたようで瞼が重くなってきた。
それに気づいた愛梨が声をかけてきた。
「眠くなってきちゃった?」
「う、うん……」
正直に答えると、クスリと笑われてしまった。
「じゃあ、そろそろ寝よっか?」
「そうだね……」
返事をすると、愛梨が電気を消してくれたのでベッドに潜り込むと抱き寄せられて密着することになった。
「おやすみ、愛梨」
「おやすみなさい、花音」
挨拶を交わしてから目を閉じると、すぐに眠りに落ちていった。
翌朝、目を覚ますと目の前に愛梨の顔があってびっくりしたが、すぐに昨夜の事を思い出して納得するのだった。
それからしばらくぼーっとしていたのだが、ふとある事に気づいてしまった。
「愛梨、何時の間に下着姿に?」
「え? ああ、昨日の夜のうちに着替えておいたんだ」
言われてみれば確かにそうだった気がする……あれ?
なんで気づかなかったんだろう?
いやそんなことよりもまず聞くべきことがあるよね……よし聞こう!
そう思って口を開きかけたところで先に質問されてしまった。
「ねえ、どうして昨日あんなに求めてきたの?」
そう言われて言葉に詰まる私だったが意を決して答えた。
「……寂しかったから……」
それを聞いてきょとんとしている彼女に続けて言うことにした。
「だって最近全然構ってくれなかったじゃん……、だから寂しくなってあんなことしちゃったんだもん……」
恥ずかしさのあまり語尾が小さくなってしまったがちゃんと伝わっただろうか……?
そんな心配をよそに愛梨はしばらく黙り込んでいた。
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