第10話 私と貴女⑩

「ねぇ、愛梨」

名前を呼ぶと不思議そうに首を傾げる姿がとても可愛らしく思えた。

そんな彼女に向かって、私は意を決して告げることにした。

「愛梨、もっとキスしようね!」

「うん! もちろん良いよ〜!」

2人で抱き合いながら何度もキスをするうちにだんだん気分が高揚してきたようで、

段々とエスカレートしていくうちにどんどん過激になっていった。

(ああ……すごい……♡)

もう完全に蕩けきった状態でされるがままになっていると、不意に愛梨が耳元に顔を寄せてきた。

そして囁くように言ってくる。

「ねえ、好きって言ってほしいな〜」

それを聞いた瞬間、心臓が大きく跳ね上がった気がした。

(どうしよう……恥ずかしいけど……でも……)

覚悟を決めると、ゆっくりと口を開いた。

「すき……♡」

それを聞いた愛梨は嬉しそうに笑うと、再びキスをしてくる。

「ちゅぱぁ……♡はぁむ♡」

舌を入れられて絡め取られると、頭が真っ白になり何も考えられなくなるほど気持ちが良くて、

自然と自分から求めてしまっていた。

(あぁ……きもちいい……しあわせ……♡)

しばらく堪能した後、ようやく解放された時にはすっかり息が上がってしまっていた。

それでもなお興奮冷めやらぬ状態だったため、もう一度キスをしようとしたところで止められた。

「待って、これ以上したら止まらなくなっちゃうでしょ?」

確かにその通りだと思い、渋々引き下がることにした。

「むぅ〜わかったよ〜」

不満げに頬を膨らませていると、苦笑されてしまった。

「そんな顔しないでよ〜」

宥めるように頭を撫でられたので大人しく従うことにする。

「それより花音、そろそろ一緒にお風呂入らない?」

「えっ!? いいの!? やったー!」

嬉しさのあまり飛び跳ねてしまった私を見て、彼女はクスクス笑っていた。

「そんなに喜ぶことかなぁ? まあいいか、それじゃ行こっか」

(はぁ……最高すぎる……)

心の中で歓喜の叫びを上げつつ、彼女に連れられて浴室へと向かうのだった。

脱衣所に着くと早速服を脱ぎ始めたのだが、そこで問題が発生した。

なんと下着まで脱がなければならないというのだ。

つまり裸にならないといけないということだ。

(うっ……恥ずかしいよ……)

躊躇っていると、愛梨が声をかけてきた。

「どうしたの? 早く脱ぎなよ〜」

急かされたことで余計に羞恥心が高まってしまい動けなくなってしまう。

「うぅ〜わかってるよ〜」

そんな情けない声を上げつつもなんとか脱ぐことに成功したものの、

やはり恥ずかしさには勝てず手で隠してしまうことにした。

そんな私に構わず先に行ってしまった彼女を恨めしく思いつつ後を追うことにしたのであった。

中に入るや否やいきなり後ろから抱きつかれてしまい動揺してしまう。

「ひゃんっ!?」

という変な声が出てしまって恥ずかしかったが、それ以上に嬉しかったのでよしとしようと思う。

(ああもう可愛すぎ!)

と思いながら振り返ると満面の笑みで見つめられていたことに気づき顔が熱くなるのを感じた。

そうすると突然耳元で囁かれた言葉にビクッと反応してしまい、慌てて距離を取ろうとしたが遅かったようだ。

そのまま押し倒されてしまっていたわ!

(え!? 何が起きたの!?)

「花音の身体は私が洗ってあげるね」

「ええ!? ちょちょっと待って!」

慌てる私を他所に、愛梨は私の身体を洗い始めるのだった。

最初は普通に背中を流してくれるだけだったんだけど、

段々とおかしな感じになってしまい、私は抗議する。

「愛梨、後は自分で洗うから平気」

「ダメだよ〜ちゃんと隅々まで綺麗にしないと〜」

そう言いながら身体中を撫で回してくるものだから堪らない気分になる。

(だめっ! こんなの耐えられないっ!)

そう思いながら必死に耐えようとするのだが、身体は正直なのか正直に反応してしまう自分が情けなく思えてくるほどだった。

結局最後まで愛梨の思うままにされてしまい、ぐったりしていると彼女は満足げな表情を浮かべていた。

「ふぅ……これで綺麗になったかな?」

「うう〜ひどいよぉ……」

涙目になりながら訴えると、

「ごめんね〜でも可愛かったよ♡」

と言われてしまったので何も言えなくなってしまった。

その後、二人で湯船に浸かり疲れを癒やすことにした。

温かいお湯に浸かっているうちに段々落ち着いてきたのでホッと一息つくことができた。

そんな私の様子を見た愛梨が話しかけてきた。

「落ち着いたみたいだね、良かったよ」

そう言って微笑む彼女を見ていると心が安らいでいくような気がした。

(やっぱりこの子と一緒にいる時が一番落ち着くなぁ……)

そんなことを考えながらぼーっとしていると、急に顔を覗き込まれてドキッとした。

「ねぇ、そろそろ上がろうか? あんまり長く入ってるとお肌に良くないしね」

「そうだね、そろそろ出ようか」

「うん!」

と言って元気よく立ち上がった彼女の胸に目がいってしまう。

(相変わらず大きいなぁ……羨ましい……)

自分の胸に手を当ててみると悲しい現実を突きつけられたような気がして悲しくなった。

そんなことを考えていると愛梨に声をかけられたので我に帰ると急いで立ち上がるのだった。

それから着替えを済ませた後、髪を乾かし終えたところで彼女に声をかけた。

「お部屋に戻ったらどうしようか?」

「うーん、どうしよっか?」

愛梨は少し考えた後でこう言ってきた。

「せっかくだし、このままイチャイチャしない?」

その言葉に嬉しくなり、即座に了承した私は彼女に抱きついた。

すると彼女もそれに応えてくれるかのように抱きしめ返してくれた。

(幸せだなぁ……)

しみじみとそう思っていると、突然唇を奪われたので驚いたもののすぐに受け入れた。

(ああ……キスしてる……嬉しい……)

しばらくの間お互いの唾液を交換し合っていると、息苦しくなってきたため一旦離れた。

しかし、名残惜しかったのか今度は向こうから唇を重ねてきて、

何度も何度も繰り返すうちに頭がボーッとしてきて何も考えられなくなった。

「えへへ、好きだよ」

と言いながら愛梨が頭を撫でてくれるだけで幸せな気分になれるのだから不思議だ。

(もっと甘えたい……)

そう思うと自然と身体が動いていた。

愛梨の胸に顔を埋めると、優しく抱きしめてくれた。

(気持ちいい……安心する……)

しばらくそうしていると、不意に頭を撫でられる感触が伝わってきたので顔を上げると、

そこには優しい笑顔を浮かべている彼女がいた。

その表情を見た瞬間、胸が高鳴るのを感じた。

(可愛いなぁ……好きだなぁ……)

そんなことを考えながら見つめていると、彼女は恥ずかしそうに顔を背けてしまった。

(ふふっ、照れてるのかな?)

その様子を見ているだけでも愛おしく思えてきて思わず笑みが溢れてしまう。

(本当にかわいい♡)

「ねぇ、愛梨」

名前を呼んでみると、不思議そうな顔をしてこちらを見てきた。

そんな彼女に微笑みかけながら言う。

「愛してるよ」

その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔が真っ赤に染まったのがわかった。

それを見てさらに愛おしさが込み上げてきた私はもう一度愛を囁くのだった。

「大好きだよ、愛梨」

その言葉を聞いた瞬間、私の顔も熱くなっていくのを感じた。

(うぅ……恥ずかしいよぉ……)

そう思いながら俯くことしかできなかった。

(うう……顔熱い……絶対真っ赤になってるよこれ……)

恥ずかしさに耐えかねていると、不意に名前を呼ばれたので顔を上げる。

そこには満面の笑みを浮かべた花音がいて、

「私もだよ、愛梨」

と言われた瞬間、心臓が大きく跳ねた気がした。

(ああもう! なんでこんなにドキドキするのよ!)

心の中で叫びながらもなんとか平静を装って返事をすることに成功する。

「うん、ありがとう」

お礼を言うと、花音は嬉しそうな表情を浮かべた後、抱きついてきた。

(まったくこの子は……)

呆れながらも受け止めてやることにする。

「よしよし、甘えん坊さんだね〜」

頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める姿がとても可愛らしいと思った。

(こういうところは昔から変わらないわね)

そう思いながらしばらくの間撫で続けてあげた。

それからしばらくして満足したらしく、花音の方から離れてくれた。

そのことに安堵しつつ、ふと時計を見ると既に午後6時を過ぎていたのでそろそろ夕食の準備をすることにした。

冷蔵庫の中を確認すると食材がいくつか残っていたので簡単なものを作ることにする。

メニューはハンバーグとサラダ、それにコーンスープにした。

料理を作り終えてテーブルに並べると、それを見た花音が目を輝かせていた。

どうやら喜んでくれているようだ。

そんな彼女の様子を見て自然と頬が緩んでしまう。

(ほんと、わかりやすい子よね)

そんなことを思いながら席に着くように促すと、行儀よく手を合わせてから食べ始めた。

その様子を微笑ましく見守っていると、ふいに目が合った。

彼女は照れ臭そうな表情を浮かべると、慌てて視線を逸らしてしまった。

(ふふっ、可愛い)

「美味しい?」

尋ねると、笑顔で頷いてくれたので安心したわ。

(良かったぁ……口に合わなかったらどうしようかと思ったよ……)

内心ほっとしながら自分も食べ始めることにしたのであった。

食事を終えた後は一緒に食器を片付けてからソファーに座ってくつろいでいたんだけど、

なんだか眠くなってきたのであくびを一つした後で隣に座る愛梨に寄りかかるようにして

目を閉じたらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。

意識が覚醒した時、隣を見ると寝息を立てて寝ている愛梨がいた。

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