第8話 私と貴女⑧

「ちょっと待ってちょうだい! まだ話は終わってないわよ!」

お母さんの声を背中に受けつつも無視して部屋に入り鍵をかけると、ベッドに倒れ込みました。

そんな私に覆い被さるように抱きついてきたのは愛梨でした。

「ねえ、愛梨……」

そんな彼女を抱きしめて問いかけると、彼女もまた抱きしめ返してきてくれました。

そんな仕草一つひとつが愛おしく思えてきます。

(ああ……幸せだなぁ……)

そんなことを考えているうちに段々と眠くなってきちゃった……。

そんな時ふと思い出したことがありました。

愛梨は確か、私の言う事を聞くようにするって事を思い出し、あることを実行するの。

「ねぇ、愛梨、愛梨の下着見せて」

「え? いいけど、どうしたの急に?」

不思議そうな顔をする愛梨に、私は続けて言いました。

「愛梨の下着見たいの」

そう言うと、愛梨は少し恥ずかしそうにしながらも制服を脱ぎ始めました。

そうして露わになった彼女の下着に目を奪われていると、愛梨が尋ねてきました。

「そんなにじっと見られると恥ずかしいんだけど……どうすればいい?」

そう言われて我に返った私は、慌てて目を逸らしてしまいました。

(うぅ……何やってるんだろ……)

自分の行動に呆れていると、愛梨が声をかけてきました。

「あの……そろそろいいかな……?」

その言葉にハッとして顔を上げると、

「愛梨っていつも、そのね、アダルトな下着を身に着けているの?」

「うーんどうだろう……? 意識したことないからわかんないや」

そう言って首を傾げる彼女に更に質問を投げかける事にした。

「じゃあさ、今履いているパンツは何色かな……?」

恐る恐る尋ねると、彼女は少し考えた後で答えた。

「今日は水色だけどそれがどうかしたの?」

それを聞いて安心したような残念なような複雑な気持ちになったけど、気にしない事にして次の質問をすることにした。

「それじゃあ次はブラジャーを見せてほしいかな」

私がお願いすると、彼女は頷いてくれたのでホッとして胸を撫で下ろしていた。

(よかったぁ〜これで安心できるよぉ〜)

「はい、どうぞ」

そう言いながら彼女が見せてくれたブラは、黒を基調としたレース付きの大人っぽいデザインのものだったので思わず見惚れてしまった。

「すごい綺麗……触ってもいい?」

そう聞くと、愛梨は笑顔で答えてくれた。

「いいよ〜」

許可を得たので早速手を伸ばすと、柔らかい感触が伝わってきた。

(うわぁ……凄い……)

夢中になって触り続けていると、不意に声をかけられた。

「ねえ、いつまでそうしているつもりなの? もう満足したでしょ? 早くどいてよ〜」

その声にハッと我に返ると同時に恥ずかしさが込み上げてきた。

「ご、ごめん!」

慌てて離れると、

「ううん、気にしないで大丈夫だよ。それより、続きしないの?」

愛梨は妖艶な雰囲気を漂わせながら微笑んでいた。

その表情を見た瞬間、心臓が大きく跳ね上がった気がした。

「し、しないけど!」

動揺しながら答えると、愛梨は不満そうに頬を膨らませた。

「えーなんでしてくれないのさー! せっかく準備したのにぃ〜!」

駄々っ子のように文句を言う彼女を宥めながら、なんとか落ち着かせることに成功した。

(ふぅ……危ないところだったわ……)

あのまま続けていたらどうなっていたかわからなかったと思う。

(それにしても愛梨ってこんなに積極的だったかなぁ?)

疑問に思ったものの、深く考えることはしなかった。

(まあいいか、そんなことより今はもっと大事なことがあるしね)

そう思い直して、愛梨に話しかけることにした。

それは、愛梨が私のことをどう思っているのか確かめることだった。

だから思い切って聞いてみることにする。

まずは軽いジャブからいこうと思い、こう切り出した。

私の質問に、愛梨はキョトンとした顔で首を傾げている。

その姿を見ているとなんだか微笑ましく思えてくる。

(やっぱり可愛いなぁ……)

そんなことを思いながら見つめていると、突然ハッとした表情になったかと思うと、慌てた様子で口を開いた。

どうやら何かを思い出したらしい。

そして、おずおずといった感じで問いかけてきた。

「あ、あのさ、さっきの話なんだけど……どうして私と付き合ってくれたの?」

不安そうな表情を浮かべて見つめてくる愛梨に対して、私は正直に答えることにした。

「そんなの決まってるよ、好きだからだよ」

私が即答すると、彼女はホッとした様子を見せた後に笑顔を浮かべた。

「そっか! よかった〜! てっきり嫌われてるのかと思ったよ〜」

そう言うなり、勢いよく抱き着いてきた。

私はそれを受け止めつつ、愛梨の背中に手を回して優しく撫でた。

すると、彼女は気持ち良さそうに目を細めた後、顔を上げて見つめてきた。

その瞳にはハートマークが見えるような気がするほど蕩けきった表情をしていて、とても艶めかしかった。

「私も大好きだよ、愛梨」

耳元で囁くように言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「うん、知ってるよ」

それからしばらく抱き合っていたのだが、やがてどちらからともなく離れた。

そこで、ふと気になったことがあったので愛梨に尋ねてみることにする。

「ねぇ、そういえばさっき、私のこと『好き』って言ったよね?」

そう問いかけると、彼女はきょとんとした後で思い出したように言った。

「あれ? そうだっけ? まあいっか、本当のことだし!」

屈託のない笑みを浮かべる彼女を見て、思わず苦笑してしまう。

(まったく、この子は……)

そんなことを考えていたのだが、すぐに思考を切り替えることにする。

とりあえず、話を先に進めることにした。

さて、どうしたものかしら……。

このまま放置しておくわけにもいかないし、かといって放っておくわけにもいかず困っていると、愛梨が話しかけてきた。

「ねえ、さっきから黙り込んでるけどどうしたの?」

心配そうに顔を覗き込んでくる彼女に、私は正直に話すことにした。

「実は、あなたが私の事を好きだってことを疑ってるのよ」

それを聞いた瞬間、彼女の顔が曇ったのがわかった。

「え……それってどういう意味……?」

不安そうに聞いてくる彼女に、私は正直に自分の気持ちを伝えることにした。

「そのままの意味よ、あなたの気持ちがわからないのよ」

すると、愛梨は俯いてしまった。

肩が震えているように見えるのは気のせいだろうか……?

「うぐっ……」

嗚咽のようなものが聞こえてきたような気がしたが、よく聞こえなかった。

「愛梨、大丈夫?」

心配して声をかけると、愛梨はゆっくりと顔を上げた。

「ぐすっ……」

その顔は涙で濡れていたが、どこか嬉しそうでもあった。

(どうしたんだろう……?)

不思議に思っていると、愛梨が再び口を開いた。

「ごめんね、心配かけちゃって……でも大丈夫だから……」

そう言って微笑む姿は健気だったが、無理をしているようにも見えた。

(本当に大丈夫なのかな……)

心配になりつつも、これ以上追及するのはやめておくことにした。

(本人が大丈夫だって言ってるんだし、そっとしておこう……)

そう心に決め、話題を変えることにする。

「ところでさ、愛梨はいつから私の事が好きだったの?」

そう尋ねると、

「えっとね、初めて出会った時からだよ」

と答えた。

それを聞いて驚くとともに嬉しくなった私はつい口元を緩めてしまった。

そんな私に構わず続けるようにして話し始めた。

「あの時からずっと好きだったんだよ? それなのに全然気づいてくれないんだもん」

拗ねたように口を尖らせる姿が可愛くて仕方がなかったが、

ここで笑ってしまうとまた機嫌を損ねてしまうかもしれないと思ったため我慢することにした。

(ふふっ、そういうところが好きなんだけどね)

そんなことを考えているうちに話が進んでいたようだ。

「……だからね? もう我慢できないの!」

いきなり抱きついてきたと思ったら、次の瞬間には押し倒されていた。

突然のことに驚いているうちに馬乗りされてしまったようで身動きが取れなくなってしまった。

そうすると、愛梨は私の制服スカートの裾を手に持つとそのまま捲り上げてしまい、

穿いている下着が見えてしまう。

「花音ってこんな可愛い下着を穿いているのね」

まじまじと見つめられると恥ずかしくなってきて顔を背けようとするが、愛梨はそれを許してくれなかった。

「花音、ちゃんと私を見て、お願い、じゃあキスしよ」

強引に顔を向けさせられて唇を奪われる。

舌を入れられて口内を蹂躙される感覚に頭がくらくらしてくる。

(あぁ……もうダメだ……)

そう思った時には既に手遅れだった。

私の身体は、完全に力が抜けてしまっていたの。

抵抗しようにも全く力が入らない状態だ。

「もっとキスしようね、ほらっ、舌出して」

「うぅん……ちゅぱぁ……♡はぁむ♡」

2人の唾液が混ざり合い口の端から垂れ落ちていくのがわかるほどだったけれど、

そんなことは気にならなくなっていた。

むしろもっともっとして欲しいという気持ちの方が勝っていたくらいだ。

そうしてしばらくの間、お互いの唇を貪り合っていたのだけれど不意に唇が離されたかと思うと、今度は首筋に吸い付かれてしまった。

チクリとした痛みが走ると同時に赤い痕が残るのが見えた。

それが、嬉しくて自然と笑みが溢れてくる。

そんな私を愛梨は不思議そうに見ていたけど、気にしないことにしたみたいだ。

それよりも今は、続きをしたいという欲求の方が強かったからだと思われる。

その証拠に彼女の目は、トロンとしており息遣いも荒くなっていたことから興奮していることがわかるからね。

「ねえ、愛梨……」

私が呼びかけると、彼女はビクッと体を震わせた後で恐る恐るといった感じで尋ねてきた。

「な、なに?」

そんな彼女に微笑みかけながら言う。

「もっとキスしたい?」

「うん! もちろんだよ!」

即答する姿を見て苦笑するしかなかったけどね。

(ほんとこの子ったら……)

そう思いながらも内心喜んでいる自分がいることに気づくのだった……。

(仕方ないわね……)

心の中で呟きながら再び唇を重ねる。

最初は軽く触れるだけのつもりだったんだけど、いつの間にか舌を絡め合うような濃厚なものになっていたわ。

(ああ……気持ちいい……)

もう何も考えられなくなるくらい夢中になってしまっていたわ。

どれくらい経った頃かしら?

ようやく満足した私達はゆっくりと離れる事にしたわ。

その際、銀色の橋がかかったのを見て恥ずかしくなっちゃったわ……。

「えへへ〜気持ちよかった〜」

そう言いながら満足そうな笑みを浮かべる彼女を見ているとこっちまで幸せな気分になれるのよね〜。

ああ〜幸せだなぁ〜♡

(恍惚の表情)

それからしばらくして落ち着いた頃に愛梨が聞いてきた。

「それでさ、結局なんで私のこと避けてたの?」

あっけらかんとして聞いてくるものだから一瞬何を言われたのか理解できなかったほどだ。

(こいつめ……!)

と思いながらも素直に答えることにした。

「だって恥ずかしかったんだもの……」

と答えると彼女は納得したような表情をしていた。

(わかってくれたみたいね……よかった……)

と言いながら胸を撫で下ろす。

しかし、それは束の間のことですぐに次の質問を投げかけられたことで現実に戻されることになったの。

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