第2話 私と貴女②

「好きだよ」

その言葉を聞いた瞬間、全身が熱くなるのを感じた。

心臓の音がうるさいくらいに鳴り響くのがわかるほどだった。

動揺を隠しきれずにいる私をよそに、彼女は再び唇を重ねてきた。

今度は先程よりも長く深い口付けを交わすことになったのだった……。

それからしばらくの間、私と愛梨の関係は続いていたのだが、ある日を境にぱったりと連絡が取れなくなってしまった。

何かあったのではないかと心配して電話をかけてみたりもしたが繋がらないままだった。

不安に駆られていると、突然メールが届いた。

差出人は愛梨からで内容は短くこう書かれていた。

『会いたい』ただそれだけだったが、それだけで十分すぎるほど伝わった気がした。

急いで支度を済ませると家を飛び出すようにして出発した。

待ち合わせ場所に到着すると、そこには既に愛梨の姿があった。

彼女はこちらに気付くと駆け寄ってきて抱きついてきた。

突然のことに驚いていると、耳元で囁かれるような声で言われた。

「ずっと会いたかったんだよ?」

それを聞いて胸が締め付けられるような感じがした。

それと同時に愛おしさがこみ上げてくるのを感じた私は彼女を強く抱きしめた。

もう二度と離さないというように。

それからというもの、私たちは毎日のように会うようになった。

場所は決まってあの公園のベンチだった。

そこで何をするでもなくただ一緒にいるだけということが多かったのだが、それでも楽しかったし幸せを感じていた。

「ねぇ、花音。キスしない?」

ある日、突然そんなことを言われ戸惑ったものの、結局は承諾してしまった。

最初は軽く触れるだけのつもりだったのだが、次第にエスカレートしていき最終的には舌を絡め合う濃厚なものになってしまった。

お互いの唾液を交換し合い、歯列をなぞり、上顎を撫で回すような激しいディープキスを繰り返すうちに頭の中が蕩けてしまいそうになるほどの快感を覚えた。

息継ぎのために一旦口を離すと銀色の糸を引いたのが見えた。

それがとても淫靡なものに思えてますます興奮してしまう自分がいた。

「あ、愛梨……もっとキスしたいの」

私が懇願するように言うと、彼女は妖艶な笑みを浮かべて答えた。

「いいよ、好きなだけしてあげるからね♡」

その言葉を聞いた瞬間、理性が完全に吹き飛んだような気がした。

それから先はただひたすら求め続けた。

何度も何度でも飽きることなく繰り返した結果、最後には疲れ果てて動けなくなるまでに至ってしまったのだった……。

それからというもの、毎日のように愛梨と会ってはキスをしたり抱き合ったりするようになっていった。

最初は恥ずかしかったのだが、回数を重ねるごとに慣れていき今ではすっかり習慣となっていた。

むしろ、しないと落ち着かないくらいになっていたくらいだ。

最近ではお互いに相手を求めすぎて自制が効かなくなってしまうこともしばしばあった。

その度に我に返って反省するのだが、しばらくするとまた同じことを繰り返している始末だ。

我ながら呆れてしまうが、それほどまでに彼女のことが好きだということなのだろうと思うことにした。

そんなある日のこと、私はいつものように愛梨と会う約束をしていた。

待ち合わせ場所に着くと、すでに彼女が待っていた。

こちらの姿を見つけるなり手を振ってきたので、こちらも振り返すと笑顔で駆け寄ってきた。

「お待たせ、待った?」

そう聞くと彼女は首を横に振った。

「ううん、今来たとこだから大丈夫だよ」

そう言って微笑む姿が可愛らしく思えた。

思わず見惚れてしまっていると、不意に声をかけられた。

「どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」

そう言われて我に返った私は慌てて取り繕うように言った。

「い、いや、なんでもないよ! それより早く行こう!」

そんな私の様子を見て不思議そうな顔をしていたがそれ以上追及されることはなかったので助かったと思った。

(危なかったぁ……)

心の中で安堵していると、ふいに手を握られたのでドキッとした。

見ると愛梨の顔がすぐ近くにあってドキドキしてしまう。

「ほら行くよー」

と言って歩き出す彼女に引っ張られるようにして歩き出した。

しばらく歩いているうちに段々と緊張してきたため黙り込んでしまう。

そうすると、それを察したのか愛梨の方から話しかけてきた。

「大丈夫? なんか顔赤いけど……」

心配そうに見つめてくる彼女の瞳に吸い込まれそうになる錯覚を覚えるほどに惹き込まれていた。

そんなことを考えている間にもどんどん距離が縮まっていくのがわかった。

そしてついにゼロ距離になった時、唇に柔らかい感触を感じた。

「んっ……」

一瞬何が起こったのか理解できなかったが、すぐに理解した。

愛梨にキスされているのだと気づいた時にはもう遅かった。

抵抗する間もなく舌が侵入してきて口内を犯していく。

歯茎の裏や上顎など隅々まで舐められた後、最後に舌を絡ませてからようやく解放された。

「はぁ……はぁ……♡」

肩で息をしながら呼吸を整えていると、愛梨が声をかけてきた。

「ごめん、苦しかった?」

私は首を横に振って答える。

「そんなことないよ、気持ちよかっただけだから安心して」

そう言うと、彼女は安心したように微笑んだ。

それからしばらく他愛のない会話をしていたが、不意に彼女がこんなことを言い出した。

「あのさ、お願いがあるんだけど聞いてくれないかな?」

なんだろうと思って聞き返すと、彼女は少し恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。

「えっとね、その、もう一回してもいい?」

そう言われて一瞬戸惑ったが、断る理由もないと思い了承することにした。

「うん、いいよ」

そう答えると、彼女は嬉しそうに笑って再び顔を近づけてきた。

今度は最初から舌を入れてきたのでそれに応えるように絡め返す。

互いの唾液を交換し合いながら貪るような激しいキスをする。

しばらくして唇を離す頃には完全に息が上がっていたが、不思議と嫌な気分ではなかった。

むしろ心地良さすら感じていたほどだ。

それからしばらく余韻に浸っていたが、不意に愛梨が口を開いた。

「ねえ、今日泊まっていかない?」

突然の申し出に驚きつつも、特に予定もないのでOKした。

「泊まるのはいいけどね、愛梨、変な事をしないでね」

「え〜どうしよっかな〜」

ニヤニヤと笑う彼女を見て嫌な予感しかしなかったが、あえてスルーしておくことにする事にした。

その後、二人で買い物をしてから帰宅した後夕食を食べてお風呂に入った後は寝る準備をする事になったのだが、

ここで問題が発生したのだ。

それは、布団が一つしかないということだ。

つまり一緒に寝ることになるわけだが……どうしよう?

まあでも仕方ないよねと思いつつ横になると隣に入ってくる気配がしたので、そちらを向くと目の前に彼女の顔があった。

びっくりして声を上げそうになったが、なんとか堪えることができたようだ。

だが心臓の方はバクバクである。

そんな私とは対照的に落ち着いた様子の愛梨は私の頭を撫でながら言ってきた。

「ねぇ、花音キスしよ」

「えっ!? ちょ、ちょっと待って……!」

制止するも間に合わず唇を奪われてしまった。

しかも今回は軽いものではなく濃厚で深いものだったため、頭が真っ白になるような感覚に襲われた。

数秒後に解放されると今度は、首筋に吸い付かれたかと思うとチクッとした痛みが走ったことで我に返った私は、

慌てて引き剥がそうとしたものの、力が入らずされるがままになってしまうだけだった。

「え、待って! 何をするんですか!?」

と私はパニックになりながら抵抗しましたが、彼女の力強いキスには抗えませんでした。

彼女の唇からは情熱が溢れ、私は驚きと戸惑いに包まれました。

キスが解放された直後、彼女は私の首筋に吸い付いてきました。

チクッとした痛みが走り、さすがに我に返った私は、必死に彼女の唇を引き剥がそうとしました。

しかし、彼女の力にはかないませんでした。

私はただ彼女にされるがままでした。

時間が経つにつれ、私は落ち着きを取り戻しました。

彼女に対して怒りや疑問が湧き上がっていましたが、まずは冷静になる必要がありました。

「ちょっと待ってください! なぜ私にそんなことをするんですか?

私の意志を尊重してください!」

私は声を震わせながら、彼女に向かって言いました。

彼女は驚いたような表情を浮かべ、謝るように言いました。

「ごめんね、ついやりたくなっちゃったんだ」

「そ、そうですか……」

それを聞いて、なんだか拍子抜けしてしまいました。

てっきり何かされると思っていたのですが、違ったようです。

ホッとしたような、残念なような複雑な気持ちになりましたが、とりあえず許してあげることにしました。

「わかりました、許します」

そうすると彼女は嬉しそうな顔をして抱きついてきたのです。

「ありがとう、花音大好き♡」

そう言われた瞬間、顔が熱くなるのを感じました。

恥ずかしくて顔を背けると、彼女はクスッと笑いました。

それから私たちは眠りについたのでした。

翌朝、目が覚めると隣に愛梨の姿はありませんでした。

どこに行ったんだろうと思っていると、

「おはよう、朝ごはんできたよ」

という声が聞こえました。

どうやら朝食の準備をしてくれていたようです。

食卓へ向かうと、トーストと目玉焼きが用意されていました。

早速いただくことにしましょう。

一口食べるととても美味しかったです。

夢中で食べているうちにあっという間に平らげてしまいました。

食後のコーヒーを飲みながらくつろいでいると、突然彼女が話しかけてきました。

「ねぇ、昨日の続きしない?」

唐突な提案に驚いて飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになりましたが、何とか堪えることができました。

「な、何言ってるんですか!? そんな破廉恥なことできるわけないじゃないですか!」

私が抗議すると、彼女は悲しそうな顔をしていました。

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