2.仲間はずれ

次の授業がある日、あおいは今日こそは九条くんと普通に話すんだと朝から気合いを入れていた。


あれからグループでは他愛もない話しがされていたがそこに混ざる勇気はなく、既読だけつけて返信は特にしていなかった。


前回と同じように席に集まり授業が始まる。


今回はあおいが少し詳しく知っている分野だったため話に加われるかもしれないと期待していた。


ディスカッション中に九条が間違った覚え方をしている事に気がついた。


他の班員は気付いてない見たいだからチャンスだと思い声を上げる。


「そこ、間違ってるけど…」


楽しく話していたところに急に話しかけてきた冷たい声に空気が凍りつく。


「え…えっと、ここね。ありがとう」


九条はそう言いながらも顔が引き攣っている。


他の班員もみな何こいつというような目であおいを見ていた。


途端に高校時代のことがフラッシュバックしそうになり慌てて俯いた。


「別に…」


その後は九条が明るく振る舞っていたが気まずい空気が漂ったまま授業が終わった。


今回は怖くて声をかけることも出来ずに授業が終わった瞬間にすっと帰った。




そのディスカッション授業があった週の週末、あおいは生活用品を買い足すために街の中心地の駅まで来ていた。


先々週は入学式などがあり、先週は書類などの提出で駅にこれていなかったため今日は買うものがたくさんあった。


1時間ほど駅を回ってやっと用事がすみ、歩き疲れたあおいは近くのカフェに向かった。


たまに駅に来た時にそこでくまのクレープを食べるのがあおいの楽しみだった。


浮かれた足取りで駅前を歩いているとふとみたことのある顔が通り過ぎた気がした。


何気なくそちらを見てみたら、5人が仲良さそうに話している姿が見えた。


目を凝らしてみるとその5人はあおいを除いたあの班員たちだった。もちろんそこに九条もいる。


その光景を見た瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた気がした。


距離を置かれる事に慣れているあおいでも、流石にこれは傷ついた。


あれからグループでは他愛もない話しかされてない。という事はあおいがいない所で約束が交わされたという事だ。


その他の人に仲間はずれにされるのはまだいいが、初恋である九条にされるのが何よりもつらかった。


見ていたくないのに目が離せなくて、みるみる視界がぼやけていく。


もう目から涙が溢れてしまいそうだが必死で我慢する。


ふいに九条が後ろを振り返った。あおいと目があった瞬間、驚いたように目が見開かれる。


それは見られた事が気まずかったからか、はたまたあおいが泣きそうになっていたからのが見えたからか。


分からないがそれ以上は見ていられず後ろを向いて走って逃げた。


帰り道もさっきの光景が思い浮かんでは涙が目に浮かぶが絶対に泣くまいと手を握りしめて耐えていた。


もうくまのクレープのことなんてどうでも良かった。


むしろ行かなければよかったと、2度と行きたくないとまで思ったくらいだ。

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