第51話 何故こいつがいる

何故こいつがいる


女性の拘束具を全て開錠し、全員無事に解放することができた。

そして他に敵が居ないかと見渡せば、一つだけ不思議な光景が。


「男?しかも…」

「助けてくれ…」

「だれだ、あんた」

「おれはセイヤ、菅田聖弥だ」

「ん?どこかで会わなかったか?」

「いや」

「鑑定」


会ったと言うかここに来る原因になったバカ野郎の一人、だが花梨からコイツらの名前までは聞いていないし、カラオケボックスの薄暗い室内ではっきりと顔を見ていなかったノブユキ。

今まで見て来たこの世界のNPCとは違い、現実世界にいた時の日本人の姿が、どこかで見た事が有ると錯覚させる。

鑑定スキルで分かるのは名前とスペックぐらいなので、こいつがいじめっ子でありクズだと言う所までは分からない。

それに犯罪係数もブルーと言う事で、救助対象となっていたりする。


「仕方ないな…」

「私がお手伝いします」

「ああ 頼みます」


貼り付けになったセイヤを下ろし、聖女がヒールの魔法で傷を癒していく。


「有難う、聖女様」

「お前目つきがいやらしいな」

「なんだと?」


聖女に癒されて怪我を完治したセイヤだが、足りない頭をフル回転 結果として信之達についてこの洞窟から出ることにした。


「お前、もしかして転生者か?」

「転生じゃないがこの世界にひきづり込まれたのは確からしい…」

「勇者様も?」

「そうみたいだよ」


3人が顔を見合わせる、話は後でするとしてこの場にいる邪教徒たちを縛って連れて行かなければならず、慣れない工作をしなければいけなくなった。


「なんで戦士登録したんだ、善行LV低い奴は工作士にしておけば役に立ったのに」

「そんなこと知るか!」


何をしているかと言うと邪教徒たちの着ていたポンチョらしき物を引きちぎり、紐を作成して奴らの手と体を縛る道具にしているところだ。

ポンチョを脱がしても中に服を着ているので汚いものを見なくて済む。

武器や金目の物は全て頂いておくことにしたが、邪教徒達が身に着けていた物にそれほど高価な宝石類などは無かった。


「できたか?」

「ああ、これで良いんだろ」

「やっぱお前、カラオケボックスで会ったよな!」

「あ? どこの」

「阿吽の壱だよ、女5人と男3人」

「あ! あんときのダサ坊かよ!」

「今は真逆だがな、やっぱりお前も取り込まれていたんだな」

「じゃあ他にも」

「あの後6人行方不明と聞いたぞ、そして女子3人は死体で見つかった事もな」

「マジかよ…」

「全く勘弁してほしいよ、お前らのせいでこうなったんだぞ」

「ちげーよ、もとはと言えばお前のスマホのせいだろ」

「話になんねー、お前が女どもに担ぎ上げられて、いじめの片棒を引き受けなければ済んだ話だろうが!」


時折邪教徒のケツを蹴りながら洞窟の中を入って来た方角へと進んで行く。


「ところで聖女様はもうクエスト100個終わったのでは?」

「聖女はやめてください、この世界の人に言われるのは仕方ないですが私の名はマリカです」

「じゃあマリカはなんで、まだここにいるの?」

「クエスト100個クリアの報酬は現世への帰省もしくはこの世界の鎮魂です、詳しくはクエストを100回こなさないと判りませんが…」

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