第42話 菅田聖弥の場合

菅田聖弥の場合


ノブユキのスマホを起動させAIアプリによってヘブンスバースへと捕らわれたイケメンクズホストのセイヤ。

付き合っていた彼女から別れ際にお金を手に入れることはできたがその後すぐにここへとダイブする形となった。

解説者に乗せられ、Hをし放題という甘い誘惑に思わず、ゲスな想像をして期待していたのだが。

それが地獄への扉だとは思ってもみない彼だった、確かに参加者から見れば何でもありの世界。

強い者だけが生き残れる世界だと知るまでそれほど時間はかからなかった。


「な なんだ ここ?」


ここも久留実が最初に送られたような洞窟の一つ、但し花梨のような助け船は無いと言って良いのだが。

もしかしたら誰かが何時か助けにやってくる可能性が無いとは言い切れない、それまで生きていたならの話だが。


「マジでゲームの中なのか?」


彼が特典でプレゼントされたのは石斧とスキルのオートリペア、そして戦士の指輪劣化バージョン(能力半分)。

一応彼は戦士を選ぶことにしたようだが、初期のスペックは言わずもがなであり、このまま魔物を倒すことなど出来ないと言って良い。

多分LV1の魔物でさえ手こずるのではないだろうか。


「それにしても暗い…」


もしかしたら善行LV5以下の出発点は全て洞窟設定なのかもしれない。

暗い洞窟の中だが歩き続けていると、いくつもの分岐点に出くわした。

何度もの分岐選択で出来るだけ上へ行く事を目指していたのだが、時折上に行くはずが下へとさがる別れ道もあり。

中々思ったようには進むことができないでいた、だが洞窟は先へ進めどいつまでたっても出口など見えてこない。

とうとう疲れて座り込んでしまった。


「なんだよここ、何も出てこないし…」


だがそこへ、洞窟あるあるの魔物が現れる。


「ん?もしかしてスライム?」

「ムニューン」

「ポニョー」


少し動くたびに音がしている、少し広がった場所にゼリー状の物体が幾つか見えているが。

それらは移動するためにうねうねとその表面をゆすり形をゆがませる。


「どうすんだこれ?とりあえず攻撃するのか…」


セイヤは手に持った斧で目の前にいるスライムに攻撃を仕掛けた。


「このやろ」

「ブン」

「ムニョン」

「だ~ 跳ね返ってきやがる」


だが攻撃したことでHPのポイントゲージが見えた、そこには無情にもHP30と言う数字。

この時のセイヤのHPは基本HP10+戦士の指輪劣化版で5+=15そしてATは5+3の8である。

石斧の攻撃力は10なので合わせても30まで行かない、しかも相手のスライムはLV2でDF20である。


「確かスライムって核だったか…」


どこかのRPGゲームではスライムを倒すにはその核を壊せばよいと聞いていたのだが、目の前のスライムにはそのような核など無かった。

いやその前に暗くて核なんてものが何処にあるのか分からないと言った所だ、目の前にいるスライムは透明ではないので分かるはずもない。


「どうしろっていうんだ!」


そこからはスライム相手にあの手この手を試してみた、岩を落としてみたり石を投げつけたり。

そして最後に自分の足で踏みつけてみた。


「このやろー」

「ブシュン」


今履いているのは現世で使用していたスニーカー、いつも使っているやつ。

上にはパーカーを羽織り下はジャージと言う普段着姿、手に入れた石斧がスライム相手に何も効果が無いと判った今、取れる行動は多くない。

(どうしたらいい)

足を乗せても跳ね返されて、中にズッポリ入るかと思いきやツルンと滑って地面を踏む。

攻撃は通らないが攻撃されることもない、何事も無かったようにスライムは1分1センチと言う遅さで移動して行く。

周りには岩が少しと地面には石ころぐらい、剣や槍でも手に入れることができればもっとましだったのか。

聞いた所だがLV3では木剣と石斧そして初心者の弓、鉄製の武器はLV5からと言われてしまい。

木剣より攻撃力が高そうな石斧を選んだ結果がこれだ。

いったいLV1の敵は何処にいるのか?スライムでさえLV2もあるのに。


「これ全部踏みつけて行けばもしかしたらLV1のスライムがいるのか…」


そうやや広い洞窟にざっと見られるスライムは10匹前後、向こうから攻撃して来るわけでは無いので一度攻撃してみればLVがどのくらいかわかる、そのうちLV1のスライムに的を絞ればなんとかなると考えたセイヤ。

片っ端から踏みつけ、ようやく1匹だけ小さめのスライムを見つけるのだが。


「よしやるぞ」

「ブン」

「プニョン」

「なんでだよ!」


LV1でも斧ではスライムに傷一つ付かなかった。

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