第43話 冒険者組合の受付
冒険者組合の受付
ノブユキはようやく冒険者組合の受付へとやって来た、受付は2か所あり順番に本日の獲物の買い取りやクエストの報告を受けていた。
「はい 次の人!」
ようやく順番が来て進むと目の前にいるのは眼鏡をかけたいかにも仕事ができます、を装う女性が眼鏡の角度を直しながらこちらをじろりと見る。
「組合に登録をしに来たのですが」
「登録ですね、ではこちらにお名前と職業を書いて提出してください」
「はい」
目の前に差し出された用紙に書き込み差し出すと又じろりと見る。
「登録料は銀貨3枚、紛失した場合再発行は金貨1枚」
「はい、これで良いのかな」
「ジャラ」
「それではこのプレートに手を突いて」
「はい…」
「ブン…」
「こちらが会員カードになります」
大きさはクレジットカードよりやや大きめだが、表側は青く、裏側には文字が幾つか刻まれている。
鑑定スキルのおかげで文字も読めるし書き込む文字にもアシストが付いているので、ゆっくりならば間違わずに書き込むことができる。
どうやら最初は全員Fランクから始めるらしい。
「こちらの組合員証は各地の組合でご利用可能です、採取した薬草や鉱物そして倒した魔物の肉や皮などはこのカードを提示すればお取引可能となります、それからこちらのしおりを読んでおいてください、新人冒険者様に必要な心得が書かれております」
B5ぐらいの大きさの小雑誌、そこには初心者冒険者が必要なノウハウが書かれていたが。
殆どが以前RPGゲームをした時に経験した内容とほぼ同じ。
「なるほど難易度で貢献値が変わるのか、と言う事はEクラスのクエストを2つばかりやればひと月は何もしなくて良いわけだな」
「ねえ君、初心者かい」
おれが椅子に座りしおりを読んでいると冒険者と思しき人物が声を掛けて来た。
「これからもうひと稼ぎしに行くんだが、どうだ一緒に来ないか?」
(あやしいな)
ロック隊長とは一時的に分れたが、まだこの先どうするのかは決めていない。
だが現在時間は既に夜7時を回っており、これから行けるクエストなどあるのだろうか?
「これから?」
「ああ、初心者用のダンジョンがあるんだが、そこのクエストで1階のポーション入手と言うやつがある」
「へ~、それは簡単なのか?」
「ああ、超簡単だ」
「それなのにあんたらと5人で行くのか?」
「いや、そりゃもう遅い時間だし用心の為だよ」
「俺はもう疲れたし食事をしたら寝ようかと思うんだけどな、それにあんたら一仕事してきたにしては汚れていないな」
「あ~ 俺達は今日休みの日だったんだよ」
「…嘘っぽいな」
「嘘じゃないさ」
「鑑定しても良いか?」
「か 鑑定持ちか!」
「ああ、鑑定してみないと嘘か分からないからな」
(鑑定は魔法士か商人でなければ使えないはず、ハッタリだろう)
「ああ、構わないぜ」
「鑑定!」
「ほら何もないだろ」
「このオレンジってどういうこと?」
「何のことだ?」
「初心者を騙して仲間で襲い、持ち物奪ってダンジョンに置き去りと言うのがやり口って出たんだが」
「やべ!にげろ!」
「ちょっと待った!」
「ガシッ!」
要するに初心者キラーだ、彼とそして仲間の3人。
新人を誘ってクエストをこなすと誘い、どこかで襲う算段なのだろう。
鑑定スキルでその男の詳細な情報が分かった。
「ガツン!」
「離せ、このー」
「この組合は犯罪者でも自由に出入りできるのか?」
「いいえ、そのような事は無いわよ」マリシーナ
「あ!」
いつの間にか組合にマリシーナ嬢が訪れていたらしい、しおりを読んでいたので分からなかった。
「ロック隊長」
「俺も驚いたよ」
「おら お前も逃げるなよ」カイル隊員
いつの間にか残りの3人は隊長やその部下に首根っこを掴まれ身動きできない状態に。
それを見た組合の従業員が倉庫から拘束具を4つ持って来た。
「よくわかったわね」
「一応鑑定が使えますから」
「ますますうちで欲しいわ」
犯罪者はその度合いから色で分けられている、窃盗や暴行の犯罪を一回でも犯せばイエロー、それらを常習するとオレンジになり、殺人や国からの指名手配が出ればレッド指定ということになる。
オレンジでも一人捕まえれば金貨5枚の報奨金が出る、報奨金の出どころは組合だが犯罪者の場合所持している金目のものが全部没収になり。
その中から支払われるので、犯罪者捕縛の報奨金で組合が損をする事は無い。
スチャロンダーグ商会
マリシーナ・スチャロンダーグ(17)魔術士(会計士)スチャロンダーグ商会・会頭
ロック・バラライカ(40)戦士 スチャロンダーク商会、護衛隊長
ジゼル・ヨークシン(27)魔術士 スチャロンダーク商会所属
カイル・トマホーク(30)戦士 スチャロンダーク商会所属
ドラム・サイラル(33)戦士 スチャロンダーク商会所属
カシム・ミッチェル(23)癒術士 スチャロンダーク商会所属
眼鏡をかけた受付嬢に驚かれたのは言うまでもない、それにオレンジカラーの犯罪者はCクラスのクエストだったりする。
掲示板には(初心者狙いの不届きものがいる、捕まえた者には金貨5枚)と書かれたクエストが有った、このクエストは事後報告でも構わないらしい。
「ごめんねCクラスの仕事だからうちで請け負った形で賞金を支払う事にしたわ」
「それは構いませんが」
「はいこれ」
報奨金の金貨5枚を受け取った。
「それからカード」
オレンジを捕まえることができる人物がFクラスと言う事はありえ無い、カードの色はいつの間にか青から赤銅色へと変わっていた。
「Dランク」
「奴らはCランクだから本来はCランクでも良かったが、登録したその日に直ぐそこまでのランクアップという分けにはいかないらしい」ロック
「なるほど」
「でもこれでひと月は組合のクエスト縛りから逃れられるわよ」ジゼル
「臨時収入も入ったし、一緒にお食事しましょう」マリシーナ
いつの間にか本日の宿も食事もマリシーナ嬢に押し切られる形で決められてしまった。
まあそれは別に構わないのだが、この状況はクエストへの流れとして必然なのか、そういえば冒険者組合に登録してからはあの【クエストが発生しました】が出なくなった。
これからは組合のクエストを主体的にこなす流れなのかそれとも、それとは別にクエストをこなすのか。
「ところで鑑定は魔法?」
「あ~ 方法は秘密です」
「まあ鑑定の方法はいくつかあるから、別に隠さなくていいのよ、私も持っているし」マリシーナ
「そうなんですか?」
「商隊を率いているんですもの、当然ですわ」
「お嬢はこれでも商会の番頭なんだよ、隣の国との貿易は全てお嬢の役割なのさ」
「へ~すごいですね、若いのに…」
「あまり褒めないで、恥ずかしいわ」
いやいやゲームの設定だからと言って17歳で商会の番頭は無いだろう、まあ絶対と言う事は言えないので、違和感が有っても受け入れるしかないのだが。
「それじゃ明日からも手伝ってもらうわね」
「え?」
「今日の出来事で組合のクエストは当分しなくても大丈夫だから、俺達の仕事を手伝ってほしいのさ」
「そういう事ですか…まあ構いませんが」
確かスチャロンダーグ商会はブリュッカス王国へ行く予定だと聞いた、この町を出れば数キロでお隣の国へと入る。
「ここから先は秘密だが、俺達はブリュッカスの王様に献上品を届けに行く途中なんだ」
秘密と言っておいてこの場で話すとか、まあ細かいところは割とアバウトなのかもしれない。
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