第40話 ブリュッカス王国

ブリュッカス王国


その頃ノブユキを乗せた馬車はレリンダ王国とブリュッカス王国の国堺まで来ていた。

先日現れた山賊は商隊の護衛と協力し何とか駆逐することができた、山賊のボスが召喚したデミフェンリルも、同行していた護衛の手も借りこちらも何とか退治することができた。

※デミファンリル、フェンリルの劣化版であり、能力は半分以下 元の魔物の能力によってその力は様々だがおおよそ半分の力と考えて良い。

クエストも5つこなすことができて、懐もウハウハな状況になって来た。

【クエスト発生:旅の商人を救出せよ、蜘蛛だらけな道を調べたら大変なことに】

【お嬢様の護衛:LV10、お嬢様を無事に王国まで送り届けろ】

【山賊を退治せよ:LV8成功条件こちらの死亡者2名未満、クエスト失敗・令嬢の死亡もしくは攫われる】

【敵の召喚獣:召喚獣デミフェンリルを倒せLV40】

【山賊の頭領をつかまえろ:殺すと失敗、捕まえて衛士隊に突きだそう】

この5つのクエストが矢次様に出て来るのだから、忙しいと言うかなんというか…


「ノブユキ様は誰にも仕えないのですか?」


山賊の頭も無事に捕まえる事が出来て5つのクエスト中3つは完了し現在LVも36まで上がっている。

LV40のデミフェンリルは信之にとってかなり美味しい相手だった。

時折使ってくる(極寒の息吹)魔法はかなりやばかったが、護衛の魔法職が使う(春の世界)魔法で相殺することで。

1万以上あったHPを削り切ることができた。


「今のところは…」

「では当分うちと契約しませんか?」

「え あーどうなんでしょう、迷惑になりませんかね~」

「迷惑なんてとんでもない、貴方は勇者様ですから少しでもお手伝いできるなら、こちらとしても願ったりかなったりですよ」ロック

「手伝う?」

「そうです、通常の仕事もそうですが、大抵勇者様は色んな仕事を請け負うと聞いております、我々がお手伝いできれば褒章もそうですが名をあげることができます」

「スチャロンダーグの勇者ノブユキ様、良い響きですわ」マリシーナ

「え~!」


途中までは一緒に行動するとして、その仕事が終わればまたクエストが発生するのだろう。

通常のRPGゲームとは違いクエスト発生まで何があるか分からない。

多分隣の国へ行けばどこかで別なクエストが発生するかもしれないのだが、それが今すぐに分からないので、すぐに返事をして良い物なのだろうか。


「まあ無理にとは申しませんわ、でも一応考えて置いていただきたいと思いますわ」

「お抱えになれば食うに困らないし、泊まる場所も用意してくれる、損は絶対無いと思いますぞ」

「はあ…」


馬車はいつの間にか国境の町フェッシェルに到着し、捕まえた山賊の頭領を町の衛士隊へ差し出す。

町の入口は石組で3メートルほどの高さまで壁が組まれており、その手前では入場確認のため衛士隊が数人で町へ入る人たちを調べている。

隣の国へと入るにはこの町を通るしか行く方法が無いのだとか。

他は道が無いばかりではなく高LVの魔物が出没する森で覆われており、この町は一応結界魔法によって魔物の攻撃から守られていると言う話だ。

少し時間はかかったが捕まえた首領を引き渡し、20分後には町の中へと入ることができた。

【クエストが2つ完了しました】

(ここで残りが完了なんだ、なるほど…)

ストレージの中には自動的にクエスト報酬がプレゼントされる、ほとんどの場合この国の通貨だったり宝石や魔石の場合が多いが。

今回は何かのカードのようなものがストレージに入っていた。


「そうだ勇者様は組合に登録していますか?」

「組合?」

「我々は最初組合に登録して仕事を斡旋してもらうのです」ロック

「冒険者組合と言って魔物から得た素材などの買い取りもしてもらえますの」

「そうなんだ」

「通常の物々交換だと物の価格が分かりにくいですが、組合を通せばほぼ適正な価格で買い取りや販売ができます」

「登録しておいた方が得だと言う事ですね」

「はい」


馬車は町の門から中へと進み、一行は本日ここに宿泊する予定だ。

町の中は割と活気が有り、露店なども数軒並んでいる。


「我々はそこの宿屋と契約しております、何かあったら声を掛けてください」

「わかりました」


RPGゲームの中ですることの一つ、まずは冒険者組合へと足を運ぶ。

たまにこういうゲームには冒険者組合だけでなく魔法組合とか鍛冶屋組合とかがあるのだが、このゲームのシステムはどうなっているのだろう。

町の目抜き通りの一角に人が群れている場所が有った、見てくれはいかつい粗野な男達ばかり。

建物の看板にはそれらしき文字が…


「おら てめーら さっさと並べ!」

「お頭!」

「なんだ?」

「こんなんで金貰えるんですかい?」

「組合と言えば助け合いだ、一応俺達はちゃんと登録してるんだ、それに仕事はこなしてきただろ」

「そうですがこの人数でFクラスの仕事やっても…」


その数20人近く、着ている服装はボロに近い、腰には一応武器をぶら下げてはいるのだが、手に持っているのはどうやら草のような植物。

仕事を終えて金銭と交換するために並んでいるのだろうか?


「ねえあんたいい服着ているじゃないか?」


少し離れて見ていると冒険者風の女性が話しかけてきた、外見的には普通の冒険者に見えるが、俺はすぐに鑑定スキルを発動すると。

D級冒険者:アンジ―・クラシル・戦士LV17・女(27)Bクラスクラン(銀狐:シルバーフォックス)フェッシェル支部のスカウト。


「そうでしょうか?」

「それ勇者の服でしょ、一式持っていると言う事は勇者志望なのがバレバレよ」

「わかります?」

「分からない奴は冒険者じゃないわよ」

「ところであの人たち何で並んでいるんです?」

「あ~ あいつらは日銭を効率よく稼いで資格を失わないようにしているのさ」


聞くところによると冒険者の資格(冒険者証)は所持するのにいくつか守らなければいけない規則がある。

その一つは冒険者組合で仕事を請け負う、但しそのランクにより沢山こなさなければいけない仕事と月1回でも済むような仕事がある。

Fランクの冒険者に課せられた仕事は薬草収集から町のお手伝い、掃除や壁の修復などと幅広いが、一番効率が良い仕事が日替わりで有ったりする。

本日の特選ワークがたまたま薬草収集であり、3束でクエストクリアになっている。

しかもそのFランクの仕事に割り増し報酬が付いているらしい。


「本日の特選クエスト、薬草3束・通常の3倍報酬ってやつさ、しかも早い者勝ちで30人限定だから奴ら朝から並んで効率よく楽をして稼ごうって訳だよ」

「へ~」

「その代わりほぼ毎日やんないと冒険者の資格をなくしちゃうけどね」


Fランクの仕事はその難易度からノルマと言う物が有ったりする、薬草収集は週1回以上こなさなければならず、壁修復などは週2日という具合に収益だけではなく、日々働かせるための工夫がなされている。

彼らはその中でいちばん効率が良くて一番楽できる仕事を他の冒険者より先に手に入れる事で生活しているらしい。


「あんたこの町は初めてかい?」

「ええ 先ほどマリシーナさんのキャラバンに同行してこの町に来たので…」

「マリシーナ?スチャロンダーグ商会かい?」

「商会?伯爵と伺いましたが」

「スチャロンダーグは伯爵だがここら一帯の物流を一手に請け負っている大店だよ、フーンじゃあもう目を付けられているみたいだね」

「そうかもしれないです」

「そういう事か分かったよ、今回は諦めるとするかね、何かあったらいつでも相談に乗るよ、まああんたならそんな事必要ないかもね」


中々気風の良い姉御と言った所だ、しかもどこかの大きいクランでスカウト(人集め)を任せられているらしい。

まあ今の所どこかのクランに所属するとかは考えていないので、とりあえずはそういうクランが有り人員募集をしていると言う事を記憶しておく。

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