第39話 呉越同舟と言うか

呉越同舟と言うか


花梨のインベントリーはあっという間に240個になりATやDFも1000を超えている。

まさか倒せるとは思わなかったが、このゲームは属性に対しては破格の差をつけているようだ。

多分、火や水に対しての差は攻撃した場合80%以上の差が出るのではないだろうか。


「あんた武器は?」

「ゆ 弓だけど…」

「もしかして善行、一桁?」

「そうだけど悪い?」

「そうなんだ、ご愁傷様」

「困っている人にそういうこと言う?」

「あんたが今まで行って来たことへの報いだろ!」

「ごめんなさい…」

「あたしに謝ったって今更どうにもできないし、検証しなくちゃいけないことも有るから、少しは協力してやるよ」

「ほんとに?」

「仕方ないだろ、あーしだって目の前で知り合いが死ぬのは勘弁だぜ」


既にロックドラゴンはインベントリーの中、死体になった魔獣はインベントリーを表示させ指で指定すれば収納可能になるらしい。

ノブユキの時は、疲れてその暇が無かったので放置したところ、村人たちが片付けたと言う事らしい。


「それでクエストは何だって?」

「えーと魔石集めだって」

「勇者様、有難うございます これはお礼です」


今まで久留実と話していたので近寄って来なかった鉱夫達、ドラゴンもいなくなってこれから安全に作業ができると言う形になったが。

どうやら壁岩を壊した報奨金とロックドラゴン討伐の賞金が出たと言う事らしい。

他にも褒章がいろいろ出たが魔物の討伐で得た褒章は自動的にインベントリーの中へと入るようだ、確かに床に散らばっているお宝はどう考えても自然だとは言えない。

要するに魔物の討伐=魔物からと村人NPCから、さらにクエストクリアの褒章という3つ得られると言う事らしい。


「勇者様こちらの方は?」

「ヒーラーだって、魔石を取りに来たらしいよ」

「わざわざこんな所まで…」

「あ、そうだツルハシ貸してくんない?」

「ええですよ」


差し出されたのは鉱夫達の仕事道具、2つ差し出されたが花梨はいらないと断った。


「あーしはこのコブシが有れば良いから、あんたが使いな」

「ありがとう」

【通常クエスト魔石収集:各魔石10個、黒魔石・光魔石・火魔石、初回のみ】

「あたしもか…」


花梨は当然だが、拳で壁を殴るだけ。

あっという間に硬いはずの壁に穴が空く、そして一回の壁殴りで最低10個の魔石とその他鉱物が取れる。

いちいちより分けるのは面倒なので片っ端からインベントリーへと収納して行く。


「大きさも分けるのかなるほど」


花梨のインベントリーには採れた魔石を全て収集しても問題はないが、クルミのインベントリーには10個しか入れる所が無い。

問題なのは鉱石の大きさと種類、通常の黒魔石でも3つのサイズが有る。

クエストには魔石を10個ずつと言う言葉だけ、大きさまでの指定は無い…


「ちゃんとしまうことできそう?」

「えーなんですぐいっぱいに…」

「ちゃんと名前見て収納しないと、3種類10個ずつ入らないってことじゃね」

「そう?じゃあこの石はだめなのか…」

「それ何 光ってる?」


それはキラキラ輝く半透明な石、この鉱山では宝石も採れるらしい。

しかも久留実がインベントリーに入れていたのはダイヤの原石やルビーの原石、勿論売ればソコソコの値が付く。


「魔石の大きさは大中小、どの大きさでも良いみたいだね」


大きさの範囲は割とアバウト、魔石は基本小さいのは2~3センチから大きいのは1メートルを超えている。

インベントリーには家さえ収納可能なわけだから、一番大きい魔石が家ぐらいの大きさがあってもおかしくはない。

但しその場合魔石としてカウントするのではなく、鉱物群として収納するようだ。

要するにいくつもの鉱物を纏めて入れたと言う形でひと固まりで収納されるらしい。

嬉しいことに1種で一か所のインベントリーに収納されるので同じような大きさの同種鉱物は99個までひとまとめでカウントされる、それより増えれば他のインベントリーと言う形だ。


「そっか、それじゃ中ぐらいの大きさだけを集めた方が良いのかも…」


久留実は最初全部入れていたが途中から魔石は中ぐらいの物ばかりを入れることにしたようだ。

そうすれば価値のありそうな宝石も収集することが可能になる。

花梨は面倒なので全部を集めることにした、黒魔石はなんと千個近く。

ダイヤモンドの原石も100個以上、光魔石も200個を超えた。


「あなたずるくない?」

「どうして?」

「服も最初にもらったんでしょ」

「善行とかがLV20あったからね」

「なんでよ、花梨暴力使っているジャン!」

「正当防衛と、いじめられている子を助けている場合は全て許されるって事なんじゃないの?」

「理不尽だわ」

「あんたの方が理不尽でしょ、いったい何人いじめて来たのよ!」


そこからは花梨はまるでどこかの先生のようにガミガミと説教を始めてしまった。

その顔は当然恐ろしいだけではなくLVの差もあるのだろう、いつの間にか地面に正座している久留実。

終いには目から涙があふれて来る。


「うえ~ん」

「泣いたって許されることじゃない!あんたはこの世界で善行増やして心を入れ替えるまであたしが教育しなおしてやる!」

「ごめんなさい~」


好かれると言うより付きまとわれてしまうとは、だがこれで久留実の死亡確率は50%以下になって来る。

もし花梨に出会う事が無ければ2・3日で死に戻る所だったかもしれない。

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