第38話 腐れ縁

腐れ縁


目の前に現れた怪物、もちろん戦うなどと言う事は考えられない久留実には陰で見ているしかできることはない。

だがそこに同年代だと思われる女子が現れ、目の前で戦い出した。


「スゲー何者?」


この時点でその何者が花梨だとは知る由もなく、そして目の前の光景を黙って見ているしか無かった久留実だが。

とうとう彼女にもクエストが訪れる。


【クエスト発生】

【勇者カリンと魔石集め:カリンのご機嫌を取って同行せよ、嫌われたら失敗】

「勇者?カリン?」


この時はカリンがあの花梨だとは分かるはずもなく、自分の生きる道は目の前に現れた救世主に委ねる他に無いと思っていた。


「すごーい、貴方は勇者様なのね」

「あんた だれ?」

「私は…クルミン、一応ヒーラーなんだけど」

【ポーン】

【クエスト発生】

【新米ヒーラーのお手伝い:クルミンを助けてあげよう、クルミンが襲われ死んだら終了】

「ここでかよ、まったく」

「あの何か?」

「ん? あんた誰かに似てんな…」

(なんだ?この女)

「もしかして山口花梨?」

「あ! 行方不明のバカ女!」

「えー」二人


運命なのかつかず離れず迷惑なバカ女がここにいたとは思ってもみなかった。

この女がカラオケ屋に呼び出さなければ多分2名共にここにいるはずも無かったのだが、果たしてアプリは何を考えここに引き寄せたのだろうか?


「それで何か言う事は無い?」

「あ あるわけないでしょ…」

「あんた知ってる?」

「何が?」

「カラオケボックスにいた、取り巻きの3人」

「あの子たちがどうしたのよ」

「死体で見つかったって」

「嘘でしょ」

「あんたもこの世界に来たなら、解説者から聞いてんでしょ」

「この世界で死ねば向こうでも死ぬって事?」

「ハッタリじゃないの?」

「こうしてアプリの中に引き込まれているんだ、全部嘘じゃないって事かもね」

「…」

「でも一番の元凶がまだ遺体で見つかってないからおかしいなとは思ってたんだよ」

「勝手に殺さないでよ!」

「そういえば男子も全員行方不明だって、もしかしたら全員この世界に取り込まれたのかもしれないね」

「うそでしょ!」

「アタイがそんなウソ付く分け無いでしょ、そんでそっちのクエストは?」

「言わないとだめ?」


クエストの質問になったとたん口が堅くなる久留実、確かに勇者カリンに嫌われないようにしなければクエスト失敗と言う事になるのだから、憎い女を目の前にして口を噤むのも無理はない。

だが、この世界で少しでも長く生きて行くには目の前の嫌いな女にこびへつらうしか生きる道はない。

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