第33話 商隊護衛

商隊護衛


馬車に近寄ると数人の男が下りて来た。


「君か?助けてくれたのは」

「あ~ そうかも…」

「私の名はロック・バラライカ、この商隊の隊長をしている」

「僕はノブユキ、旅の冒険者です」

「ここは危険だ、馬車を回すから手伝ってくれ」


どうやらこの道を進むのは止めて引き返すことにしたようだ、実は俺が進んできた道は目の前の馬車が来た道より狭く途中で合流している。

馬車が進もうとしていた道は他の国へと行く街道になっていたらしい。


「ブルル」馬


何とか馬車を回転させ来た道を引き返す。


「どうだ一緒に来ないか?」

「良いんですか?」

「かまわないよ、お礼もしないといけないからね」

【クエストが発生しました】

【お嬢様の護衛:LV10、お嬢様を無事に王国まで送り届けろ】

(は~?)


どうやらまた面倒なクエストが発生したようだ、しかもLV10いきなり二桁レベル。

このペースだとすぐにクエスト100個いけそうだが、自分のLVに即リンクしているのが気になって来る。

確かに今はLV15でありこなせるLVのクエストではあるのだが…


「お嬢様、こちらの方が同行してくれると言う事です」

「あら、どちらのお国の方かしら?」


馬車の中から冒険には似つかわしくない服を着たご令嬢が下りて来た、しかもフリル付きの傘を差している。


「あ~ 僕は冒険者でノブユキと申します」

「と言う事はジャパルンの出身かしら」

「ジャパルン?」

【冒険者全員出身はジャパルンで統一されています】

(そうなんだ、なるほど)

「はい、そ うらしいです」

「面白い方ね、私はマリシーナ・スチャロンダーグ、レリンダ王国のスチャロンダーグ伯爵の一人娘です、これからブリュッカス王国へ行くところです」


馬車は先頭の一台だけだと思っていたら、その後ろにも2台連なっていた。

1台目と3台目は幌馬車だが真ん中の馬車は木屋根の馬車、他の馬車より小さく人だけを乗せるタイプだ。

1台目と3台目には護衛が2人ずつ付き荷物が積んである、どうやら伯爵家は商会を運営しているのかもしれない。


「冒険者様はどちらへ行く予定でしたの?」

「セトック村まで行く予定でしたが、特にどこまでとは決めていません」

「そうなんですの?」

「冒険者様は大抵、レリンダ王国の中央都市ラーダムを目指すと聞いておりますが?」

「そうなんですか、僕はここにきてまだ日が浅いので、あまりよく知らなくて…」

「まあ そうなんですか…でも私達と同行していただければブリュッカス王国の王都ハイロンで転移クリスタルを利用できます、そこからなら大きな都市への移動は簡単になりますわ」

「そうですか、なるほど」


どうやら大きな町には転移クリスタルが有って大都市間の移動が楽になっている様子。

と言う事は小さい町や村へは始まりの村のような指定転移魔法を覚える事が出来なければ、簡単に移動できないようになっているらしい。


「これから行くルートは、決まっているんですか?」

「先ほどの街道は近道でしたので、戻って迂回することになります」ロック隊長


真ん中の馬車は4名乗車可能、現在俺と隊長 そしてお嬢様とお付きの従者が1名乗っている。


「ノブユキ様は勇者志望ですか?」

「あ この服装で分かってしまいますか?」

「はい、勇者志望の方はほぼ同じ服装です、それにその御召し物はLVが上がると変化しますのですぐわかるのですよ」

「へ~」

「ヤッパリ面白い方、普通勇者志望の方は全部勉強していらっしゃるのに、ノブユキ様はまるで今日初めて聞かされたみたいですのね」

「分かっちゃいますか?その通りなんです」

「ウフッ 久しぶりですわ自分の知識を自慢できるのは、今までは私より知識がある方ばかりでしたので、お話も沢山してしまいそうです」

「そうなんですね…」


NPCが全部解説してくれるなんて他のゲームでは中々難しいはずだが、どうやら対面で話すNPCには集中してAI頭脳を選択する設定なのかもしれない。

簡単な受け答えならば一度に数人が言葉を発するが、こういう専門的な話をするときはNPC一人に受け答えを任せるようになっているらしい。


「ところでこのキャラバンはお仕事がメインでしょうか?」

「ハイ 私の家は商業を専門に行っております、若干特産品もございますが、殆どスチャロンダーグ伯爵家を仲介して他国へと運ぶようになっております」

「そうしないと危険が多いからという分けですね」

「はい、護衛を雇うお金もバカになりませんし爵位を持つ者は危険がある場所へ率先して出向くのが王国の規範ですので、ですからノブユキ様のような冒険者様を見つけたらいち早く仲間になっていただくようにするのも、必然ですのよ!」バチコン!


確かに強く賢い冒険者を見つけて仲間に引き入れることができれば、その分安全性は高くなり雇用は安定し、商売もうまく行くわけだが。

いきなりウインクされてしまったのはどういう事か、このご令嬢そういう気でいるのか?確かにこのヘブンスバースではHも可能とは言っていたが。

まだ17歳と言う御年でそういうみだらな事をして良いものだろうか。


「大丈夫ですわ、何も取って食べたりはいたしません、ちなみに伯爵家の令嬢と言う立場だとしても勇者様との婚姻は他の爵位持ちとほぼ変わらないぐらい推奨されていますのよ」

「は?」

「だって、ノブユキ様はこれからどんどん活躍するのでしょう?」


確かにそうしないと生きて現世へと戻れないのだが、NPCはそれさえも予測して俺達を引き込む設定なのか。

もしかしてこの世界に流れ込んだ者は全てダイヤの原石と言う設定で扱われるのか、但し鎮魂者としてこの世界に送られた場合のみだろう、初めから勇者セットを手に入れる事が条件のような気がするから。

それに会話スキルと幸運スキルの取得もこういう部分で働いているのかもしれない。


「ヒヒヒーン」

【クエスト発生】

【山賊を退治せよ:LV8成功条件こちらの死亡者2名未満、クエスト失敗・令嬢の死亡もしくは攫われる】

(かー 少し油断していたよ)


ご令嬢の向かいに座りまったりと話をしていたので、少し忘れかけていた。

こういうときに邪魔者のごとくクエストを振りかけて来る世界だと言う事を。

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