第29話 消えた女子大生
消えた女子大生
日付は2週間前に逆戻る、その日 日頃からむかついていた同級生をギャフンと言わせるために5人の女子はしょうもない計画を思いついた。
高校の時から目の上のたんこぶの様で、いちいち突っかかって来る山口花梨を呼び出し。
ゲームと称して泣きわめく様を見学しようと、足りない頭を絞った元同級生ら。
空手2段の花梨を止めるにはどう考えても自分達だけでは心もとない。
だから自分の彼氏を巻き込んで、合コンの体を装う事にした。
計画は簡単だ、花梨と親しいクラスメイトの女子を呼び出して遊ぶ事を花梨に告げる。
そうすれば花梨の事だ、自分が代わると言い出すだろう、そうして呼び出して後は彼氏とその他数人の男に襲わせて、泣きわめく様を想像していたのだが…
そんな計画うまく行くはずがないと言うか、カラオケボックスでそれをやったとして。
常に巡回している従業員に知られたら、それこそ自分達がまずいことをしているのがばれるだろうと思うが。
若いうちって言うのは何らかの形で裁かれるまではどんどんエスカレートしていくものだったりする。
だが今回はタイミングが悪かった、いつもは一人を呼び出し楽しくいじめていた5人の女子、ノブユキと言うジョーカーをいつの間にか巻き込んでいたことを後になって後悔することになる。
写メを撮った後、5人の女子は急な尿意に襲われトイレへ、どうやらアプリで撮られた写メが原因の様だが、そんなことが分るはずもなく5人全員がもれなくトイレへ。
「あいつらあたしらにも薬、盛ったんじゃない?」
「それは無いっしょ」
「あんたの彼氏、やる気満々だったジャン」
「えっ キモ!」
「ギャハハ、あいつら2人はまだ童貞だって言ってたよ!」
「今度相手してやんなよ~」
「え~勘弁~」
「顔だけは行けてんじゃね」
「顔だけはね」
「ところで花梨の奴、うちらいなくなれば逃げちゃうんじゃね?」
「まあいいよ、又次があるし~」
「今回はカラオケ行きたかったし、折角だから戻って歌う?」
「そうしよ」
だがトイレから出ようとしたところで一人ずつ力なく崩れ落ちる。
「バン!」
「ドタッ!」
「裕子!」
「ちーちゃん」
「皆!」
「パッ!」
5人の女子は、次々に気を失いそしてその場から荷物ごと消えて行った、もちろんそれはあのアプリの仕業。
5人中3人はかなり悪行が先行している。
一人ぐらい仕方なくずるずる付き合っているやつが居そうなものだが、度合いこそ若干の違いはあれ、5人中3人は根っからのいじめっ子だった。
「う う~ん」
「ピチョン ピチョン」
目をさまし、周りを見渡すがそこには何も見えない、そしていきなりスマホから着信音が。
「ピリピリピリオン♪」
「な なに?ここどこよ」
「お目覚めになられましたか?」
「目覚めたって言うより暗いんだけど…」
「ここはヘブンスバースと申します、私 三途の川へと橋渡し役を仰せつかりました解説者です、これからこの世界のご説明をいたします」
「は~?今すぐ戻せよ」
「あなたは流魂者として選ばれました、この世界に入ると死ぬか?クエストを100こなさないと戻ることはできません」
「それってジョークか?うけるんだけど、マジうぜー」
「やはり善行のほとんどない方は頭も悪そうですね」
「あんだと コラ」
「死にたいですか?」
「うっせーよ、早くもどせ!」
「ですから、この世界で死ぬかもしくはクエスト100回こなさないと出らんねーよ」
「急に言葉使い変わってるし…」
「クソガキ相手じゃ面倒だから、よく聞けよ!お前らは全員地獄送りになったんだよ!」
「は~ あ~し地獄に行くような事してねーし」
「自覚ねえのかよ!あほ女」
「なんだとコラ」
「あ~スマホたたきつけても無駄だから、死にたくねーならちっとは話聞けよ!」
「で ここ何処よ」
「そこからかよ、まあいいよく聞けよ、ここはヘブンスバースAIアプリで写メ撮ったダロ?」
「いつ?」
「おまえらが2名の善良な市民を誘い込んでいじめようとした時だよ」
「そういえば菅ちゃんがスマホで…」
このバカ女の名は斎藤久留実(サイトウクルミ)20歳、そして23歳の彼氏の名は菅田聖弥(スガダセイヤ)
女王様歴7年、いつも自分が一番上でなければ気が済まない。
常に子分を2人以上連れ立っているが、実はそれほど強くはないし結構ビビリだったりするが。
それでもこんなやつにいじめられた女子は10人以上いる、勿論男子も数人。
「思い出しましたか?」
「ああ~なんか、そういえばそうかも…」
「この世界にはな、AIアプリで写メを撮られることで参加すると言う形になんだよ分かったか?」
「フーンそれで?」
「この世界から脱出するには2つしか方法がない、拒んでも逃げても死ぬかクエストこなすか2つに一つ」
「これってもしかしてアプリゲーム?」
「ピンポン!」
「そうなんだ、へーそれでなんで真っ暗なんだ」
「そのうち目が慣れて来ると思うけど、そんなことはどうでもいいから先に進めんぞ~」
「答えてくんねーのかよ、ケチッ」
「この世界でクエストをこなし生き抜くには善行を重ねる、それだけだ」
「善行?」
「良き行い、まあ人助けみたいなもんだな」
「良き行い?」
「クエストをこなすことで善行を貯める事が出きるっつー分けだ」
「ふーん」
「おめーはよ、悪行の方が現在優ってんだよ、善行集めに頑張る他に生き延びる方法はございませーん」
「あんだよ!そんじゃムリゲーじゃん」
「まあ今のまんまじゃ無理ッポ、今後の努力次第ッポ!」
「もしかして他の仲間も?」
「今頃あなたと同じようにどこかの暗闇でゲームの解説を受けているかも知んねーなー」
「これって途中で抜けらんねーの?」
「死ねばすぐだと思うぜ、その代わり現実世界でもあの世行き決ってーい」
「嘘だ~」
「マジでーす」
「もしかして3か月前の女子高生行方不明事件…」
「はーい、このアプリによって裁かれちゃいましたー」
「うちら犯罪者じゃねーし」
「それは法律で裁いていないと言うだけで~、あなた方は立派な犯罪者で~す、殴ったりお金を奪ったり、あんなことやそんな事、人が嫌がる事を嬉しそうに何度となく行ってきましたよね?」
「し…したかも」
「犯罪として裁かれなくても~証拠が有れば~あなた方は全員裁かれたはずで~す、違いますか~」
「証拠なんてね~し」
「スマホはなんでもお見通しですよ~、ちなみに~こんな映像や~あんな画像 全てこちらに有りま~す」
そう言いながら解説者は目の前の空間に彼らが行って来た悪行、スマホを使って録画して来たいじめの数々を映画のように映し出す。
「これあんときの…」
「3年前あなたはこの子に泥水掛けましたよね、その後仲間の男に襲わせた」
「それはあいつ(その時の男)が勝手にやった事だし」
「いいえあなたが最初面白い事をしようと言い出したの 覚えていますよね~」
「…」
「これらがお前の悪行なんだよ!」
いじめの映像や画像、彼女がいじめをエスカレートしてきたのは小学校6年の夏からだった。
女子は男子より体が早く成長する、小学校6年で身長165まで伸びていた久留実はモテモテだった。
だがある日好意を寄せていた男子が根暗な女子と嬉しそうに話しているのを見て逆上。
根暗な女子をいじめることにした、そしていじめはどんどんエスカレーとして行き、いじめられていた女子は小学校を転校する。
もう少しやっていたら、いじめられていた女子は自殺していたかもしれない。
その後も気に入らない事が有るとターゲットを決めていじめを行って来た、そうすることで自分の地位を猿山のボスのごとく上げることに成功した。
それからは何故か自分をボスに仕立て上げ慕ってくる子分までできたのだから、久留実はどんどん頭に乗ってしまった、それはグループいじめの典型的なパターン。
先生も積極的に介入するのはごくわずか、気の弱い先生などは見て見ぬふりをする、ましてや久留実は少し顔がきれいなものだから男の先生は差別もする。
確かに教師から見たらいじめの現場など面倒この上ない出来事、知らんフリしていた方が楽と言えよう、それに久留実の親は金持ちだったりするのだから始末が悪い。
まさか自分のかわいい子供がこんなことしているとは思わなかった、子供の素行を容認していただけ、それがこんなことに巻き込まれるとは思っていなかっただろう。
「さあそれではこの世界のルールをお教えしましょう」
それからはノブユキやカリンと同じようにどうやって生き抜いていくかをレクチャーされるのだが、彼女は悪行が善行より先行している為、善行LVはたったの2だった。
それでも特典が2つもらえる、彼女が選んだ特典の一つは魔法の弓LV1、もちろんFクラス。
彼女は戦士より癒術士を選択した、それがこの先どうなるのかはここでは分からない。
だがその選択はもしかしたら正しかったのかもしれないけどね。
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