第11話 アプリの世界

アプリの世界


ようやく少し現状が分かって来た、このAI変換アプリで写真を撮ると数日後この世界(ヘブンスバース)へと取り込まれる。

それはランダムであり、いつ引き込まれるかは分からない、もしかしたら写真に写っている割合なのかもしれない。

そしてこの世界に捕らわれた全員が善行を駆使して生き延びなければいけなくなると言う事だ。


「それで実際何をすればいいんだ?」

「この世界は一般のRPGゲームアプリと同じだと思ってください」

「要するにここが初めの初期設定画面?」

「その通り、まずは職業を決めて頂きます」


戦士(ソルジャー)

魔術士(マジシャン)

癒術士(ヒーラー)

召喚士(テイマー)

工作士(メカニック)


5つの基本職が有りその先に枝分かれしている2次職は10以上、スキルや魔法もかなりの数があるようだ。


「1次職はレベルを上げますと他の職業への転職も可能です」

「そこまで深く旅をする前に、現実に帰る事は出来ないの?」

「現実に帰る=死(0)、又は100クエストクリアです」


どう考えてもデスゲームに近い、100クエストと言うのがどのような物かどんな厳しさなのかはここでは示されなかったが。

どう考えても現実に戻るのが難しい事に間違いがなさそうだ、それはこの先の特典でやや楽に進めると思えそうだが。


「現在、信之様の善行は20LVと、最高値を示しております」

「それどういう計算で?」

「生まれてから今までの悪行と善行の積算で90%以上善行が勝っている場合善行LV20からのスタートとなります、LVによって各種の特典が得られます」

「特典?それってどういう特典が付くの?」

「まずはLV20に対応する武器やスキルの初期装備をプレゼントさせていただきます」


スマホからそう言われると目の前に画面が現れる。


「おう!なんだ、これ」

「初期設定画面とストレージ画面です、オープンと唱えることで表示可能です」


それはゲームの画面でよく見る個人の倉庫と身体能力などの画面、現在は洋服が数点表示されており、重量も示されている。

初期のストレージには10個しか入れられないようだ。


「善行LV20は20の特典が最初から与えられます、まずは20の特典を選択してください」


特典、それはかなりえぐかった。

それだけの物を最初から所持できたなら、RPGを楽にこなせると思ってしまうだろう。

最初から数十万円を課金したのと同じ事なのだから。


武器選択

・エクスカリバー

・ミョルニル

・天の杖

・天空の槍

・マスターハンマー

・ゴッドグローブ

等々…


「もしかして今まで死んじゃった子達って…」

「善行LV1~3の場合木剣や初心者の杖などです、特典はLVに連動しておりますので」

「それは大変だ…」


俺に示されたその後の特典も、最初からHP1万とか魔術LV10から始められるとか、まるでチートの嵐。

これだと善行持ちでアプリに入っていた場合は、ほぼ死なないで済む可能性がある。


「だからいじめっ子だけが死んだのか…」

「善行持ちでもこの世界で努力を怠れば死ぬ場合もございます」

「そうだけど…そう言えば生きて戻った人たちからの情報が現世で無いのは?」

「アプリは消え去り証拠が無くなります、それと生きて戻った場合、時差はゼロから数時間です」

「場所も?」

「いなくなった場所にそのまま戻れます」


これでは最初の職業で選択をミスすると後々面倒なことになる、戦うのが嫌だった場合 ヒーラーやメカニックを選ぶと今度は善行LVのアップやクエストをこなせにくい。

結果的に手っ取り早くクエストをこなし善行LVを上げるには戦士か魔術士しか選択肢は無くなってくる。


「これだと戦う職業以外選べないんじゃないか?」

「最初の能力が低い場合、時間をかけて善行を進める方もいます」

「そうか現実に戻った時の時間差は関係ないのか…そうなると初期能力が低い場合戦士よりも戦わないで済むメカニックやテイマーを選んだ方が良い場合もあるって事か、なるほど…」

「そういう事になります」

「まずは職業か…」


最初からチート能力がもらえるなら戦士かマジシャンの方が早くクエストをこなせるはずだ。

だがこの世界のクエストや敵になるはずの魔物の強さ、それが分からないと後で泣きを見ることになる。


「この世界の敵って?」

「アプリゲームに準拠しております、ほとんどの場合敵もLV制です、こちらがLV4なら相手はLV3以下の相手が妥当です」

「武器やアイテムによる底上げはLVに対してどのくらい強くなる?」

「HPやATの数値で測れます、LVの差は全てHP・AT・DFに表示されます」

「理不尽なレベル差は無い分けか…」


よくあるLV制の場合いくらアイテムで底あげしても勝てない場合がある、要するに超課金制のゲームだ。

そうしないとゲーム会社に金が沢山入らないからだが、いくら10年やっていても1年で毎月数万円課金している廃プレーヤーに勝てないのはそういう理由だ。

めちゃゲームに金賭けているのに強くなれないのじゃ誰も課金してくれなくなるからね。


「2次職又は転職の条件は?」

「クエストです」

「その場合の経験した数値は持ち越し?」

「そうなります」


要するに転職してもそのまま数値は引き継ぐので転職すればするほど強くなるという分けだ。


「LVが上がりやすい職業は戦士?」

「その通りです」


ならば戦士で始めない道理はなくなる、マジシャンでも構わないがマジシャンを選択した場合。

どのぐらい攻撃に効果があるのか、物理攻撃との差が分からない今は何とも言えない。

だが最初にHP・AT・DFの数値が上がるようなスキルか又は道具を特典でもらう事にすれば、その後すぐに死ぬような事にはならないだろう。


「分かった、最初は戦士で始めよう」

「かしこまりました、戦士を選択しました」


そう宣言すると目の前のビジョンにLV1の戦士能力が数値と一緒に表示される。


「HP10AT5DF5か…」


それ以外の能力は殆どが1か2、はてなマークはLVを上げると後で表示されるようだ、もしかしたらマジシャンになれば表示されたりするのかもしれない。


「次に特典を選んでください」


武器の選択や防具の選択、ずらっと並んだ項目は数百に及ぶ、それらを順次選び出し20点の特典を決めていく。


「まずは武器だがその前に戦士の武器ってLV開放制?」

「はい、LV開放制と申しますより重量や魔法力・DF(ディフェンス)AT(アタック)HP(ヒットポイント)などの数値で決まります」


いくらすごい攻撃力を持っている武器でも重過ぎたり、既存するパラメーターの数値が武器を扱える数値以上でなければ、使え無いばかりか持つことすら出来ないと言う事。


「インベントリの上限重量は?」

「インベントリ内での重量上限はございません、どんな大きさや重さの武器も、家のような巨大な物でもしまっておくことが可能です」

「そうなると最初のLV1でパラメーターを底上げできる魔法具が必要だな、というか家もしまえるのか…」

「はい、中には軍艦とか城とかも収納できます」


まあそういう物を手に入れられるのは終盤になってからになるのだろう。

それより今はどうやったら最初から身体能力の数値を上げられるのかだ。


「戦士の指輪各数値+10か、それに取得経験値倍加の腕輪か…」


まずはその2つを選択、さらにスキル選択でスキル習得MAXとオートリペアのスキルを手に入れる。

それでも後16個も特典を貰えるのだから。

とりあえず指輪と腕輪を身に着けるとHPが20になりATが15になった、これはLV3に相当するらしい。

さらに防具を選ぶことにする、竜騎士セット・重戦士セット・勇者セット。

防具はセットでもらえるらしいが、良さそうなものはビジュアルが少しダサかったりする。

中には忍者セットなんてものもある、それぞれに何らかの能力値に加点が付く。


「アイドルセット?」

「歌に踊りに加点が着く優れたセットです」

「いやこれはいらない」

「残念です」

「フリルがついてスパンコールが全面散りばめられているスーツとか恥ずかしいだろ」

「女性にもてますが」


確かに魅惑の魔法がパッシブで掛けられていると説明文が、だがそうするとモテはするが善行には足枷になる可能性がある。


「却下」


そうなると無難に勇者セットを選択しておいた方が良さそうだ。

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