第4話



 そろそろね、自分勝手に語るのはよそうか。

話を現実世界に持っていこうと思う。


 私が、とある施設で働いていることは既に書いた。

雇ってもらうのは簡単だった。

何せ、年から年中人手不足の業界だ。

普通にしていれば誰だって雇ってもらえるさ。


 だから、この業界にはいろんな奴がやってくる。

人のために力を使いたいと思っている奴。

大した者じゃないか!

働くのに行き先のない奴。

これじゃ何処にも働ける場所なんてある訳がない。

本当にそういう奴もいるのさ。


 老若男女、いろいろさ。

年寄りがそれ以上の年寄りを見ているなんて、ざらにあることさ。


 仕事中は、誰とも口をきかない。

何処へ行っても、それが一番上手いやり方だ。

仕事上の会話は出来るだけ愛想よく、これも上手いやり方かな。


 だから仕事上でおつきあいさせていただいているだけで、それ以外では会いたくもない連中だね。

ただ施設を利用しているじーさんやばーさんの中にも優れ者は居る。

それは間違いないことさ。

とぼけた頭を持っている連中だけじゃないって言いたいのさ。

馬鹿にできないね。

全てのじーさん、ばーさんに言えることがあるのさ。

私は人を敬うなんて心はこれぽっちも持ち合わせてはいないんだが、あの老人達の一人一人にその人生が染み付いているんだ。

皆んなそうさ、たくさんの苦しみや悲しみ、時にはちっぽけな喜びを、そして最後に辿り着いたのが此処ってことなだけだ。


 ただ、私にとって気になるじーさんとばーさんが一人づつ居るんだ。

一人は、上品と言うよりも可愛いって言葉が似合うようなばーさんだよ。

慰めになるよ。

何だって? 放っといて欲しいもんだね。

憩いは大切なもんだ、葉巻や、ウイスキーと同じだからね。


 そしてもう一人、このじーさんが可笑しいったらありゃしない。

全くもって笑わせてくれるぜ。

未来の話をしてくれるんだ。

そりゃもう数十年後か何百年後か私には分からないがね、その世界じゃ暴力が横行するとんでもない世界ってわけ。

開拓時代の西部劇そのままさ。

男も女も拳銃を携帯してるそうだぜ?

違うところは拳銃の性能と言ったところかな。


 それじゃ手始めに、このじーさんの話をするとしよう。

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