第19話 ロウジーさん後編
─ドサッ
ロ:(そこだ!!)
ブワァァアア―――ー!!
地面に落ち,右わき腹の痛みに顔を歪めながら仰向けに倒れているメリー.そんな彼女に向かって,ここぞとばかりに右手の先端を尖らせ,メリーに向かい発射してくる.
メ:「ぐ・・・.」
メ:(まずい.まずいまずい!寒気だっ!攻撃してきてる!攻撃が当たる!早く避けないと!)
ドン!
目で見るより先に肌で攻撃を感じ取ったメリー.とっさに土壁を左わき腹に向かって発動,身体を右斜め上に飛ばして何とか避ける.しかし─
ヒュー
メ:「ぐっ!?」
メ:(まずい!トゲの方に・・・!)
歯を食いしばりながら焼かれるバームクーヘンのように空中で回転中のメリー.先ほど風弾を使って避けたトゲの近くへ自分が飛んで行っていることに気が付き,追撃に備え神経を尖らせる.
ザッザァア―――
メ:「はぁ・・・はぁ・・・」
そのままメリーは,両足をついて右に小さくジャンプし,膝を曲げてバランスを取りながらなんとか地面へと着地するのだった.
地面から顔を出している周囲のトゲたちは,メリーを貫く絶好のチャンスであるにも関わらず,皆一様に引っ込んでいっている.
メ:(あれ,追撃がこない.今ので限界まで身体の体積を使っていたってこと?・・・それにしても,なんでこの地面に引っ込んでいってるトゲたちからは,出てくる直前まで寒気を感じなかったんだろう?出てきたときや,引っ込んでる今は感じるのに.いったい彼は何を・・・.いや,待て,落ち着くのよメリー.ロウジーさんがトゲを引っ込ませている今は最大の攻撃チャンス.今は一旦分析は後回しにして,攻撃に集中しないと!)
メ:「まずは・・・
頭を切り替えたメリー.無数の火弾を展開し,トゲをひっこめている最中のロウジーに向かって攻撃する.
ボボボボボボッ!!
しかし──
ボワボワボワッ
ロ:「そんな距離からの攻撃.当たるわけないだろう.」
案の定,アメーバのように身体を変形させて全弾かわされてしまう.
メ:(くっ,当たらない.やっぱり,さっきみたいに不意打ちでもしないとこの距離からじゃ当てられないんだ.この距離から当てるなら,もっと広範囲に当たる攻撃を仕掛けないと.それなら・・・)
メリーは自らの頭上に魔力を集中させ,巨大な火の球を作ろうとする.
メ:「中級魔法・・・」
ロ:「ちなみに─
ロ:─こんな場所で大規模な攻撃をすれば町の奴らに気づかれるぞ?」
メ:「!!」
シュンッ・・・.
その瞬間,メリーは魔力の集中を解いた.
メ:(・・・ブラフかもしれない.ここは町の中だけど,ロウジーさんはさっきから,周りを気にせず地面のレンガを割って攻撃してきてるわけだし.・・・でも,言い切られると迷ってしまう.そうかもしれないと思ってしまう.こんな迷いのある状態で中級魔法は使えない.使えば,確実に隙ができる.初級魔法で攻撃するしかないんだ.でも,初級魔法を当てるには近づくしかない.どこから攻撃が来るか分からない今の状況でそれをするのは危険だ.クソッ,どうすれば・・・.)
ロ:「さて・・・.そろそろ次の攻撃の準備が整った.」
メ:「!!」
ロ:「次で仕留める.」
ロウジーはゆったりと,先端の尖った左腕をメリーに向ける.
メ:(くるっ!!)
ロ:「くらえっ!!」
ブワッ!!
そうして,ロウジーの
─────────
ブワァアアアアアア・・・!!!
ロウジーの左腕がメリーに向かい,ものすごい勢いでグングンと迫ってきている.
メ:(くそっ,攻撃が来た.また躱さなきゃいけない.こっちは攻撃を当てる算段も付いてないのに!これじゃあ防戦一方になる!どうすれば・・・,どうすれば敵の攻撃を避けつつ,相手に攻撃を・・・.いや,待てよ?)
猛スピードで迫ってくるトゲを見て何かを閃いたメリー.突如,自身の傍らに火の塊を形成する.そして─
メ:(ロウジーさんは身体をトゲのように変形させて攻撃してきてる.それはつまり,トゲも身体の一部ってこと.それなら─)
メ:「火弾!!」
ボウッ!!
─ロウジーのトゲの側面に向かい,火弾を放った.
バジュアアアアアー!!
ロ:「なっ!?」
火弾が側面に直撃したトゲの先端は,案の定,激しい音を立てながら飛び散っていく.
その様子にメリーは心の中で思いっきりガッツポーズ.
メ:(よし!やっぱりだ.火弾でトゲを攻撃すれば,避けずとも,敵の攻撃をかわせる.攻撃もできる!勝機が見えてきた.このまま,火弾で押し切る!)
ボワボワ・・・
メ:「
乗りに乗ったメリー.二つの火弾を瞬時に形成し,ロウジーの姿,先端のなくなったトゲの位置をしっかり見据える.そして─
メ:「
トゲへと火弾を放とうとした瞬間,メリーはそれをぐっとこらえた.
なぜ,メリーは攻撃を止めたのか.それは,メリーの目に映ったロウジーがまったく取り乱していなかったからだ.動揺していないわけではない.火弾で伸ばした左腕の先端がなくなったことに少なからず驚いていたし,イラついている様子もある.ただむきになっている様子はない.冷汗をかいている様子もない.余裕があるのだ.この状況で,相手にとって予想外なことが起きているであろうこの状況で,まだ心に余裕があるのだ.十分対応できる,問題ないと思っているのだ.それはつまり─
メ:(何かを仕掛けてる?)
バガッ!
メ:(!?寒気っ!)
そのとき,メリーは後方から寒気を感じ,とっさに振り返る.見ると,右後方と左後方から,真っすぐとメリーに向かってトゲが伸びて来ていた.
メ:(そうだ!ロウジーさんは攻撃の直前まで寒気を抑えた攻撃もできるんだった!)
メ:「火弾!」
メリーは即座に,形成していた火弾を後方の二つのトゲへ放った.と,そのとき,
ブワァアア!!
メ:「!?」
前方から再び寒気を感じ取り,すぐに視線を前に戻すメリー.
なんと,先ほど火弾で先端を吹っ飛ばしたはずのトゲの切り口から,泡のようにブクブクと新たな先端がこちらに伸びながら形成されていっていたのだ.
メ:(なっ!?)
バジュアアアア――!!
後方からトゲが火弾によって爆散する音.しかし,前方のトゲは既にメリーに当たる寸前と所まで来ている.
とてもじゃないが,火弾を形成して攻撃する余裕はない.
メ:(くっ.土壁!!)
メリーはとっさに足元に土壁を形成.空中へまっすぐ飛んで身体に当たるすれすれのところで回避する.
その瞬間,ロウジーは自身の勝ちを確信した.
バガガガガッ!!
トゲが,またもやメリーを中心として三角形を描くように,左前,右前と後方の地面から姿を現し,メリーに向かい一直線に伸びてくる.
空中にいるメリーに向かってだ.
メ:「くっ.」
ロ:(俺は気づいている.・・・お前がとっさに魔法を放つとき,二つしか魔法を発動していないことを.そして,もう一つ気づいている.お前は風の魔法で無理やり攻撃を躱すとき,必ず躱した後で隙ができることを.・・・つまり,空中で同時に三方向からの攻撃を許してしまった時点で─)
ブワアァアアアアア!!
ロ:(─お前の負けは決定している!)
三つのトゲが既にそこまで来ている.今すぐ対処しないとくし刺しにされてしまう.しかし,火弾では全ての攻撃に対処できない.風弾でよけても,避けた先での攻撃には対処できないだろう.前回,直前まで変な気配を感じないトゲの攻撃は全部で9回以上あった.現状で合計5本.おそらく,まだその攻撃は続く.
一発でも食らって隙が出来れば,今度こそやられてしまう.
そんな絶体絶命な状況の中で,メリーの出した最適解.それは・・・
メ:「火弾・・・」
トゲがメリーに直撃するまでの刹那の間,二発の火弾を形成.そして,
ロ:「!?」
ロウジーに向かって解き放った.
───────────────
トゲがメリーをくし刺しにするまでの刹那の間,二発の火弾をロウジーに向かって解き放つ.・・・いや,正確にはロウジーではない.ロウジーの足元を狙ってである.
このとき,メリーの脳裏にはある光景がよぎっていた.
それは,激昂したロウジーが,自らの左腕を地面に潜り込ませ,地面から三つのとげを出現させたときの光景だった.
メ:(トゲはロウジーさんの身体から伸びているはず.複数のトゲはあっても,もともとは一本のトゲでそれが枝分かれしているだけのはずなんだ.ロウジーさんを見るに,トゲを地面まで伸ばしている個所はない.とすると,考えられるのは,足の裏から根をはるように地面に直接トゲを伸ばしているということ.さっきから一歩も動いていないし,イチかバチかで勝負を掛ける価値はある!)
二発の火弾が,直列に,ロウジーの足元へ向かって真っすぐと進んでいく.
メ:(いっけぇえええええーーーー!!)
バジュアアア!
ロ:「ぐっ!?」
一発目の火弾がロウジーの伸びている左腕に直撃し,爆散.真っ二つにちぎれる.
ブワァア!!
三本のトゲはもうメリーにあたるすれすれのところまで来ている.
メ:(間に合え!!)
二発目の火弾は,ちぎれた左腕の切り目すれすれを通り,そのままロウジーの足元に・・・
フッ
着弾する直前で,ロウジーはそれをジャンプして躱した.
メ:「えっ?」
ロウジーの足元に穴自体は開いている.しかし,
メ:(つながって・・・な─)
─ザクザクザクッ
メリーの胴体に三本のトゲが突き刺さった.
────────────
─「・・・絶対帰ってくるから,生きて帰ってくるから・・・.だから,心配しないで待っててほしい.私のこと信じてほしい.」
「ぅっ,・・・わかった.信じるよメリー.わたし,わたし・・・待ってるから」─
三本のシアン色のトゲが,メリーの浴衣を突き破り,肉と内臓を突き破り,胴体を貫いている.
メ:「・・・がふッ」
苦しみとともに,喉の奥からこみ上げてきた生暖かいモノを吐き出したメリー.ゆっくりと視線を下に,自らの腹部の方へと移す.
メ:(・・・血?)
そうしてようやく,メリーは,自らの服部にトゲが刺さっていること.刺さっていつトゲの周りから,じわじわと赤黒い色が桜色の浴衣に染み込んでいっていることに気が付いた.
・・・下半身の感覚がない.身体から力が抜けていく.呼吸が変なリズムになっていく.
メ:(・・・そっか,わたし─)
メ:(約束,守れないんだ.)
・・・メリーの目が潤み始めた.
タッ・・・タッ・・・
ロ:「ほう.まだ意識があるのか.驚いたなぁ.」
トゲの三点脚に支えられ,宙で八つ裂きにされたまま地面に落ちることもできないメリー.
そんな彼女の下に,右腕を元に戻したロウジーがゆっくりと歩いてくる.
─ポニョポニョッ
トゲによって地面にぼっかりとできた無数の穴.その穴の中から,大福のような水色の塊がはい出てくる.全部で8つほどのそれらは,歩いているロウジーの足元へとポニョポニョと移動すると,そのまま足にくっつき,ロウジーの身体に溶け込んでいく.
なるほど.どうやらロウジーは自身の身体の一部を分裂させて操っていたらしい.だから離れているメリーに向かってあれほどの手数の攻撃が出来たのだろう.
メリーの潤み歪んだ視界にもそんな驚くべき事実が映っている.それなのに,そのはずなのに,メリーには取り乱す素振りも驚く様子も一切ない.
メリーにそんなことを意識する余裕がないからだ.
メリーの心が,罪悪感と無力感,楽になりたいという気持ちであふれていたからだ.
ロ:「・・・ん?なんだ?泣いているのか?・・・クハハハッ!泣いているじゃないかっ!これは面白い!・・・どうして泣いているんだ?痛くて苦しいのか?それとも死ぬのが怖いか?まだ,子供だもんなぁ.そりゃあ泣くに決まってるわ.クククッ,いい気味だなぁ.魔女の泣き顔とは・・・.」
メ:「・・・.」
・・・否定する気力もわかない.意識が朦朧としてきている.何も考えられなくなってきている.ああ,まずい.視界がかすんできた.自分が呼吸しているのかどうかも分からなくなってきた.
ロ:「おっ,なんだ?目がうつろになってきているな?もう死ぬのか?残念だなぁ.まだ見ていたかったんだが・・・」
ロウジーの言葉しか,聞こえなくなってきた.おそらく,もう間もなく,その言葉も聞こえなくなるだろう.
─ごめんなさい,みんな─
その一言を胸に,メリーの意識は,そのままゆっくりと,闇の中へといざなわれ・・・
ロ:「まっ,魔女にはふさわしい末路だなぁ.これもひとえに─」
ロ:「─自業自得ってやつだ.」
─めらっ
ロ:「・・・さて,それじゃあそろそろ俺の身体に収納するか.
メ:「─何がなの?」
そのとき突然,メリーが口を開いた.
ロ:「・・・ん?おまえ,まだしゃべれたのか?」
メ:「何が・・・ゲホッ,ゴホッ,自業自得なの?」
メリーは血を吐きながらも,力を振り絞り質問を繰り返す.
ロ:「・・・なんだ?怒っているのか?自業自得と言われて.・・・クハハハハ,傑作だなぁ.まったく・・・何様のつもりなんだ!!?疫病を蔓延させ,何十万人もの罪なき人々を殺してきている貴様らがっ!何十万人もの人々を苦しませてきた貴様らがッ!怒れる立場だと思っているのか!立場をわきまえろ!身の程を知れッ!!この何の価値もないムダ毛どもがっ!」
ロウジーの激昂が,路地裏に響き渡る.しかし,メリーはうろたえない.
メ:「・・・わたしのお母さんも.」
ロ:「あっ?」
メ:「おばさんも,村のみんなも.・・・みんな優しいの.困っていたら助けてくれるし,間違ったことをしたらちゃんと叱ってくれるし.絶対に仲間を見捨てたりもしない.」
ロ:「・・・.」
メ:「魔女にだけじゃない.・・・人に対しても優しいの.山の中で遭難してた人を助けたり,病気の人のために薬を売ったりもしてた.」
細々としていた声がだんだんと大きくなっていく.
メ:「・・・魔女ってばれて罵詈雑言を浴びせられた時も,石を投げつけられたときも,弓矢で射られた時も・・・.一緒に怒ったり,一緒に泣いたり,一緒に励まし合ったりはしても,人を攻撃しようとはしなかった.やりかえそうとはしなかった.誰一人として!人を傷つけようとはしなかった!!」
ぽとっ
そのときふいに,浴衣の帯の隙間から長方形の何かが地面に落ちた.
ロ:(・・・おまもり?)
そう,それは護符.母のアリシアに渡された黒色の下地に白い幾何学模様の書かれたお守りだ.
その模様が何やらぼんやりと白く光っている.
フワァ・・・
ロ:「!?」
そのとき,ロウジーは頭上からより強い光を感じ,再びメリーへと視線を戻す.メリーの身体は,淡く,そして濃い緑の光を纏っていた.
ロ:(なんだ?緑色に光って・・・)
─
傷口から流れる血が止まり、トゲが突き刺さっている部分以外の傷口が、まるでその部分に今まで傷が出来たことなどないかのように綺麗な状態でふさがっていく.
メ:「あなたが,過去どんな辛い思いをしたのか知らないし.どれだけの怒りを抱えているのか知らないけど─」
メ:「魔女ってだけで一括りにして,優しい人達まで悪者扱いするあなたのような人に,わたしは絶対に負けないっ!!」
メリーはロウジーを真っすぐ見据え,言い放つ.その気迫に,その気持ちに,勢いに,ロウジーは少し,少しだが,気圧された.不本意にも,気圧されてしまった.
ロ:「・・・魔女の分際で,大口をたたくんじゃないッ!」
憤慨したロウジー.トドメを刺さんとすかさず
メ:「
ロ:「!?」
バジュアアアッ!
と,そのとき,ロウジーの
その炎の壁はメリーを囲うようにして,地面から伸びている.いわば,炎の円柱の中にメリーの身体がすっぽりと隠れている状態だ.
ロ:「くっ!!」
ロ:(だが,所詮は炎.真正面からの攻撃は防げない!)
ロウジーはすかさず切り替え,流れるようなしぐさで左腕を前に向ける.
ロ:(この炎の壁で,三本のトゲもちぎれた.炎の音で着地の音は聞こえんし姿も見えんが,トゲの支えがなくなったメリーの身体は十中八九地面についているはず.つまり─)
ロ:「ここだぁ!!」
ロウジーは自身の胸と同じ高さで
─ブワッ
炎の壁を突き破り,その一撃は空を切った.
ロ:「なっ!?」
流石のロウジーもこれにはおどろく.そして,トゲの風圧によって炎の壁に開いた穴から見えた光景にまたもや度肝を抜かれた.
メリーは地面についていた.ロウジーの読み通り,地面にはついていた.しかし,立ってはいなかった.しゃがんでいたのだ.クラウチングスタート・・・いや,ジャンプをする直前の蛙のように足を折り畳み,重心を前にしてしゃがんでいたのだ.
ロ:(しまった.)
そのメリーの姿を見た瞬間,メリーが何をしようとしているのか悟ったロウジーの抱いた感想がそれだった.
メ:(・・・最初からこうすればよかった.)
メリーは火壁により,支えがなくなり,地面に落下したときから,次にやることを決めていた.
それは,リスキーな手だった.とてもリスキーな手段だった.だからこそ,メリーはその攻撃をしようとはしなかった.思いついても,やってみようとは思わなかった.
メリーは,人の為ならどんな危ないことでもやろうとするが,自分一人のためにはリスクを選べない.どこまでも安全志向の人間だ.だから,できるだけ安全で,確実で,無理のない手段を取る傾向が今まではあった.
だが,今のメリーは違う.メリーにはもう,相手の懐に潜り込む捨て身の覚悟が出来ている.
右手には十分魔力を込めた.相手はまだ動揺している.今がチャンスだ!
─土壁
ブワァ!
ロ:「ぐッ!」
土壁を踏み台にした高速移動.
一瞬にして,メリーの拳がロウジーの胴体との距離を詰める.
ロウジーに身体を変形させて攻撃をよける余裕はない.
ブワブワブワッ
そんな状況下で,ロウジーは反射的に両胸の辺りと腎臓の辺りから計4本のトゲを伸ばし,反撃の手にでた.
それが,ロウジーにとっての最善策.
今までのメリーなら,突然の攻撃に反射的に思考を割かざるをえなかっただろう.
しかし,今のメリーは怯まない.動じない.止まらない.一瞬たりとも,余計なことに思考を割かない.
その時,メリーにあったのは,「この一撃で決める」その一心だった.
グじィイイイ!!
4本のトゲがメリーの身体に突き刺さり,肉を抉っていく.尋常じゃないほどの激痛だ.それでも,メリーの覚悟は変わらない.意志の決まった瞳は真っすぐ前を向き続ける.
メ:「う゛ぉおおおおお・・・!!!」
─初級魔法
ロ:「ぐッ!」
バジュッ
バジャアアアアアアアア・・・・!!!!
灼熱を纏った拳が,ロウジーの身体を貫いた.
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