第82話  それぞれの後日譚

闇の国の王様っていうのは、黒髪の超イケメンなんだけど、

「あああ、面倒臭い・・本当に面倒臭い・・・」

と、言って嘆いている。


 残虐行為をしていた吸血鬼たちは、輸送のコストが高いとしても曲がったことが大嫌いの光の国送りにして、天日干しの刑(一番残虐な刑と言われている)にしようと思ったんだけど、光の国でクーデターが起こっちゃったんだよね。


 何でも光の国の王様が夜行の死霊(レムレス)に殺されることになっちゃって、エリヤス君のお兄さんが次の王様になった訳。しかもこのお兄さん、レベル上げを全くしていなかったから、レベルたったの8でしかない貧弱ぶり。レベルなんか関係ない光の国独自の技?何でも光の王家はそれがあるからこそ偉そうにしていたらしいんだけど、その特殊な技を引き継がずに王様になっちゃったんだよね。


 元々、他国がドン引きするほどの選民思想の持ち主である光の国の王家だけど、曲がったことが嫌いな割には、富が一極集中するようなやり方をしていたそうで、自分たちの気に入らない者はどんどん排除して、自分のお仲間だけが豊かになってウッハウッハしているような状況だったらしいんだ。


 光の国と言えば、国民一同総中流家庭という感じで豊かな国だったのに、国民一同、選民に搾取されて貧乏におっこちていたものだから、見えないところで国民の怒りが凄いことになっていたんだよね。


 で、クーデターが起こって、王家の中でも末端に位置する人が新たなる王様になっちゃったっていうんだよね。この世界、一番のエレメントの遣い手であり国政を行うだけの手腕を持つ者が王様に決定するんだけど、この王家の末端の人がどんな人なのか情報が全然入って来ていない為、周りは静観しているような状況なんだってさ。


 そんな訳で、政変で混乱中の光の国に吸血鬼(罪人)を送ることが出来なかった結果、マグマの上で吊るされるの刑が実施されることになったそうだ。


 ちなみに、吸血鬼全員が吊るされた訳じゃなくて、吸血鬼王(バンパイヤキング)の子供を人工的に作るためという残虐な研究に関わった人たちが刑の執行を受けるんだってさ。


 これは、今まで問題になっていた吸血鬼の残虐性に対して闇の国としてメスを入れましたよーというパフォーマンスの意味もあるんだけど、この研究機関、地下に潜り込む蟻の巣のような感じで広がっていた為、事実の解明にはまだまだ時間がかかりそうだから、闇の王様が面倒臭がって文句を言いまくっている状態らしい。


 吸血鬼たちの取りまとめ役だった吸血鬼卿の中で、闇の国に残っていた最後の一人、ヴァレリアンというお爺ちゃんなんだけど、ハサウェイさんがこのお爺ちゃんを拘束するために向かったところ、深血の間で干からびて死んでいたそうなんだ。


 おそらくこのお爺ちゃんも夜行の死霊(レムレス)と深い関わりがあったんじゃないかとか言われているんだけど、死んでいるので詳しいことはよくわからないまま。こうして、吸血鬼王の下で率先して動いていた極悪人は吊るされの刑、ちょい悪の奴らは闇の国で強制労働、全くの無関係だった奴らはハサウェイさんが取り仕切るという事で話がまとまり、新たなる吸血鬼の王は、隠居していた伝説の吸血鬼ハサウェィさんが就くことになるんだってさ。


 そういえば、光の国のクーデターによって、光の国に帰ることが出来なくなった三人組のイケメンなんだけど、水の国の王様の預かりとなって、しばらくの間はカーンで僕らと一緒に過ごすことになったんだ。


 聖女として降臨した吉岡先生に付き添っていた第二王子、宰相の息子、騎士団長の息子だけど、みんな年齢が十六歳と若いものだから吉岡先生の好みの範疇に入らない。聖女を巡って恋の鞘当てをするには、聖女がおばさん過ぎたんだよね。


 そんなイケメンの癖に色恋と無縁の三人組だけど、カーンに残ってプリンアラモードを食べていたアロイジウスさんに弟子入りすることになったんだ。


 レストラン三年二組でバイトを始めた三人組は、空いている時間にはリスカム山で修行を始めることになったわけ。時々バウさんも参加しているし、

「先生も一緒に行こうバウ!」

とか言われるんだけど、絶対に行かない。


 何せ僕には火の国の王子の子守りという大役があるからね、これは決して疎かには出来ない大役だというのは皆んなが知ってることだもんね。


 そう言えば悪魔の実を飲み込んで真っ黒になった『この人』さんだけど、腐の国の王様にエリクサーを飲ませてもらって、無事に回復したんだよね。腐の国は腐っているけどお金だけはあるから、高価なエリクサーだって結構な数確保しているんだってさ。


 この人さんも、時々、

「先生、ちょっと手伝って欲しいのネ〜」

 と言って来るんだけど、僕は絶対に行かない。


 何せ僕には火の国の王子の子守りという大役があるからね、これは決して疎かには出来ない大役だというのは皆んなが知ってることだもんね!


 腐の国といえば、破壊されたリヤドナの街だけど、ゾンビになった住民たちは僕が夜行の死霊を倒した時点で、すっかり元に戻ってしまったんだってさ。


 世界の破滅から守るような事態に陥った時に、稀に神様特典としてこういう奇跡が起きるらしい。僕の失われた左手が復活したのもこの奇跡の中に入るらしくって、

「そうそう失われたものが生えてくることは無いバウから気を付けるバウ」

と、熊に言われることになるのだった。


 壊れたリヤドナの街はそのままにして、すぐ隣に新しい街を作る予定で、壊れた街の方は『破滅の淵まで行った奇跡の街』として観光地にするんだってさ。腐の国の王様は、意外なほどに商魂たくましい人なんだよね。


 そうこうするうちに一ヶ月なんてあっという間に過ぎて行くから、わがまま令嬢乃木あやみ、死ぬ死ぬ詐欺の久我俊幸、海の男、槙と赤平も帰ってくることになり、二号店、三号店、四号店に散らばっていた生徒たちもカーンの街に戻ってくる。


 元の世界へ帰国するために、鉱山で強制労働をしていた生徒たちが帰って来た日の夜に、

「先生、お話があるんです」

と、ある生徒が声をかけてきたのだった。

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