第11話  生徒たちの班作り

 宿屋に帰ると、丁度生徒たちが到着した所だったので、食堂に移動してノートを回収する事にした。


 生徒達の適正に合わせて班を作ろうと思ったのだが、やはりというか、出来る事がほとんど無いような子供ばっかりだという事に気がついた。


 そりゃそうだよな、家電はほとんど全自動、掃除までスイッチ一つでやってくれるような世界で、親が何もかもやってくれるような中で甘やかされて育っている(まあ、それが普通なのだが)のだから、家事が出来るなんて子が極々一部となってしまうのは仕方がないことだ。



 僕はとりあえず積み上がったノートの内容を確認する事にしたんだけど、その中に目を引くようなページがあったので読み込む事にする。


 どうやらうちのクラスの委員長である中村は、今回のような異世界に行っちゃいました〜という内容の小説や漫画を山ほど読んでいるようで、今回の場合は、どういったやり方なら金を稼げるかという事について詳しくレポートをしていた。


 異世界で稼ぐには

① 化粧品の開発 (異世界では基礎化粧品が発達していないので、儲ける可能性大)


② 女性用下着の開発 (中世の〜という世界での下着はイマイチな場合が多いため、儲ける可能性大)


③ 子供用知育玩具の開発 (大概の場合、子供用の玩具の種類が少なく、貴族向けに売り出すと儲けるチャンスに繋がったりする可能性大)


④ 算盤の普及 (掛け算も出来ず、計算で四苦八苦するパターンが多い。ここで日本の算盤を普及すれば、官僚とか偉い人に喜ばれる可能性大)


⑤ 日本食またはお菓子の普及 (食の文化が多様すぎる日本の食事、お菓子を現地に取り入れる事で儲ける可能性大、レストランなどの経営で儲けるのもあり)


⑥ 冒険者グループを作る (クラスの中心人物たちは大概、イキって冒険者になりたがるし、秩序を乱す大元にもなるため、冒険者ギルドがあるのなら、そこに突っ込んでしまえば平和を維持できると考察する)


⑦ 男の方が何も出来ない場合が多いので、街の美化に取り組ませて近隣住民の好感度アップに努める。(日本人は外国のスタジアムに出向いて行ってまでゴミ拾いをするという大変珍しい美徳を持っている。清掃も含めて、忙しくなった部隊のフォローに当てて行く形にした方が良いと考察する)


中村の書いている通り、僕も、そういった系統の小説やら漫画は良く読んでいるから、傾向というものは良くわかる。


 中村の意見を取り入れた上で班を作り、各班長に班員の統括をまとめれば、僕はだいぶ楽が出来る事になるだろう。生徒が三十名、これを6人組5班に分けるのが良いだろう。


 今日、出会った白髭のおじいさんは、僕たちみたいな異世界から来た人間は、いずれは元の世界に帰れるだろうと言っていた。異世界から元の世界に帰るまでの間は、自分たちの力でお金を稼ぐ力をつけなければならない。


 冒険者登録をしてクエストを受ければお金が貰えるらしいし、薬草採取なんかは安全だという話をブランシェさんから聞いていたので、冒険班には薬草採取をしてお金を稼いでもらおう。


 元々、この宿舎は厨房も食堂も広くて立派な造りをしている。料理が得意な班員を揃えて、現地の人にも受け入れられるメニューを取り揃えたら、異世界レストランは開業する事が出来るだろう。


 子供の知育玩具なんかも売れるに違いない。小さな弟妹の面倒を見ている生徒がうちのクラスには多いから、子供班を作って、おもちゃを作ったり、有料で保育所をやるのも良いだろう。レストランに食べに来た母親が子供を預けられるようにしたら、後々、時間単位でお預かりみたいな事を希望するお母さんも出てくるに違いない。


 それと、中村が指摘する通り、計算の正確さと速さが売りになるかもしれないから、今日行った市役所の経理なんかにバイトに行くのもいいよな。


 残った奴らは清掃班にして、他班のサポートを任せる事にしよう。


「中村〜、ちょっと来てくれるか〜」


 クラス委員長の中村に、僕が作った班の編成を見せると、

「御崎と横山が算盤を習っていたんで、算盤班に入れて、槙と小芝を冒険班、大河と小峰は清掃班に移動でうまく回ると思いますよ」

と、中村は手を加えてくれたわけだ。


「お前だけには言っておくけどさ、どうやらこの異世界転移、一方通行だけでなく、希望者のみ元の世界に一年か二年後には帰れるっていうんだよ」


「そういう展開の奴ですか〜」

「魔法も使えるらしいよ?」

「・・・魔法ですか」


 そうだよねー、いきなり魔法って言われても困るよねー。


「とにもかくにもクラスの委員長として協力よろしくね!」

僕がニコッと笑うと、中村はメガネを人差し指で押し上げながら、

「それじゃあ、まずは算盤を現地のブツで作って、こっちの世界の人間の度肝を抜いてやりましょう!」

と、意気揚々と言い出したのだった。

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