第12話 効率を求める僕
親の策略にはまってというか、意図せぬうちにというか、流れに乗ってドンドンと話が進み、いつの間にか教師の道を歩んでしまった僕だけれど、何故、みんなが教師に向いているよ〜などと言い出したのかといえば、一応のところ、それなりの理由がある。
大学生が稼ぎたいと思ってまず考えるバイトって『水商売』・・ではなく『家庭教師』なんじゃないだろうか?
僕も最初は『家庭教師の○○イ』に所属して、派遣されたお宅に伺って生徒に勉強を教えていたんだけど、そのうちに口伝手で僕の情報が広まり、フリーで家庭教師を回せるようになったわけだ。
僕の場合はカリキュラムに沿ってやる勉強法が合わない生徒との相性が良かったみたいで、既存の勉強のやり方では全然成績が上がらないっていう子の救世主みたいな扱いを受けるようになったわけ。
勉強のやり方を生徒が合わせるという形が教育業界ではポピュラーだったりするんだけど、その形式が合わない子供が実は世の中には山のように居る。生徒によっては小学五年生の時の算数で引っかかっている事も多いため、そういう子は五年生の時の問題から引き返してやらないと、なかなか先に進めなかったりするわけだ。
教師歴八年の僕は、何故か三年生を持たされる事が多いんだけど、1学期から始まる進路相談では、積極的に時間をかけて生徒の話を聞くようにしている。
生徒個人の情報を多く持つ事により、生徒の個性、生徒の能力、生徒の希望などを把握し、効率よく、生徒を誘導していく事に僕は特化していたりするんだな。
異世界転移?(意味不明だが)を修学旅行の途中でしてしまったというのなら、生徒は嫌でも知らない世界で生きていかなければならない。
だから、彼らがまだ何も気が付いていない間に、進む方向を決めてしまおう。
そりゃ、絶対に文句も出るし、問題も出る事になるだろうが、とりあえずは、大半の奴らが問題なく過ごせればそれで良いのであって、少数については、後々対応をしていく事にしよう。
「それでは、冒険班、清掃班、厨房班、算盤班、子供班に分かれる事になったが、夜にはみんなで集まって受験勉強は続ける事になります」
「「「ええーーーーー!」」」
「みんなが不満に思うのは良く分かるが、いつ戻れるかも分からない状況で受験勉強を疎かにしたら、行きたい高校に行けなくなるかもしれないだろう?それに、そこで何もしていなかったという事になったら、先生が教育委員会に怒られる事になって可哀想な事になるだろう?」
受験というキーワードが、元の世界に戻れる希望にもつながる効果もあるみたいだな。
「別に全員が勉強に参加する必要もないが、生存確認の意味で、出席は強制的に行ってもらう。もしもサボりで顔を出さない奴がいたら班のペナルティーとして罰金刑を用意するから覚悟するように」
「えーーーー!」
「それと、みんなにはこれだけは理解しておいてもらいたい!私物は絶対に売らないように!異世界のものが欲しいという理由から誘拐、人身売買は普通に起こることです!警察機構もないこの世界で誘拐されたらもう助からないと思ってください。先生は絶対に助ける事など出来ません!だからこそ、この世界に慣れるまでは必ず単独で動かず、複数人もしくは班で行動するようにしましょう!」
なにしろ警察もないし大使館もないんだから、誘拐されても誰も助けてくれない。僕だって24時間監視している訳にはいかないんだしね。
「あと、これは保健体育のような内容になってしまうのですが、あえて最初に言っておきます。十四歳から十五歳ともなれば、簡単に妊娠する年齢だという事を理解してください。もしも旅の自由でとか刺激がとかアバンチュールとか、そんな理由で異性とそのような事となり、現地の人に病気をうつされたり、妊娠したとしても、先生は何も責任を取らない事をここに宣言します」
移動してきたばかりで、えっ?何の話をしているの?みたいな顔をしている子ばかりだけど、これもしっかりと釘を刺しておかなければなるまい。
「ざっと話を聞いてみたんですけど、この世界では病院で出産するというシステムなどないそうです。妊娠したら自宅に産婆さんが来て産む形となるので、衛生状態も問題あると思うし、万が一、出産中に出血とでもなったら助からない可能性は高いです。他にも異世界ゆえにどんな性病があるかもわかりません、先生は君たちのプライベートについて責任を持つ事が出来ないので、各自で自衛をお願いします」
異世界の美女とあれやこれや・・。
せっかく彼女と異世界転移したんだから、部屋も一緒にして、あれやこれやをしてみたいと考えていた男子たちから、騒めきが起こるのと同時に、女子の方でも一部のざわめきが止まらない。
「それと、今いるこの世界にいつまで居る事になるかわかりませんが、あんまり長く居るようになったらここでみんなは独り立ちをしなければなりません。スムーズに自立するためのサポートは行いますが、先生の保護は3月までと考えてください。先生だって人間なんです、いつまでも君たちの面倒なんて、みていられません」
「「「えーーーー!」」」
「「「嘘でしょーーーーーー!」」」
班作りをした時点で、ブランシェさんには、冒険班と清掃班が利用できるように、鉈を集めてもらうようにお願いしている。
生徒の生活費も僕なら、鉈のお金だって僕の持ち出しだよ?僕の負担を考えたら文句は言えないって思って欲しい。
それに彼らも今の状態で見捨てられたらたまったものじゃないだろう、とりあえずは全員が、僕の言う事を聞いてやろうと思うだろうさ。
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