第3話 どうやら異世界転移をしちまったのかも?
どうやら、草原に異世界転移?したのは二組と三組のバスの2台となるらしい。2台ともバスの運転手とバスガイドさんは不在、何処かに行ってしまったのか、跡形もなくいなくなっている。
三組の子たちも全員が気を失った状態となっていた中で、まず目を覚ましたのが土屋美波さん。その時にはバスガイドさんも運転手さんも、どちらも姿は見えず、バスのドアは開けたままの状態になっていたという。
二組のバスのドアも開けたままの状態となっていた為、恐る恐る近づいて行くと、同じバレーボール部の小芝充希がバスから降りてきたという。
二組のバスの運転手もバスガイドも不在、草原の中にポツンと出現した観光バス2台を外から眺めて、
「嘘!これって噂の異世界転移?」
と、驚きの声を上げたという。
そこで『異世界転移』の発想が出て来るのがすごいよ。
普通『テレビのドッキリかな?』じゃないの?
「いやいや、テレビクルーなんて何処にもいないじゃないですか?道もないのに2台のバスだけ草原に出現って、異世界転移以外にないですよ!」
「先生!よくある展開だったら!これから魔獣が出て来るんだって!」
「逃げ出さないと死ぬことになるよ!」
魔獣とか、いきなりそんな事言われたって本当に意味が分からないんだけど、まずはやる事やってから移動しないと、教育委員会に後から怒られるのは僕とか阪口先生になるって事、分かって言っているのかな?
「阪口先生、すぐに出発とか言い出しているという事は、三組の点呼はすでに終えているんですよね?」
僕の言葉に阪口先生は、男らしく形を整えた眉をハの字に開いた。
「普通、バスガイドや運転手が居ないとなったら、生徒も居なくなっている可能性を考えますよね?確認したんですか?」
「いや・・まだ、生徒が全員居るか確認していないけど、バスには全員乗っていたわけですし・・」
「それじゃあ、改めて点呼を取って確認してください。このような事態です、早急な状況判断をするためにも、行方不明者をこれ以上出さない為にも、確認が必要です」
「そんなこと・・今まで寝ていた西山先生に言われなくても・・」
「今すぐ点呼をしてください!」
すごすごと自分のバスの方へ戻っていく阪口先生とその取り巻きを見送ると、僕は一度バスに戻って生徒の名簿を手に取り、点呼をする為に生徒を呼び集める事にした。
遠くに行っていた生徒も戻って来た為、無事に点呼を済ませる事が出来た訳だけど、今のところ生徒は全員無事に揃っている。
思わず安堵のため息を吐き出すと、遠くまで行っていた三浦と大野が手を挙げて、
「先生、少し丘になった向こう側に羊飼いの人がいて、ここから東と西に一つずつ街があるって教えてくれたんだけど〜」
と、言い出した。
「ちょっと待て、そういう貴重な情報を何故最初に言わない?」
「だって、点呼取るって言うから」
「なあ!」
お前らにとっては、第一村人発見よりも、点呼の方が大事なのか。そうか、そういう事なのか。
「それで〜?羊飼いの人ってどんな感じの人だったの〜?」
乃木あやみが、キャイキャイ言いながら問いかけると、
「こう、西洋の洋画に出て来るような格好の・・・」
と、両手をモヤモヤと動かしながら三浦賢人が言い出した。
「羊とかも30頭くらいいて、茶色い鞭?よく分かんないけど、それで羊を集めて帰るところだったんだよね。それで無理やり引き留めて話を聞いたんだけど、西が冒険者とかも集まる大きな街で、火の山と言われるブレバン山脈の先にはアガデス砂漠っていうのが広がっていて、東の方はちょっと小さめの街で・・大野、お前、メモとってたよな?」
「俺はきちんと地図にして書いておいたぞ!」
大野が書いた地図を見たところ、それはそれは酷い地図だった。
メモ帳の中には正三角形を描くようにして、丸が描かれており、頂点の丸には『ここ』と書いており、左側の丸には『ルーベ』右側の丸には『カーン』とのみ書いてあった。
おいおいおいおい、僕は早速そのメモ帳を取り上げて、三浦の方を振り返る。
「東の方が大きな街で、火の山がなんだって?」
「ブレバン山脈って名前の山の向こうに砂漠が広がっていて・・名前が・・あが・・アガーン・・あれ?なんだっけ?」
よくわからん地方の名前を覚えるのってむずいよな、そのむずい名から何故、書き留めない?
「それで?西が火の山で東が小さめの街で、それでなんて説明してくれたんだ?」
「なんとかこぐんがあって、森が広がっているって言ってたけど・・おら・・おふ・・」
だから、なぜ小難しい地名から書き記さない?
「要するに、西にある大きな街が冒険者が集まるルーベっていう名前の街で、火山があって、砂漠があるっていうんだから、乾燥した土地って事になるんだろう」
わかる限りの情報を今は書いていくしかあるまい。
「それで?東の方の街カーンはルーベと比べると小さな街で、湖郡があって森林が広がるというから、緑豊かな土地なんだろうな」
今いる場所が、大きな石灰岩がやたらと転がるカルストの平原だとして、左が火の街、右が水の街といったところか。
「西山先生!点呼は取りました!生徒は全員揃っています!」
名簿を片手にこちらの方へと戻ってきた阪口先生の方を振り返り、うちの生徒たちが第一村人から得てきた情報を阪口先生に教えて上げたのだが・・・
「それじゃあ!僕らは西のルーベを目指さないとですよね!何せ冒険者が集まる街ですから、いろいろな情報が集まると思うんですよ!」
と、阪口先生は興奮気味に言い出したのだ。てめえはバカか、絶対にこいつとは相容れねえ。
だって、あえて火の街を選ぶって言うんだぞ?響きからして危ないじゃないか!
人間はなぁ、とりあえず水があれば七日間は生きていけるんだぞ!と言いたい。
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