第4話 話しかけてもいいのかな?②
ルヴナンは後ろのピヨを気にかけながら、草むらの中をころころと進んでいた。
ピヨに何か話しかけなければと思いながらも、アイディアが出ない。
それに、ルヴナンには自身に自信がなかった。
それには理由がある。
ルヴナンの名前は幽霊という意味だ
美しさとかけ離れたこの名前を、自身で付けたのは
ルヴナンが母から無視され続けたことからつけられた名前だ
母は生んだのが最後、温めることもせずに他のオスの鳥と遊んでばかりいた
何度か卵内から、ルヴナンは母に語り掛けてはみたものの
語りには応じず、ときどき卵に歌声を聞かせることだけだった
ルヴナンは怖くなった
このまま、母に見捨てられるのではないかと
母が僕を見捨てるのは、最初から自分が”美しくない”卵だからではないかと
そんなことを考えながら、卵の中で畏怖した夜
フクロウから美しくなれる泉の話を聞く
こっそりルヴナンは、突き動かされる不安から逃れるように
巣の中から抜け出して、美しくなる泉を目指すことにした
ピヨと会ったのは、それから少しした時である
ルヴナンはピヨに美しくなる泉を目指すことを告げたが
いまだに悩みの本髄について、ピヨに話せずにいた
ピヨも結局、母と同じように、ルヴナンの美しくない不安を知ったら
突き放されてしまうのではないかという恐怖を持ってしまったからだ
しかし、そんなことも知らずにピヨは後ろをついてくる
ルヴナンは少し焦りながら、共通で思えることを言葉にした
「殻の中は心地いいよね」
「うん、心地いいよね」
少しホッとする
こうやって本当の姿で互いに会えないことは、ルヴナンにとって救いだ
もし、生まれて体が見えていたら、一生どこかに隠れながら過ごさねばならないと思っていた
そうしたら、ルヴナンは一人になってしまうだろう……そう思うと、孤独感が増した
「無理に話さず、傍にいてくれればいいんだよ」
ルヴナンは縋るように、ピヨに語り掛ける
どこかに行ってほしくない、この小さな愛らしい存在に
返答はなかった。ただ、ピヨは今まで通り少し楽しそうに卵の殻を揺らしてついてきてくれる
ルヴナンは、せめて生まれる前までピヨが傍にいてくれたらと願わざるおえなかった
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