第2話 美しくなければ意味がない

泣きじゃくるピヨを目の前にして、ミステリアスな卵は困ってしまった

なにせ、こちらも卵、あちらも卵、何か方法はないかと手探り状態だ

ミステリアスな卵は、はっとして語りだす。それは、自身が聞かされた母の子守歌


よくお聞き 子供たちよ

私たちは美しい鳥として生まれてきた

お前も私に似ているから きっと美しいだろうね

もし美しくなかったら 私の子じゃない

私の子じゃないお前は巣に置いて行ってしまうよ

だから美しくお生まれ 美しく気高い

高貴な鳥として さあ おやすみわが子よ

私の美しい鳥 私の美しいわが子よ


末恐ろしい、深淵から響くような声に、ピヨはぶるぶると震えながらも聞いていた

しかし、その怖い子守歌は、どこか現実身があるようでピヨの興味をそそられた

怖いようで深いその歌に、泣くのもいつの間にかやめて聞きほれていた

何より、ミステリアスな卵の声がとても澄んで美しかったのもあった

歌が終わると、ピヨは卵を弾ませながらミステリアスな卵に聞いた


「それは君のお母さんの歌?」

「さてね」


ミステリアスな鳥ははぐらかすように言う

はっとなって、励ましてくれたことに気づくピヨ、お礼をぎくしゃくして言った


「あ、あ、ありがとう!」

「構わないさ」


どこか大人びた雰囲気のあるミステリアスな卵にピヨは尊敬の念を送るようになる

旅について行っていいか?と聞くと、ミステリアスな卵は頷いた

寂しさがなくなるという喜びのあまりに、ピヨは高く卵をはねさせて喜んだ


「ところで、どこを目指しているの?」

「美しい鳥になる泉をめざしているんだ。生まれる前に入りたい」

「どうして、美しくなりたいの?」

「美しくなければ生まれてくる意味なんてないんだよ」


その残酷でどこか切なくて美しい声による言葉に、悲しみを覚えるピヨ

ピヨは、彼のことをもっと知りたいと思った

彼と親しくなりたい、彼はどんな鳥なのだろう?彼はどんなものが好きなのだろう?

そう思って、ピヨは彼に名前を聞いた


「僕の名はルヴナン」


不可思議なその発音に、意味を聞くと”幽霊”であることを教えてくれた

ピヨはぶるっとまた殻を震えさせ、自分の自己紹介をした


「君の名前も不可思議な音だね?」


そう言い返されて、ピヨはそうかもと思った

彼は急いでいるのかピヨの前を転がりだした

ピヨもそれについて行くように転がる、二つの卵がころころと

兄を慕うようにピヨはルヴナンの後ろをついて行くのであった


「僕たちどっちみち放っておかれたら死ぬからね、気楽にいこう」

「そうだね!」


「「あはは」」


ころころと転がるなか、殻の中から鳥の笑い声が響いた

先は森の中、美しくなる泉を求めて二人は旅立ったのである

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