第26話 光の猛獣 その2

「クソ! ちょこまかと……」


 悔しい。またアベンジャーの攻撃を躱された。

 だけど、戦っているうちに、タイガー型ギアの戦い方が分かってきた。

 サーマルガンで攻撃する時は、立ち止まる必要があるらしい。

 

 問題はアベンジャーの性能だった。

 機関銃は速射性能などなく、撃つまでに最低10秒ほど時間が掛かる。

 敵の攻撃の後で反撃しようにも、こちらが撃つ前に敵の次弾準備が完了するため、攻撃を中止しなければいけなかった。

 ならばと、オート照準を待たずに撃てば、逃げだすから弾が当たらない。


 撃つ直前は、ナナが回避のためにスターダストの主導権を握るから、攻撃できない。

 一度だけ無理やり撃とうとしたら『今はやめて!』と叱られた。


『残り弾数50%を切ったわ』


 ナナの報告に顔をしかめて、どうするか考える。

 狙って撃とうにも先に撃たれる。闇雲に撃っても当たらない。

 ……そうか! どうせ当たらないなら当てなくていいや!

 元々敵の隙を作るために攻撃しているんだ。だったら、当てなくても隙を作れば良い。


 攻撃するのに足りなかったのは、私の覚悟だった!




 タイガー型ギアが足を止める。銃口が光ってサーマルガンを発射した。

 敵が足を止めた時点で、ナナは銃口の向きから弾道を計算済み。

 スターダストを右に急変更して光線を避けた。


「オーバーブースト点火!」

『え?』


 私の声にナナが驚くが、今は説明する暇はない。

 スターダストの背中のエンジン排気口が火を噴く。爆発的な出力を得たスターダストは、最高速で地面を滑走し始めた。


 急接近したスターダストから、タイガー型ギアが逃げようとする。

 アベンジャーのトリガーを引き、タイガー型ギアが逃げた方向へ威嚇射撃を放った。

 目の前を通り過た弾丸に、タイガー型ギアが足を止めた。

 こっちは既に弾丸を放ち、接近しているから命中度も上がっている。今なら確実に当てられる。

 足を止めたタイガー型ギアに、30x173mm劣化ウラン弾が次々と命中。左側面のサーマルガンの銃身を全て破壊した。




『オーバーブースト限界!』


 エンジンの出力が低下する。


「十分‼」


 接近戦の距離まで近づいた。

 アベンジャーを収納。ホバーリングしながら、スターダストの腰を低くする。


「勝負だーー‼」


 突進の勢いを載せて右の正拳突きを放つ。

 タイガー型ギアも左前足を振り上げて、巨大な猫パンチを放った。


 拳と拳が衝突して、激しい音と火花が散る!

 互角化と思いきや、走り込んだ分だけこちらに勢いがあった。

 スターダストの右腕は伸びたまま。逆にタイガー型ギアの左前足は弾き飛ばされた。

 怯んだところに、スターダストの足の向きを変えてホバーリングを噴射。横回転の重力が私を襲う。

 スターダストが高速で回転して、裏拳を相手の顔面に当てた。


 蹴りを放とうとしたところで、タイガー型ギアの反撃。

 口を大きく広げ、スターダストを頭から齧ってきた。

 バックステップで回避。スクリーンがタイガー型ギアの顔面で埋め尽くされた。


 敵が後ろに引いたところで、右腕を上に左腕を下にして足を踏み込んだ。


 天上天下無双の構え!


 スターダストが防御姿勢のまま前に出た。




 タイガー型ギアは攻撃が来ると構えていたが、防御姿勢のまま突進したスターダストに一瞬だけ戸惑う。

 だが、左側が開いてると見るや、右の猫パンチを放った。


「ハッ!」


 一瞬で左腕と右腕を上下に切り替え、タイガー型ギアの猫パンチを左腕で弾き返した。

 防がれた事にタイガー型ギアの動きが止まる。左側を大きく開けたのは私の誘いだ。


『エンジン点火‼』


 ナナのアシストで、スターダストのジェットエンジンとホバーリングが起動! 

 相手の懐に突進して、右拳に力を入れた。


「いっけぇぇぇぇぇ‼」


 右の中段突きが、タイガー型ギアの胴体を抉る。

 左肘から銃撃音がすると同時に、拳からパイルバンカーが放たれた‼

 パイルバンカーが胴体をぶち破り、タイガー型ギアのコアに突き刺さった。

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