第27話 私が背負うべき罪
『タイガー型ギア機能停止を確認。スカイブルーやったわね』
「…ハァハァ……うん」
深呼吸しながら、倒れたタイガー型ギアを見下ろす。
反撃に転じてから倒すまで緊張の連続だった。全身に汗を掻いて、頭がぼーっとする。
『だけどまだ終わりじゃないわ。目標の無人戦闘機の総合管理AIを破壊しないと、人類は滅亡よ』
「言われなくても分かってるよ」
空からだと、対空ミサイルがあるから危険だったな。
酸素が足りずにぼーっとした頭を、ヘルメットの上から叩いた。
「じゃあ、早く終わらそう」
せっかく現代に戻ったんだから、肉! 本物の肉が食べたい‼
スターダストを滑走させて移動していると、ナナが焦った様子で話しかけて来た。
『スカイブルーできるだけ急いで』
「またアサルトギアが現れたのか?」
疲れているし、アベンジャーの弾薬も半分ぐらい。これ以上の戦闘は正直言ってキツイ。
『違うわ。
「それってまさか!?」
『目標のAIが自我を持った可能性が高いわ』
「じゃあ失敗!?」
『それはまだ分からないわ。とにかく私たちの目標はAIの破壊よ。このことは後で考えましょう』
「……分かった」
ドローン戦闘機に邪魔されて破壊できなかったら、今までの努力が無駄になる。
私はスターダストの速度を上げると、急いで目的地へと向かった。
目標のAIの居る場所まで目前というところで、私はアサルトギアと戦うのとは違う恐怖に襲われていた。
AIを積んだ車の近くにはには、きっとロシミールの軍人が乗っている。
事情を話しても信用してくれないだろうし、敵の避難を待って破壊する暇もない。私が攻撃したら中の人間はきっと死ぬ。
人間なんて殺したくないよ。
だけど、人類を核から救うためには、殺さなきゃいけない。
……大きく息を吸って、心に沸いた恐怖と一緒に息を吐く。
気持ちを切り替えると同時に、私の目から感情が消えた。
『戦車の砲身が動いたわ。どうやらスターダストを敵だと判断したみたいね』
「了解」
ナナの報告に、やっぱりと思う。
今まで敵のアサルトギアは
そのアサルトギアを倒したスターダストは、
『私がやりましょうか?』
「……いや、自分で殺る」
私を心配したナナの提案を断る。
これは私が背負う宿命。ナナにやらせたとしても、頼んだ私も同罪。
ならば、罪を背負うのは、人間である私の役割だと思った。
アベンジャーを構えると、スターダストのオート照準が、ロシミールの戦車を標的にした。
心を空にしてトリガーを引く。
アベンジャーから放たれた弾丸が着弾して、戦車をハチの巣に変えた。
結果を見て胃が逆流する。
ヘルメットの中で吐いたらヤバイ! ゲロで窒息する‼
そんな死に方は、絶対に嫌だ‼
「ハァ…ハァ…ハァ……」
『言わんこっちゃないわね』
ナナはそう言いながらも、私が必死にゲロを堪えている間、スターダストの操縦を替わって砲弾を回避していた。
『やっぱり替わる?』
「……もう大丈夫。苦しいのは最初だけだと思う」
『そう? 後10分で最初の自爆ドローンが落ちて来るわ。急いでね』
「初っ端から自爆ドローン?」
『だって、ドローンにミサイルを積むのは人の手よ。今はAIが勝手に動かしているんだから何も積んでないわ。という事は、攻撃方法は自爆しかないじゃない』
「AIにコストなんて意味ないか。攻撃を続けるよ。限界になったら替わって」
『了解。頑張ってね』
替わってもらった操縦を受け取って、目の前の戦車を破壊する。
胃のムカつきはあるけど、最初ほどじゃなかった。
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