第25話 光の猛獣 その1
残り三機の雑魚を追い駆けて全て破壊。
後方の憂いを断ってタイガー型ギアへ向かおうとするが、敵の方が先に動いた。
『タイガー型ギア移動開始。こちらに向かって来たわ』
「守りを捨てた?」
レーダーで確認すると、敵を示す最後の赤いマークが、速い速度で近づいていた。
「だったら飛んで先にAIを破壊しよう」
『それは推奨しないわ』
「何でさ?」
『倒したアサルトギアから、タイガー型ギアにデータが送られた形跡があるの。相手はこちらが空を飛べるのを知って動いたという事は、きっと対空兵器を装備しているわ』
「屁理屈っぽいけど、可能性は捨て切れないか……」
今も敵は接近している、迷っている暇はない。
「分かった。地上戦で迎え撃つ。ナナは敵の分析に集中して」
『了解!』
スターダストを滑走させる。
暫くすると、レーダーがタイガー型ギアを捉えた。
相手の様子を伺おうとホバーリングを緩めた直後、ナナの悲鳴がコックピットに響いた。
『敵のギアから高熱反応‼ 強制退避‼』
ナナがジェットエンジンを噴射させて、スターダストが左へスライドする。
タイガー型ギアから光が見えたと思いきや、スターダストのすぐ横を二本の光線が通り過ぎた。
「今のは!?」
『サーマルガンよ! 一撃でも喰らったら、機体に穴が開くわ‼』
「ゲッ!」
サーマルガンの名前は聞き覚えがある。
二年前に私が襲われた時、スターダストが敵のアサルトギアの装甲を貫通させた武器だ。
『油断しないで! 高熱反応、また来るわよ‼』
ナナが光線の弾道を予測して回避する。
再びタイガー型ギアから光線が放たれて、スターダストの脇を通り過ぎる。
光線が背後のアサルトギアの残骸に命中。機体を貫通して大きな穴を開けた。
「アレって連射出来なかったんじゃないの!?」
『だから、銃口が八つもあるんでしょ! 順番に撃ってるの。体が大きいのも電力確保のためかしら? 空を飛ばなくて正解だったわね、空中だと方向転換ができないから撃たれていたわ』
ナナは説明しながらスターダストを滑走させて、タイガー型ギアから放たれる光線を回避した。
「状況は分かった。ナナはそのまま回避に集中。私は攻撃して隙を作る」
『その後は?』
「突っ込んで接近戦で勝負する!」
破壊力だけならアベンジャーだって負けない。だけど、発射速度と弾速が違い過ぎる。遠距離戦闘はあちらが上だ。
『本当に無茶苦茶ね。だけど、了解!』
ナナも遠距離戦は不利だと判断したらしい。
「行くぞ‼」
私は気合を入れると、オート照準を待たずにアベンジャーをぶっ放した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「カメラ! 早くアレを映せ‼」
アメリア合衆国の戦場レポーターの叫び声に、カメラマンが慌てて戦場で戦う二機の巨大兵器にカメラを向けた。
「スタジオ、映ってますか!?」
『はい、映ってます‼ あ、あれは何ですか⁉』
戦場レポーターのイヤホンに、女性ニュースキャスターの声が入った。
「今こちらが手にした情報だと、1時間ほど前、
『ロボットですか?』
「今見ているのはCGじゃありません、本物です‼ ロボットはアメリア軍を攻撃。かなりの被害がでた様子です。ところが、その後で海から青いロボットが現れて、
『ロボット同士で戦っているのですね!』
「はい‼ 青いロボットはたった一機で次々と
戦場レポーターが叫んでいる間もカメラは回り続け、青いロボットと獣型のロボットが激しく撃ち合う様子を映していた。
二機のロボットは
『ロボットの目的は何なんですか?』
「全く分かりません。ただ青いロボットは、まだ人間に対して攻撃していま……うわっ‼」
戦場レポーターが喋っている途中で、獣型が放った巨大な光線が、戦場レポーターの近くを通り過ぎる。
光線はそのまま民家を貫通して、彼方へと消えて行った。
『大丈夫ですか!?』
「な、なんとか……。どうやら、ロボットの攻撃は予想していたよりも射程が長いので、急いで避難します」
『はい、そうしてください‼』
「以上、ウクライアの戦場からでした‼」
この報道は直ぐに世界中に流れ、青いロボットはSNSのトレンド一位になった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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