第24話 初陣 その2

 飛行中。レーダーが二機の敵アサルトギアを表示した。


『正面に二機。地上に降りる?』

「このまま攻撃する!」

『了解』


 スターダストは戦闘機の状態でも戦闘可能だが、ミサイルを装填していないため、空中戦は苦手だった。かと言って爆撃機とも違う。

 では何が得意かというと、アベンジャーを積んでいたA-10と同じく、近接航空支援(CAS)専用機に近かった。


 スターダストを亜音速で飛ばして、地上のアサルトギアに照準を絞る。

 地上に降下すると同時に、コックピットの下にあるアベンジャーが火を噴いた。

 放たれた弾丸が二機の敵に着弾して破壊すると同時に、スターダストが上空を通り過ぎた。


『パーフェクト! 全弾命中、敵二機を破壊』


 ナナの報告に笑みを浮かべる。

 残り九機。レーダーを見れば、各機が個人行動で動いており、真っすぐこちらへ向かっていた。


「どうやら、敵は個々で動いているみたいだ」

『おそらくリーダー的な存在が不在なのかもね』

「それなら、速度を生かしてこのまま攻撃しよう」

『了解。次に近い敵は……6時方向よ』

「分かった」


 スターダストの機首を上に向ける。そのまま高度を上げて半ループしてから機体を捻った。

 インメルマンターンで向きを変えると、次の敵を倒すべく移動を開始した。




 あのあと、空から二機の敵アサルトギアを倒すと、敵の動きに変化が現れた。


『敵アサルトギア、全機が移動方向を変えたわ。移動先は……目標の無人戦闘機の総合管理AIがある場所ね。どうやら防衛に回るみたいよ』


 空を飛んで移動速度の速いスターダストに、敵も不利を知ったのだろう。前に出るよりも後ろに下がって、防衛に専念するらしい。


「もう少し数を減らしたかったんだけどな」


 アメリア軍のミサイル攻撃が失敗したという情報は、ナナが無線を傍受して知っていた。

 そのアメリア軍も敵アサルトギアの前に敗れ、今は防衛ラインを守るだけの戦力すらない。

 現在、目標の無人戦闘機の総合管理AIを破壊できるのは、スターダストだけだった。


『どうする? 今ならこっちが先に敵のAIに到着するわ』

「向こうの防衛状況は?」

『RCCNの戦車が八台、自走対空砲が四台、自走追撃砲が三台。自走対空砲がやっかいね。空を飛んで向かうのは危険よ』

「了解。地上に降りて、アサルトギアを倒しながら向かおう」

『安全策ね。現在、アベンジャーの残り弾数77%。弾数にだけは気を付けて』

「頭の片隅で覚えとくよ」


 半数の敵を倒した時点で、残り弾数が77%なら大丈夫だろう。

 スターダストを陸戦モードに変形して地上に降りる。

 背中のジェットエンジンを噴射すると、ホバーリングして地面を高速で滑走した。




『11時方向、アサルトギア一機。距離400m!』


 ナナの指示にアベンジャーを敵に向けてぶっ放す。

 移動しながらの攻撃で照準は甘かったが、背中を向けていた敵の燃料タンクに命中して爆発を起こした。


『撃破を確認。残り三機よ』


 敵アサルトギアを追い駆け、次々と破壊し、その数は四機を超えた。

 残りは三機。今の私なら間違いなく倒せる!

 油断せず気を引き締め、次のアサルトギアを追い駆けた。




『目標地点付近に、ワープゲート発生‼』


 次の敵に追いく前に、ナナが声のトーンを上げて報告してきた。


「まさか、増援!?」

『そのまさかよ‼ 傍受したRCCNの画像をサブスクリーンに映すわ』


 サブスクリーンに映ったアサルトギアの容姿に、目を見張って驚く。


「虎!?」


 新たに出現したアサルトギアは四足歩行だった。

 容姿は縞模様のない虎に似ている。

 両脇の左右には、それぞれ四つの砲台が装填されていた。


『正体不明機の高さは、スターダストと同じぐらいあるわよ』

「デッケー!」


 スターダストの全長は20m。正体不明機も同じ高さだけど、相手は四足歩行の獣型。つまり、全長はもっと大きい。


『傍受した無線の内容によると、正体不明機は目標のAIの近くで待機しているらしいわね』

「正体不明機だと分かり辛いから、アイツの名前は今からタイガー型ギアにしよう」

『そんな事どうでもいいわ。問題はアレを倒さないと、目標のAIを破壊できないわよ!』


 ナナが叱って来たが、どんな敵が現れたってやる事は一つだけ!


「AIを破壊しないと人類が滅亡するんだ。だったら、あのタイガー型ギアを倒してAIも破壊する。それだけだ‼」


 私が怒鳴り返すと、ナナも決心したのか大きく頷いた。


「ナナ、行くぞ‼」

『……了解!』


 私とナナは残りの雑魚を倒しながら、タイガー型のアサルトギアへと向かった。

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