第23話 初陣 その1

「見えてきた!」


 スターダストを飛ばしていると、目の前に陸地が見えてきた。


『状況が分かったわ。敵のアサルトギアの数14機。現在、アメリア軍に攻撃中。アメリア軍は……無線を傍受したけど、混乱していて命令系統が滅茶苦茶ね』

「味方の支援はなし。了解!」


 スターダストが海上から陸地に入る。それと同時に、音速から亜音速まで速度を落とした。

 レーダーのマーキングに、敵アサルトギアが表示された。

 相手はまだこちらの存在を知らないはず。先制攻撃でどれだけ倒せるかが、重要な鍵だった。


「陸戦モードに変更!」

『了解‼』


 音速を超ている状態で、戦闘機だったスターダストがロボット型に変形する。

 広がった空気抵抗に重力の負荷が私を襲う。体が引き千切れそうになるのを、歯を噛みしめ耐えた。


 敵を確認すれば、二年前に私を襲った鋼鉄の巨人と同型だった。

 あの時の私は何もできなかった。だけど、今なら戦える!

 敵の姿に私の闘志は膨れ上がった。


 空中でアヴェンジャーMk.Ⅱを構え、着地寸前に足裏のホバーリングを噴射!

 着地してもスターダストの勢いが止まらず、地面を滑走する。


 機体を回転させると同時に背中のエンジンを噴射!

 それでスターダストの着地距離を縮めて、地面に降りた。


 敵アサルトギアが攻撃を止めてこっちを見るが、突然現れた私たちに、まだ対応できていない。

 ヘルメットが私の脳波を掴み取って、スターダストに送る。

 私の視界で捉えている三機の敵に、ターゲットマークが表示された。


 アヴェンジャーMk.Ⅱを両手で支えてトリガーを引く。

 アヴェンジャーの銃身が回転を始め、銃口から30x173mm劣化ウラン弾が、重低音の響きと同時に放たれた。




 弾丸が敵の装甲をぶち抜いて胴体を粉砕する。

 銃弾の勢いはそれだけに留まらず、敵を衝撃で後ろに弾き飛ばした。


 一機目が倒されて、残りの二機が銃口をこちらに向ける。

 だが、それよりも早くアヴェンジャーの弾丸が二機目の胴体に着弾して、敵は踊るように宙を舞いながら倒れた。


 最後の一機が肩に装備した小型ミサイルを放つ。


『回避行動に入るわよ』


 私が反応するよりも先に、ナナがスターダストのホバーリングを起動させて、左へと機体をスライドさせた。

 避ける? いや、あの速度だったら避けられる!


『え? チョット、何?』

「大丈夫、問題ない!」


 私はナナから操縦権を奪うと、慌てる彼女に声を掛けて安心させた。

 そして、スターダストをミサイルに向かって突進させた。


 足の向きを維持して前進しながら、機体の上半身だけを側面にする。

 小型ミサイルが当たる寸前にバックステップすると、ミサイルは元居た場所を通り過ぎた。


『ミサイル回避‼』


 興奮したナナの声が耳に入ってきた。AIがそんなに興奮したらダメだと思う。


 敵のアサルトギアは、ミサイルが回避されると思っていなかったのか、次の行動に移すのが遅れていた。

 その間にスターダストを接近させて、敵の目の前でジャンプ!

 脚を上げて相手の頭を下から蹴り上げた。


 敵が地面に倒れた敵アサルトギアに、アヴェンジャーの銃口を押し付けた。


R.I.P安らかに眠れ‼」


 アヴェンジャーの弾丸が胴体を撃ち抜く。

 接近距離からの被弾に、敵の胴体は完膚なきまでに壊れた。




『敵アサルトギア。全機、こちらに接近中』


 三機のアサルトギアを破壊して、周囲に敵は居なくなった。

 ナナの報告にレーダーを見れば、残り11機の敵アサルトギアがこちらへ移動している最中だった。


「飛んでここから離脱するよ。端から倒していこう」

『突っ込むと言わなくて良かったわ。了解!』


 どうやらナナは私を猪か何だと思っているらしい。


 私の不満を無視して、ナナがスターダストを空戦モードに変形する。

 そして、少し離れた東へと飛んだ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ありがとう‼」


 ロボット同士の戦いを目撃していた大勢のアメリア兵士たちが、青い戦闘機が飛び去った空に向かって手を振り歓声を上げていた。


 先程まで事態は最悪の状況だった。

 作戦はミサイルが誘導を失って目標に命中せず、失敗に終わった。

 その後、原因であろう敵のロボット兵器が、こちらの軍を攻撃し始めた。

 ミサイルと大型銃口のマシンガンに、戦車が次々と破壊される。

 突然の新型兵器の襲撃に指揮系統は乱れ、生身ではなすすべがなく、一方的に押されていた。


 すると、南の空から青い戦闘機が現れるや、ロボットに変形しながら曲芸に近い方法で地面に降りてきた。

 新たな敵かと死を覚悟したら、青いロボットは敵のロボットを攻撃し始めた。


 青いロボットはあっという間に敵を二機を破壊すると、最後の一機は飛び蹴りをブチ噛ました。

 思わず興奮して、仲間と一緒に大声で叫んだ。

 青いロボットは敵を全て倒すと、戦闘機に変形して東の空へと飛び去った。変形するとか、カッケーぜ!


 あれが何だったのかは分からない。だけど、俺たちの命を助けてくれたのは事実。

 多分、あの青いロボットは、残りの敵ロボットを倒しに行ったのだろう。

 俺たちは飛び去った空に向かって手を振り、操縦者の無事を祈った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

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