第22話 青空の惑星

「空だ!!」


 光に慣れて目を開けると、目の前に青空が広がっていた。

 太陽が輝き、青い空には雲が浮かぶ、地上は太陽の光を浴びて命の躍動感に溢れ、遥か遠くを見ればロッキーマウンテンが空に透けて聳えている。


「ナナ! ここは私がいた時代か? そうだよな!」

『ええ。貴女が未来に行ってから二カ月後よ』

「やったーー!」


 ナナちゃんの報告に、両手を掲げて歓声を上げる。


『喜ぶのはまだ早いわ。このまま戦場に向かうわよ』

「分かってるさ。だけど、今だけは感動を噛み締めたいんだ!」


 二年ぶりの太陽。

 空が青い事がこんなに感動的だなんて夢にも思わなかった。


『そんなに感動するものかしら、ただの快晴よ』


 投射スクリーンの中のナナちゃんは、感動している私の様子に肩を竦めて呆れている様子だった。


「じゃあ、行くよ!」

『ええ、気合を入れましょう!』


 私とナナは気持ちを切り替えると、スターダストの進路を戦場に向けた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「全ミサイル、謎の兵器に全て撃ち落とされました‼」


 オペレーターの悲鳴が指令室に響き渡り、アメリア軍の陸軍司令官が顔をしかめた。


 WU太平洋連合は、敵のドローン戦闘機を管理するAIを破壊するために、半年前からミサイル攻撃を計画していた。

 計画では、この攻撃で敵の制空権を奪い、反抗作戦に撃って出る予定だった。

 だが、計画が始まり、ミサイルを撃つと同時に敵側から謎の光が現れた。

 そして、光の中から何十機の巨大な人型兵器が現れるや、ミサイルが次々と誘導を失って墜落した。


「あれは一体何なんだ? あんな兵器がRCFロシミール中華国連盟にあるという情報はないぞ」


 陸軍大将の呟きに答えれれる者は、この場に居なかった。




 全てのミサイルを破壊した後、敵の人型兵器が進軍を開始した。

 味方が応戦するが、敵の兵器の前になすすべなく、一方的に押された。


 そこへ、オペレーターから再び、悲痛な報告がはいってきた。


「指令! スネーク島にも、光が発生しました‼」

「衛星写真を写せ‼」


 背後からの襲撃か?

 司令官がモニターを見ると、光の中から青く輝く戦闘機が姿を現した直後だった。


「光から未確認戦闘機出現! マッハ1.8……マッハ1.9……マッハ2……高速で戦場に向かっています‼」

「撃ち落とせ‼」


 これ以上敵が増えたら、間違いなくこちらの被害が拡大する。

 司令官は被害を食い止めるべく、未確認戦闘機の撃墜を命じた。


「了解!」


 オペレータから黒海上のイージス艦に命令が下る。

 その数秒後、イージス艦からミサイルが発射された。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




『ミサイル接近!』


 アラート音が鳴ると同時に、ナナが危険を伝えた。


「どこから?」

『アメリア軍のイージス艦からよ』


 まさか最初に攻撃してくるのが味方だとは思わなかった。


「こっちは味方だよ!」

『向こうはそんなの知らないわ』

「向こうに味方だと伝えてよ!」

『無線が敵に傍受される可能性があるから、却下』

「ええーー!」


 喋っている間にもミサイルが接近している。


『回避するから操縦を替わるわよ』


 ナナは私から操縦を奪うと、着弾する寸前に機体の進路をわずかに変えて、ミサイルをギリギリ回避した。


「今の危なかったんじゃない?」

『人間だったら難しい事もAIの私なら簡単よ』


 モニター越しにナナが肩を竦める。


「じゃあミサイルは問題ないんだな」

『近い距離で撃たれたら私でも無理よ。できるだけ撃たれないようにして』

「分かった!」


 私はナナから操縦を返してもらうと、レーダーに引っ掛からないように、できるだけ低空を飛行した。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ミサイル回避されました!」


 イージス艦の艦橋でオペレーターが悲鳴を上げた。


「何だと⁉」


 その報告に、イージス艦の船長が椅子から立ち上がった。


「未確認戦闘機、我が艦の近くを通ります‼」


 オペレーターが報告に、イージス艦の船長は一目見ようと双眼鏡を目に当てた。


「何だアレは?」


 青い戦闘機を見て思わず口ずさんだ。

 見た事のない青い機体。太陽の光に照らされて、サファイアの様に光り輝く。

 それが海上ギリギリを高速で飛行し、こちらに近づいていた。


「戦闘態勢に……⁉」


 イージス艦の艦長は双眼鏡を目から離して叫ぼうとするが、その前に青い戦闘機はイージス艦を無視して、目の前を通り過ぎて行った。

 直ぐに、音速を超えて発生したソニックブームと高波がイージス艦を襲い、船が激しく揺れた。


「一体あれは、な、なんだったんだ?」


 イージス艦の艦長は、青い戦闘機が去った北の空を見上げて呟いた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

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