第20話 私とナナちゃんと愉快な仲間たち その5

 四体のドローンは面白いことに、それぞれに個性があった。


 最初に顔を描いたドローン(⌒▽⌒)は、非常に女子力が高い子だった。

 この子は炊事洗濯掃除など私のサポート担当だった。

 マズそうに缶詰を食べる私を気にして、わざわざサイパン島まで安全な調味料を取りに行ってくれた。

 そのおかげで、あの缶詰も少しだけまともに食べられるようになった。これに関しては命にかかわる事だったから、本当に感謝している。

 他にも私が座学を受けている時は、ナナちゃんの話をホワイトボードに分かりやすく書いてくれたり、筋トレ中にタオルや水を差し入れしてくれたりと、本当に良い子だった。


 次に顔を描いたドローン(0▽0)は、真面目だけど、どこかのんびりした性格だった。

 この子は生産プラントの担当で、私の食糧事情を一任されていた。

 生産プラントの仕事は大変で、水やり、雑草抜き、受粉、人工太陽の調整。コンバインも受粉を助ける昆虫も居ないから、それらを全て手作業でする必要があった。

 (0▽0)は、地味だけど大変な農作業を毎日一人でやって、午後は生産プラントの入口でチョコンと座り、夜になるまでぼーっとするのが日課だった。

 たまに私が息抜きで遊びに行くと、農作業をとめて私に甘えてくるけど、すぐに中断した作業に戻る。その様子がなんとなく子犬みたいで好きだった。


 三体目のドローン(0▽<)は、職人気質だけど優しい子だった。

 この子は、武器製造とスターダストのメンテナンス担当で、ナナちゃんがどこかの博物館から取ってきたアヴェンジャーを改造したり、その弾丸を作成したりと、ナナちゃんの命じるままに黙々と働いていた。


 仕事中に私が近づいても片手で挨拶するぐらいで抱きついてこないが、それは自分が機械油で汚れているからで、私が汚れるのを避けたかったらしい。仕事が終わって夜になると他のドローンと一緒に甘えてきた。

 普段は不愛想だけど、気配りのある優しい子だった。


 最後の四体目のドローン(>▽<)は、自由奔放な性格をしていた。

 この子は殆ど拠点に居らず、いつもサイパン島まで出向いて廃品を回収するのが仕事だった。

 拾って来る廃品の殆どは、拠点の補強に必要な材料だったが、時々私に必要な品を持ち帰ってくれた。

 特に嬉しかったのは缶に密封されたコーヒーで、それを貰った時は嬉しくてドローンをぎゅっと抱きしめた。

 それに服を取って来てくれた時も嬉しかった。この島に来た時、私が持っている服はタンクトップとホットパンツ、それ以外はパイロットスーツだけで下着も替えがなかった。

 夜はドローンに洗濯をお願いして裸で寝た。

 そんな野蛮人みたいな生活を送っていたが、この子のおかげで今は普段着も替えの下着も充実している。

 この子が配下のドローンたちと一緒に返ってくる度、私はいつも感謝の気持ちを込めて頭を撫でた。

 すると、(>▽<)は照れくさそうに手足をわしゃわしゃ動かしていた。


 この四体の他にも、この拠点で生産されたドローンが八体居るが、この子たちはオリジナルの四体の下に就き彼等をサポートしていた。

 この子たちに感情は無いが、それでも私は四体と同様に彼等を可愛がった。




 テニアン島に来た時は、どうしていいのか分からず不安だった。

 寂しくて枕を濡らした時もあった。

 シミュレーターが厳しくて何度も諦めようとした。

 トレーニングと偽って、倒れるまで自分を痛めつけた時もあった。


 今日、スターダストの実機訓練でナナちゃんから合格点を貰って、私の訓練は終了した。

 後は元の時代に戻って自我に目覚めるAIを破壊するだけ。


 世界が滅びるというのなら、私がその未来を変えてみせる!!


 今の私を天国の父さんと母さんはどう思うだろう。

 スターダストの壁に貼られた家族の写真に語りかけるが、写真の中の二人は私に向かってただ笑うだけだった。

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