第19話 私とナナちゃんと愉快な仲間たち その4
筋力トレを控えた私は何かスポーツをしようと、ナナちゃんに相談したら、彼女から空手を勧められた。理由はスターダストの接近戦に役立つから。
だけど、空手をやろうにも私の空手知識は乏しく、人をぶん殴るぐらいしか知らないし、組手をしようにも相手が居ない。
私がそう言うと、ナナちゃんが空手の型で
ナナちゃんはどこからそんな知識を得ているのだろう。
それを彼女に尋ねたら、隣のサイパン島からジャンク品を回収して、その中の記憶媒体から情報を入手していると教えてくれた。
ナナちゃんの動きに合わせて、両腕を上に伸ばして円を描くように下ろす。構えてから左、右のストレート、左アッパー左ストレート、右ストレート右アッパー、後ろ蹴り、また右ストレート……。
これが何の意味を持つのか分からなかったけど、投射スクリーンの中で胴着に着替えたナナちゃんのマネをして、カンクウダイを覚えた。
他にも空手の型はあるみたいだけど、「まずこの型だけをやり続けなさい」とナナちゃんから言われて、私はひたすらカンクウダイをやり続けた。
一体どれだけやっただろう……。
毎日八時間、体力トレーニングの時間以外に休憩時間でも自由時間でも、やる事がないから暇さえあれば体を動かし続けた。
最初は空手というよりもダンスを踊っているみたいだったよ。不格好な自分が情けなくて何度もやめようと考えたけど、途中でやめた方が情けないと思ってやり続けた。
私はナナちゃんがカンクウダイをしている動画を何度も見直して、修正しながら一挙手一投足の型の理解を深めた。
それを一ケ月続けると、私のカンクウダイはダンスから、少しだけ空手に見える形になった。
それでも私はカンクウダイをやり続けた。
二ケ月、三カ月、半年、一年……。一日最低三百回、時には午前のシミュレーションで仮想の敵を相手に遠距離武器を捨てて接近戦で戦い、カンクウダイを極めていった。
その結果、私の拳と蹴りは空を切り裂き、踏み込む震脚は床を揺らすようになった。まだ極めたとは言えないが、私はカンクウダイを卒業して観空大を身につけた。
ちなみに、そんな私をナナちゃんは「またやり過ぎよ」と頭を抱えていた。
この時代に来てから私は独りぼっちだった。もちろんナナちゃんという話し相手が居たけど、彼女も当初は今みたいに姿がなかったから傍に居るという感じではなかった。
そのような状況で私を癒してくれたのが、ドローンだった。
ドローンを最初に見た時は、顔がなく空飛ぶ不気味な人形というイメージだったが、その日のうちに私がマジックペンで顔を描いたら思っていたよりも可愛くなった。
そして、ドローンは顔が気に入ったのか私に懐いた。
この子たちは私を見つけると近寄ってきて、小さい体で抱きついてきた。
私が頭を撫でたり、あやしたりすると、手足をバタバタさせるから、それが喜んでいるみたいで私の心を癒してくれた。
私とは逆に、ナナちゃんはそんなドローンに対して否定的だった。
彼女はドローンを観察して、単純なAIしか積んでおらず感情表現に割り振るスペックがないのにそれを持っているのは、メモリーの削除処理にバグがあるからだと判断した。
そして、このままだとメモリーがオーバフローするかもしれないからと、ドローンの初期化を考えていた。
その話をナナちゃんから聞いていると、ドローンたちが部屋に飛び込んで私に抱きつき首を左右に振る。
その様子はまるで泣いているみたいだった。
どうやらこの子たちは初期化されるのが嫌で、私に助けを求めたらしい。
だけど残念、その顔は笑っていた。うん、久しぶりに不気味だったよ。
私も今のドローンは可愛いと思っていたし、少しホームシックに掛っていた時期だったから、ナナちゃんを説得してドローンの初期化をやめさせた。
それ以降、ドローンたちは私を恩人に思ったのか、より一層私に懐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます