第17話 私とナナちゃんと愉快な仲間たち その2

「デッカイなーー何それ?」

『アヴェンジャーよ。航空博物館に眠っていたA-10から取ってきたわ』


 私が驚いていると、ナナちゃんが自慢げに説明を始めた。

 アメリア空軍の対地攻撃に特化した支援戦闘機A-10サンダーボルトII。

 その主要武器であるGAU-8アヴェンジャーは、銃身長は2,299mm、装弾数は1,350発、七銃身の銃口から毎分3,900発の30x173mm劣化ウラン弾を撃つ。

 その威力は凄まじく、戦車さえハチの巣にするらしい。


「それで、そいつをどうするんだ?」

『もちろん改造してスターダストの武器にするわ』


 ナナちゃんの話だと、銃は手に入れたけど弾丸がなかった。何故なら、弾丸に入ってる無煙火薬は古くなると成分が分離して、暴発する恐れがあるらしい。

 そこで、ナナちゃんとドローンはサーマルガンを分解して、火薬の代わりに、プラズマで弾丸を放つようにアヴェンジャー改造した。


『発射速度は毎分3,700発で連射速度は少しだけ落ちたけど、銃口初速と有効射程は従来のアヴェンジャーより1.3倍伸びたわ。それに薬莢がいらないから装弾数が3,300発に増えたわよ』


 自慢げなナナちゃんから説明を受けた後で試し撃ちを見学したら、その威力に驚いた。

 的は外に転がっていた装甲車だったけど、アベンジャー改め、アヴェンジャーMk.Ⅱの銃口から弾丸が放たれた瞬間、装甲車が吹き飛んで宙を舞っていた。


 私が口をあんぐりと開けていると、ナナちゃんがカメラを拡大して装甲車の様子を見せてくれた。

 その装甲車は、至る箇所をハチの巣にされて、木っ端みじんに砕けていた。


『うーん。まだまだ駄目ね』


 どうやらナナちゃんから見て、今のは合格ラインに到達していないらしい。


「これ以上威力をあげるの? もう十分でしょ」

『まだまだよ。バラけてるからもう少し照準を絞りたいし、消費電力を押さえたい。あと、冷却装置を入れないと発熱で撃てなくなるわ。それとパイロットと連動させるソフトウエアも必要ね』


 結局、アヴェンジャーMk.Ⅱが完成するまで一年半の月日が掛かったよ。




 最後に作ったのは、アサルトギアのシミュレーションルームだった。

 シミュレーションルームと言っても、小さな部屋にスターダストのコックピットを模写した体感ゲームみたいな筐体を置いただけだが、その筐体が凄かった。


 筐体の中に入って動かすと本当に揺れるし、画面の向こうの敵に殴られたら大きく振動して揺さぶられた。無駄にクオリティが高い。

 このシミュレーターは、本当のゲームみたいに難易度のレベルがあった。

 ナナちゃんからはレベル300になるまで、本物のスターダストの操縦をさせないと言われた。


 最初のレベル10まではチュートリアルな感じで、スターダストを動かすだけだから簡単だった。

 だが、次第に難易度が上がって、レベル30になると敵アサルトギアと戦うようになった。

 それだけならまだ良かった。クリアし続ければいずれコンプリートする。だけど、このシミュレーターが最悪なのは、クリアに失敗するとレベルが一つ下がって、前のステージからやり直しさせられる事だった。

 苦労してようやくクリアしたのに、次のレベルであっさりロストしたらまたやり直し……ゲームと思って舐めていた私が悪かった。


 半年ほどで私から泣きが入り、ペナルティを緩くしてもらって3回ロストしてもレベルが落ちない仕様に変えてもらった。

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