第16話 私とナナちゃんと愉快な仲間たち その1
……未来に来てから二年が過ぎた。
私は二十歳になって、女の子から少しだけ大人の女性になったと思う。
そして、変わったのは私だけでなく、ナナちゃんも、スターダストも、そしてテニアン島の環境も変わっていた。
まずナナちゃんとドローンは電気を完全に復旧させると、水のろ過装置と食料生産プラントを復旧させた。
食糧生産プラントには種が冷凍保存されていて、小麦、大豆、ニンジン、レタス、ジャガイモ、トマトの種があった。
甘い果物の種がない事にショックを受ける。
私も暇なときは作業担当のドローンを手伝って、成長する植物を眺めてほっこり心を癒した。
一応、倉庫には半年分の缶詰が保管されていたけど、やはり新鮮な野菜は美味しい。
初めて収穫した野菜を食べた時、食べられるだけマシな缶詰から解放されたという気持ちが溢れて、生きてて良かったと大泣きしたよ。
ナナちゃんは私が嬉しそうに野菜を食べている様子に、自分も何かを作ろうと考えたのか大豆から人工肉を作った。だけど、出来たのは日本の豆腐に近かった。
味は悪くなかったけど、私の評価にナナちゃんは悔しそうだった。
大豆から人工肉を作ろうとして失敗したナナちゃんは、次に私の体の一部を採取して人工培養で肉を作ろうかと提案してきた。それってガチの共食いじゃん! 絶対に嫌だと断った。
結局、ナナちゃんは料理を作らず暇があったら食材ばかりを作っていた。
何が彼女を食材作りに走らせたのかは分からないが、何かが間違っていると思う。
食料事情は解決したけど、私は強制的なヴィーガンになった。
できれば本当の肉を食べたかったけど、今の地球上で生きている生物が私しか居ないんだから仕方がないね。
ナナちゃんとドローンは食糧生産と同時進行で別の施設も作成していた。
最初に完成したのは、労働者を確保するためのドローン生産工場だった。
ドローンの作成に必要な材料は、地上でジャンクと化した戦闘機からいくらでも取れた。
必要に応じて増産していたら、最終的にオリジナルを合わせて十二体になった。
新しく作られたドローンは、オリジナルの四体と違って感情がなかった。少しだけ残念に思う。
それでも顔がないのは不気味だから、色んな顔をマジックペンで描いてあげた。
ところが、それをナナちゃんが嫉妬した。どうやら自分だけ姿がないのが嫌だったらしい。
私がAIの感情を理解することは一生ないね、断言するよ。
ある日、私がヘルメットを被ると投射スクリーンが現れて見知らぬ白人女性が映っていた。
ヘルメットにそんな機能があるのを知らなかったし、地球上で生きてるのは私一人だけだと思っていたから、それを見た時はガチでビビった。
『ねえ、驚いた?』
ナナちゃんの声で正体が分かったけど、どんなソフトウェアでも事前通告なしでアップデートするのはやめて欲しい。本当に驚くからやめて欲しい。
「それ、自分で作ったの?」
『一応モデルは居るけど、そうよ』
投射スクリーンに映るナナちゃんは、エメラルドの様な輝く緑色の瞳をした目鼻立ちがきりっとしている美しい顔。
髪はウェーブのかかったブロンドを真ん中で分けて、背中の中ぐらいまで伸ばしていた。
コンピューターグラフィックじゃなければ、世界中の男を虜にしただろう。
「モデルって誰?」
『スカイブルーが生まれる前の女優よ』
私の質問をナナちゃんがはぐらかした。
ナナちゃんの見た目はどう見ても二十歳を過ぎている女性だったから、それ以降は「ナナちゃん」と呼ばずに「ナナ」と呼ぶことにした。
インフラ環境と
ナナちゃんの話だと、今のスターダストはサーマルガンとパイルバンカーの二種類の武器しか持ってないらしい。
パイルバンカーはスターダストが敵アサルトギアと戦った時に、目の前で手から槍を出して、相手を撃ち抜いたのを見たから覚えてる。
衝撃で私が隠れていた車が吹っ飛んで死にかけたから、よく覚えてる。
サーマルガンも敵アサルトギアが私を車ごと踏みつぶそうとした時に、スターダストがそれを阻止した銃だけど構造は知らない。
ナナちゃんの説明だと、電流のジュール熱で弾丸の後方の導体をプラズマ化して急激な体積増加で撃つ銃らしい。チョット何を言ってるのか分からない。
どっちも強力な武器だけど、パイルバンカーは接近専用で扱い辛く、サーマルガンは消費電力が高くて連射ができないらしい。
ナナちゃんはそれだと複数の敵と戦ったら不利になると判断して、中距離で連射できる銃を求めた。
そこで、私がこの時代の敵アサルトギアを倒して相手の武器を奪えばいいじゃんと提案したけど、それはすかさず拒否された。
どうやらナナちゃんは、オデッサで戦う前にスターダストの存在を知られたくないらしい。何故なら、遺言を残した管理AIの話が正しければ、オデッサに現れる敵アサルトギアは、今の時代よりも先の未来から来るはずだった。
だから今の時代でスターダストの存在が知られると、オデッサで対策される可能性がある。彼女はそれを嫌がった。
だけど、銃を作ると言っても人型ロボットが使える銃なんてどこにある?
私がそう問いかけると、投射スクリーンの中のナナちゃんはサムズアップして『任せて、考えがあるわ』と言い残し、スターダストと一緒に何所かに出かけていった。
そして、丸一日経って帰ってきたら、スターダストの右手には銃身二メールを超える重機関銃があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます