第8話 愛情の花、覚悟の断崖

 ラングリフ様は、否定もせず、肯定もせず、言われました。


「とんでもない無理難題だな」


 と、言葉の上では驚きながらも、声が少しだけ弾むのを私は聞き逃しません。

 私は、胸の中に滾るものを笑顔に変えて、こう続けます。


「無理でしたら、構いません。そう言いましたので」

「おっと、そんな笑顔で試してくるんだな、君というひとは」


「あなたの分まで笑うのが、私の役割ですから」

「わかっているさ。――それでは行こうか、リリエッタ」

「はい、ラングリフ様」


 そうして、私とラングリフ様は共に踏み出し、前へと出ていきます。


「……あら?」


 前に進み出た私達に、まず、シルティアが気づきました。


「見て、サミュエル! お姉様だわ! 貴族達の中に紛れて、隠れてたのよ!」

「ん? ……ああ、あのつまらない女か。それにラングリフも」


 シルティアは、子供みたいに叫んで私を指さし、殿下は私達を嘲ります。


「な~んだ、いたのね、お姉様! どうしてもっと早く出てこなかったの? あ、わかったわ。私達の前に出てくるのが恥ずかしかったのね、そうでしょ!」

「どうやらおまえも同じらしいな、ラングリフ。王子といっても、王になれないおまえと俺とでは立場が違う。そりゃあ恥ずかしくもなるか!」


 そして、二人は揃って私とラングリフ様を笑います。

 レントさんの栄誉を称えるはずの場に、二人の汚い笑い声が響きました。


 それを、お父様もお母様も止めようとしません。

 陛下はきつく目を閉じられて、目の前にある光景を耐え忍んでおられます。


「……嘆かわしい」


 シルティアの前に立った私は、ため息と共に、そう呟きました。


「え、何か言ったかしら、お姉様? なぁに、今になって自分の中身のなさを理解したのかしら? やっぱりお姉様はにぶいし、頭が悪い――」

「歯を食い縛りなさい、シルティア」

「え」


 呆けるシルティアの左頬めがけて、私は右手を振り抜きました。

 パァンッ、と、広い会場に乾いた音が盛大に響きます。


「…………ぁ」


 一声漏らして、シルティアは叩かれた頬に手を当て、その場にへたり込みます。

 その姿に、私は落胆すら覚えました。


 剣を修めていながら、避けることもできない。

 自分が一番えらいという思い上りが、この子をこんなにも弱くしたのですね。


「ぇ、ぉ、お姉ちゃんが、私を、な、殴っ……?」

「貴様……ッ!?」


 一転して呆然自失となった妹を見て、サミュエル殿下が激昂を示します。


「よくも、シルティアをッ! 俺の妻に手を出して、ただで済むと……ッ!」

「ほぉ、どう済まないというんだ?」


 ですが、ラングリフ様が私を庇うようにサミュエル殿下の前に立ちます。

 彼の広い背中が私を守る壁となって、一瞬、抱きしめたい衝動に駆られました。


「何だ、ラングリフ! どういうつもりだ!」

「こういうつもりだが?」


 彼はいつにも増して険しい顔つきで、白手袋を殿下へ差し出します。


「動くな。投げるぞ?」


 白い手袋を投げる。それが意味するところは、明白でした。

 怒りに染まっていたサミュエル殿下のお顔が、驚愕一色に塗り替えられます。


「本気で言ってるのか、貴様は……」

「あんたではあるまいし、こんなことを冗談で言えるか。部下をコケにされた礼も含めて、第一騎士団団長の剣を馳走してやろうと言っているんだ」


「な、何て野蛮なやつだ……!」

「自己紹介か? さすがにそれはナンセンスだろう」


 たじろぐサミュエル殿下を、ラングリフ様が無表情のまま逆に嘲ります。


「何よ、何よ……、何でお姉ちゃんが私を殴るのよォ~!」


 一方で、やっと我に返ったシルティアが、目に涙を浮かべて喚きます。


「お父様、お母様! 助けてよ! お姉ちゃんが私をいじめるのよ!」

「はぁ……」


 迷わず親に助けを求めるシルティアに、私はため息を漏らすしかありません。

 自分のやりたいことだけをやり続けてきた結果が、これです。


 この子は、あまりにも心が未成熟すぎる。

 国を預かるという重責を担うのに、まるで足りていません。


「リリエッタ、おまえというヤツは! どこまで家の恥を晒せば気が済むのだ!」

「そうです、あなたという子は! そんなにシルティアが憎いのですか!」


 結局、妹がこうなってしまった元凶は、そこで騒いでいる二人なのですね。

 私に敵意を向ける二人が、むしろ滑稽に見えてきます。


「冗談ではありませんね、お父様。お母様」


 私は、二人の言いようを鼻で笑い飛ばしました。


「あなた方こそが、家の恥でしょうに。唯一、陛下に代わってこの子を諫められたはずなのに、それを放置して。そんなに殿下に睨まれたくなかったのですか……」


 私は、何度ため息を漏らせばよいのでしょうか。

 情けない。本当に、つくづく情けない。血の繋がりから否定したい気分です。


「私に貴族の在り方を教えてくださったお父様は、あの御目見えの席で自らそれを捨ててしまわれましたね。一年以上前のことですが、私ははっきり覚えています」

「ぐ……ッ」


 多少なりとも負い目があるのか、お父様は低く呻いて私から顔を背けます。


「お母様は私を自分と同じとおっしゃいましたが、不愉快です。周りに甘えて何もしなかったあなたが、私と一緒だなんて。程度の低い冗談ですこと」

「な、な……!?」


 お母様は顔を怒りに赤く染めあげますが、何も言い返せないようでした。

 そして二人とも、この期に及んで一歩も動こうとしないのです。


 やはり、どこまでもご自分の身が可愛いのですね。

 どうやら、この二人だけには、私も一切の情を捨てることができそうです。

 あとは――、


「シルティア」

「ひ……ッ」


 一歩近づくと、シルティアはビクリと身を震わせて怯えた目で私を見上げます。

 彼女の左頬は真っ赤になっていました。

 さほど力を加えたつもりはなかったのですが、勢いがよすぎたのでしょうか。


「な、何でお姉ちゃんが私に怒るのよ! 私、サミュエルのお嫁さんだよ? ぇ、えらいんだから! お姉ちゃんより、ずっとえらいのよ! えらいんだから!」


 尻もちをついたまま虚勢を張るシルティアは、本当に子供そのものです。

 でも、私が少し近づくだけで、その虚勢は脆くも崩れ去るのです。


「ひっ、ご、ごめんなさい、ぉ、お姉ちゃん、やめて、ぶたないで……」


 私を遮るように両手を盾にして、シルティアは泣き顔を背けます。

 馬に乗れて、剣を使えて、魔法を修めて、本当は私なんかよりずっと強い、妹。

 何もできず、ガタガタ震えるだけのこの子を、私はそっと抱きしめました。


「ごめんね、シルティア。痛かったわね。ごめんね?」


 そして優しく頭を撫でながら、私は、言って聞かせようとしました。


「でもね、シルティア。あなたがしたことは悪いことなのよ?」


 撫でて、優しく撫でて、そして私は妹に道理を説きます。

 私の腕の中で脱力したシルティアが、しゃくりあげながら言葉だけで抗います。


「わ、悪いことなんてしてない……! だって、誰も私が間違ってるなんて言わなかったもの。何が悪いことかなんて、誰も教えてくれなかったもの……!」

「そうよね、そうだったわよね。ずっと前から、そうだったものね」


 今さらの悔恨が、私の中に湧きます。

 私達は、シルティアのことをあまりにも放りっぱなしにしていた。


 お父様は関心を持たず、お母様は私憎しの感情でこの子を甘やかすばかり。

 そして私自身も、シルティアを愚かな妹と見るばかりで何もしてあげなかった。


 誰もシルティアを見てあげられなかった。

 今のこの子の無様な姿は、いわばデュッセル家全員の罪の表れなのです。


 だからせめて、今だけは妹を叱ります。

 この子を、このままにはしておけないと、そう感じてしまったから。


「いい、シルティア。悪いことを悪いことと思わないことが、一番悪いことなのよ。誰かをイヤな気分にさせて平気でいたらダメ。それは、よくないことなの」


 妹を抱きしめて、私は諭して、叱って、サラサラの赤い髪を撫でます。


「ぁ、あ、お姉ちゃん、私……」

「あなたも私も、自分だけで生きているわけではないの。どうか、わかって」


 強く抱きしめてお願いすると、シルティアの泣き声が耳に届いてきます。


「ごめん、なさい……。ごめんなさい、私、ごめんなさい、お姉ちゃん……」

「うん、うん。いいのよ。大丈夫だから、ね? はい、よしよし」


 小さい頃にそうしていたように、私はシルティアの背をポンポンと叩きました。

 この子は、子供のまま、王太子妃という大それた立場に立ってしまっただけ。


 けれど、ここで自らを省みれるのなら、まだ十分やり直せる。

 少なくとも、私はそう信じています。シルティアは、まだここからなのです。


 一方で、サミュエル殿下とラングリフ様。

 殿下はこちらに顔を向けたまま、ラングリフ様を険しい目つきで流し見ます。


「まさか貴様ら、シルティアを懐柔してこの国の実権を握るつもりか!?」

「実権、か。そうだな。それでも構わないと、俺は思っているよ」

「な……ッ」


 こともなげに肯定するラングリフ様に、サミュエル殿下は絶句します。


「き、貴様、国に対して叛逆するつもりか……?」

「俺が逆らうのは国じゃない、あんただよ、兄貴。今のあんたに王は務まらない」


「何を……ッ」

「国を支えるのは王だが、王を支えるのは貴族だ。その貴族を、あんたは蔑ろにしすぎてる。このままあんたが即位すれば、待ってるのは叛乱に次ぐ叛乱だぞ」


 ラングリフ様は淡々と、感情を一切交えずに殿下へ向けてそれを説きます。


「叛乱、だと? 俺がそれを許す間抜けに見えるか、ラングリフ!」

「前は見えなかった。だが、今はそう見えている。だから止めようとしている」


「こ、この俺を愚弄するつもりか……ッ!」

「愚弄しているのもあんただよ。自覚がないのは沿うような重症だぞ、兄貴」

「貴様ァ……」


 サミュエル殿下がますます顔を怒りに歪ませます。

 ラングリフ様ったら、殿下の感情を見事に煽っておいでですね。


「貴様が、王になるというのか! その権利を捨てた貴様が!」

「捨ててはいない。父上に預けただけだ。一度手放したものを返せというのも道理に合わないが、それでも今のあんたを王に据えるよりはよっぽどマシな選択だ」


 ラングリフ様が、国王陛下へと向き直ります。


「父上、このような状況を今まで看過し続け、申し訳ございません」

「ラングリフよ、そなたは……」


「母に愛されなかった俺ですが、この国のことは愛しています。何せ、世界で一番大切な妻が住まう国でもありますので。兄上の存在がこの国にとって悪であるなら、俺がこれを討ち、兄上に代わって王家の責務を全うする所存です」


 サミュエル殿下が目を剥きます。

 ラングリフ様に王位継承権が戻れば、サミュエル殿下の廃嫡が可能となります。


 王となる覚悟。

 それが、僭越にも私がラングリフ様に求めたものでした。


「正気か、貴様ッ! あれが明るみになってもよいというのか!」


 殿下が言われる『あれ』とは、ラングリフ様の呪いのことですね。

 呪われし王家など、醜聞としてはこの上ないものです。


 陛下もそれを懸念して、ラングリフ様に社交界に出ないよう言っていた程です。

 ですが、彼は表情を一つも変えずに、断言なされるのです。


「そんな汚名で揺らぐほど、俺の決意は軽くない。国が乱れるとわかっていて、あんたを王になどするものか。玉座とは民のために泥を被れる人間のための場所だ」

「バ、バカな……」


 示されたその覚悟に、サミュエル殿下は絶望の呟きを漏らします。

 廃嫡される可能性なんて、わずかなりとも考えていなかったのでしょう。


「……もうよい、ラングリフ」


 震える殿下を前にして、陛下はゆっくりとかぶりを振ります。


「そなたの言わんとするところはわかった。だが、少々やりすぎだぞ。サミュエルを諫めるにしても、もう少し穏便なやり方もあったであろうに」

「部下の誇りを汚されました。方法など選んでいられません。それに、立場と女に酔ってバカになっている兄上の目を覚ますなら、これくらいは必要です」

「その頑固さは誰に似たのやら……」


 陛下は一度息をつかれたのち、サミュエル殿下の肩を軽く叩きます。


「サミュエルよ、此度は己の至らなさを知るよい機会であったろう」

「お、親父、俺は……」


「そなたがこれ以上増長した振る舞いを見せるのであれば、余はラングリフが示した道を本気で検討するやもしれぬ。それを厭うのであれば、励めよ。わかったな」

「…………ぅ、ぐ、は、はい」


 殿下は、顔をあげられないまま意気消沈して、小さくうなずかれました。


「ならば、まずはおまえ自身が名誉を損ねた我が国の勇士に正式に謝罪せよ。彼こそは今後この国を支えうる重要な人材であるぞ。最大の敬意をもって接しよ」

「……御意」


 うなだれたまま、サミュエル殿下がレントさんの方へと歩いていきます。

 彼は、自分がけなした騎士に向かって深々を頭を下げて、謝意を表明しました。


「……すまなかった。俺がつけ上がっていた。どうか許してほしい」

「チッ」


 レントさんは不快げな顔をして舌を打ちます。

 殿下がビクリと身を震わせますが、レントさんはすぐに息をつきました。


「わかりましたよ、顔をあげてください、王太子殿下」

「ああ、すまな――」


 最後にもう一度謝って、言われる通りに顔をあげようとする殿下でしたが、


「こいつで、チャラにしてやるよ!」


 その鼻っ柱に、レントさんが右拳を叩きつけました。


「ぐがッ!?」


 驚く私達が見ている前で、殿下は派手に吹き飛んでいき、床に転がります。

 レントさんが、振り抜いた拳を突き出したまま、大声で叫びます。


「今回だけは、殺さないでおいてやるよ。だがな、本来は騎士の体面を土足で踏みつけるようなヤツとは命の取り合いしかねぇんだ。よく覚えとけッ!」

「……肝に、銘じておく。ぐ、はッ」


 消え入るような声でうなずいて、殿下はその場に崩れ落ちました。

 ラングリフ様は退き、陛下は事の成り行きを見守っていた貴族へと告げます。


「見苦しいところを見せた、我が臣下達よ! 今の通り、王太子サミュエルは心身共に著しく未熟である! よって、明日より二年間、第十三騎士団にて鍛え直すこととする! また、王太子妃シルティアも一から王妃教育をし直すものとする!」


 下された沙汰に、貴族達が一斉にどよめきます。

 しかし、陛下のお言葉はそれだけでは終わりませんでした。


「そなたらには見舞金を下賜する! のちほど、王宮に前年度の年収金額を報告せよ! 一律でその半額を支給するものとする! 虚偽報告は決して認めぬぞ!」


 とんでもない大盤振る舞いです。

 それまで静まり返っていた会場内が、これによって一気に過熱しました。


「ご立派な采配でございました、陛下!」

「今宵、この場にて陛下の勇ましきお姿を拝見できて恐悦至極でございます!」


 高らかに声を張り上げる陛下に、貴族の皆様は口々に賞賛を重ねていきます。

 会場内が、陛下への惜しみない拍手と称賛で満たされました。


 陛下は金銭を支払い、皆様はそれを受け取ることで今回の一件を騒ぎ立てない。

 これは、そういう形の取引でもありました。


「ぃ、いやぁ~、さすがでございます! 陛下!」

「ええ、何て素晴らしいご決断でしょう! わたくし、敬服いたしましたわ!」


 そこへ、陛下にすり寄っていくのがお父様とお母様です。

 その面の皮の厚さは大したものですが、陛下が向ける視線に気づいていません。


「近衛兵、この者らを捕らえよ!」

「はっ!」


 壁際に控えていた兵士達が、たちまち二人を取り囲みます。


「な、へ、陛下……!?」

「どういうことでございますか、陛下!」


 お父様もお母様も、心外だと言わんばかりの顔をします。

 しかし、陛下の表情は、極寒の氷土を感じさせるほどに寒々しいものでした。


「先程、リリエッタが語ったところが余がそなたに期待する全てであったぞ、侯爵。だがそなたは、ついぞ余の期待に応えようとはしなかったな。それが罪状だ」

「ぅ、う……!」

「それでは、悪いのは夫だけではありませんか! 何故、私までもが!?」


 お母様が喚きたてますが、陛下はもう一瞥もせずに、ヒラリと手を振りました。

 指示を受け取った近衛兵達が、もがく二人を連れていきます。


「シ、シルティア! リリエッタ! 私達が悪かった! 頼む、助けてくれ!!」

「何をしているの、私はあなた達の親なのですよ、は、早く助けなさい!」


 耳障りな雑音が聞こえてきます。

 私はシルティアをギュッと抱きしめて、せめてもの手向けに笑顔を贈ります。

 かつて、お父様によって育てられたとびっきりの作り笑いを。


「さようなら、お父様。お母様。二度と私達の前に現れないでくださいね」」

「リリエッタ……、リリエッタァ――――ッ!」

「イヤよ、こんな男と一緒に捕まるなんて、そんなの、イヤよォ――――ッ!」


 最後の絶叫をその場に残して、二人は連行され、大扉は閉ざされました。

 叫びの余韻が消えるまで、私はそちらを見つめます。すると、


「私も、捕まらなきゃ……」


 ポツリと、シルティアがそんなことを言い出したのです。


「私、悪いことしたから、捕まらなきゃ……」

「そんなこと、させないわ」


「どうして……?」

「あなたまでいなくなったら、私が寂しいわ。シルティア」

「お姉、ちゃん……」


 シルティアは、また私にしがみついて肩を震わせます。


「……ここにいる人達に、ちゃんと謝るね、私」

「ええ、そうね。悪いことをしたら、謝らなきゃいけないわね」

「……うん」


「それが終わったら、私とお話をしましょう。今までできなかった分、いっぱい」

「……うん」


「美味しい紅茶の葉を買ってきたの。今度、お屋敷で一緒に飲みましょう」

「……うん、飲みたい。ごめんね、お姉ちゃん」


 会場が陛下を称える声で満ちる中、私はシルティアを抱きしめ続けていました。

 こうなると、この子も可愛いのですけどね……。


「おっと、リリエッタは独占されてしまっていたか。これは残念だ」

「ラングリフ様!」


 私のところに、ラングリフ様がお戻りになられました。

 彼は、済まなそうに頬を掻いて、私に軽く頭を下げてみせます。


「どうやら、俺は王になれないらしい。君のわがままを叶えられなかったよ」

「そのようですね。とても残念です」

「ああ、残念だな」


 彼は笑わずに言って、私は少し笑いました。

 その後、レントさんの叙爵はつつがなく執り行われました。

 レントさん、最後の最後まで『貴族になりたくない』って嘆いてましたけど。

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