小鳥遊、女装するってよ

第1話

 色々と(貞操とか貞操とか貞操とか)大変だった夏休みが終わり、ついに二学期が始まる。


 うん、皆とのプチ旅行は楽しかったけど、色々と……本当に色々と気にすることが多くて大変だった。特に、周期的に眠気が出てきた時とかそりゃあもう大変よ。


 寝てたら、絶対喰われるやん。


 と、まぁ大変だった夏休みも終わり、ついに二学期!久々にあうクラスメイト達に思いを馳せながら────


「夏休みが終わったら、何が始まるか知ってるか?少年」


「また何か変なノリが始まりましたね……」


 ────の前に、何故か朝5時から学園長である長月さんに呼び出された。彼女の背後には、恐らく仕掛け人である学園最強のワルキューレ月下花火つきもとはなび様と、後方科生徒会長『ジャンヌ・ダルク』の天馬渚てんまなぎさ様が控えていた。


 いや、一体これから何が始まるんです?


「知らんのか?そう、ヒロイン大運動会が始まるっっっ!!!」


「なんぞそれ」


 全く知らん単語が出てきた。『ヒロイン大運動会』?


 名前からして、まぁ普通の運動会のヒロインバージョンと言った感じなのだろうが、全くもってご存知ないです。


「花火、渚、説明を」


「裕樹さん。『東京御三家』と呼ばれる三つのエル・ドラドはご存知ですか?」


「………スゥー」


「……知らないん、ですね」


 ゆっくりと花火様達から顔を逸らす。いや、こんな体になる前はヒロインのことなんて全くと言っていいほど知らなかったし、長月さんから貰った教材にも、そんな単語はなかった。


 チャ=ウンスヨ。別に、意図的に調べなかった訳じゃなくて……いや、瑠璃学園がその東京御三家に含まれてるんだろうなぁとは想像できますよ?本当に知らなくて……。


「ヒロイン大運動会とは、この東京御三家と呼ばれる三つの学園での合同で行われます。私達瑠璃学園。千代田にある『聖白百合女学院』、足立の『雛罌粟ひなげし女学校』。これが、東京御三家と呼ばれている、日本の守りと攻めの要です」


「ほえー」


 いやー普通に知らなかった。というか、聖白百合女学院ねぇ………。あそこ、そんな凄かったんだ。


「どうしました?」


「いえ、聖白百合は聞いたことあったので」


 昔……幼馴染の仲良かった女の子が、小さな頃からヒロイン適性を見出され、そこに小等部から通うことになった。というのを聞かされていたからだ。


 ………残念ながら、その子はアビスに襲われ、命を落としたと聞いた。死体すら、残らなかったらしい。


 少し、悲しい過去を思い出してしまった。


「こほん、それでその話を聞いて俺にどうしろと────はっはーん、少し話が読めましたよ」


 なんとなくだけど、分かった。


「三校合同、ということはここ瑠璃学園もしくは、他の二校の所でやるのでしょう?つまり、俺は身バレしないようにここで大人しく────」


「少年、君には女装をしてもらう!!!!」


「────しとくようにってえ?」


 女装をしてもらう────女装をしてもらう────女装をしてもらう────(エコー)


「いいっすよ別に」


「びっくりするほどの即答ですね」


「本当によろしいのですか?」


「まぁ?今更女装で恥ずかしがるような羞恥心も持ち合わせていませんし」


 そんなもん、とっくのとうにアビスに殺された時に天国まで持っていかれたので。女装程度だったら……まぁ、うん、別にありやな。ってなる。


 それに、中学生の友達に、ゴッテゴテのゴシックリロリータが似合う女装趣味の男の娘とかいたしな。あんまり俺自身に女装に対する否定心がない。


「……私が言うのもあれだが、本当にいいのか?」


「いいですよ。なんなら少し楽しみまであります」


「それでは裕樹さん。こちらに瑠璃学園本来の制服があります」


「メイクは、私に任せてくださいね。とびきり可愛くしてあげます」


「よろしくお願いします。渚様……あ、長月さん、ボイスチェンジャーあります?流石に両声類じゃないので、女声は流石に出ないです」


「う、うむ……あるが……おかしい、こんなすんなりいくとはおもわなんだ」


 行くわよ俺!メタモルフォ~~~ゼ!



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