第9話

「肝試しをしましょう!」


「どうした急に」


 夕方まで遊び、夜は奏多が用意してくれたBBQセットで美味しい肉を沢山食べた俺たち(俺はまだ周期が来ていないので、焼肉奉行と化した)。一休みしてのんびりタイムに入っていたら、凛が突然立ち上がってそういった。


 だがしかし、凛と花火様以外はそこそこ眠そうな顔をしている。沢山遊んで、たくさん疲れたからだろうな。この提案は、確実に却下される。


「ごめん、眠い」


「右に同じく」


「そもそも、初日に夏の醍醐味を全部やる必要はありませんよ凛さん。さ、今日は大人しく寝ましょう?」


「あ~~~れ~~~」


「どなどなどーなーどーなー」


 奏多達にドナドナされながら連れていかれる凛を見送り、チラリと花火様を見る。


 ────意図しない形で、二人きりになってしまった。そう思った花火様も、若干頬を赤く染め、自身の青髪を所在なさげに梳いていた。


「花火様」


「……はい」


 少し、話しておきたいことがあった。それは、俺が正式に非公式ギルドである『マルドゥーク』に入隊した時のこと。


 アシュリー様との守護ガーディアンの誓いを断った際に使った言い訳である、花火様の下級生プリンセス……いや、まぁ俺は男だからプリンスになると思うのだが、それになるという約束。


 結局、あの後有耶無耶になり、お互いそれぞれ忙しかったので後回しとなっていたが────そろそろ、受け入れるときである。


「あの時の約束────花火様との守護ガーディアンの誓い、夏休みが終わったら、正式に結びましょう」


「……っ、いいんですか、裕樹さん」


「はい。前断っていた理由も解消したことですし、これで大手を振って貴女の下級生を名乗ることができます」


 前までは俺とジャガーノートの相性関連悩んでいたため、花火様の下級生として相応しくないと思って断っていたが、ようやく下準備が出来た。


「是非貴女を────私のガーディアンとして、お迎えさせてください」


「────はい。是非、貴方を私の……私だけの下級生プリンスに任命します」


 こうして、世界最強と世界で唯一のイレギュラーが誓いを結ぶことになった。


 花火様は、あと一年しか学園には居られない────いや、多分だけど彼女のことだからこのまま学園に残って教導官として働くとは思うけど、それまでしっかりと学んでいこう。


 これからも、彼女や、仲間をたくさん守るために………。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回予告!


「夏休みが終わったら、何が始まるか知ってるか?少年」


「また変なノリが始まりましたね……」


「知らんのか?そう、ヒロイン大運動会が始まるっっっ!!!」


「東京御三家と呼ばれる、私達瑠璃学園、千代田にある『聖白百合女学院』、足立の『雛罌粟女学校』の三校合同で行われます」


「……はっはーん?話が少し読めました。つまり、身バレしないようにここで大人しく────」


「少年、君には女装をしてもらう!!!!」


「────しとくようにってえ?」


次章『小鳥遊、女装するってよ』

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