第6話
「それじゃあまた新学期でね裕樹くん!ごきげんよう!」
「んーまっ!んーまっ!」
「はーい、ごきげんよう。また元気な顔を見れるのを楽しみにしてるよ、二人とも」
いやーん!反則ー!と叫びながら逃げていくクラスメイトを見送り、これでいよいよ教室に残るのは俺だけとなった。
テストの順位発表も終わり、いよいよこの瑠璃学園も皆楽しみな夏休みへと突入する。俺は少しだけ懸念点(奏多)があるので、若干の恐怖を感じてはいるが。
「………夏休み……な」
本音を言うならば、夏休みなんて捨てて、一つでも多くのフェンリル研究所を潰して、これからヒロインたちが狙われるという確率を減らしたい。だけど、これ以上やったら花火様が色んな実力行使で止めに来る。それ即ち、俺の貞操の危機。
バカンス────奏多に提案された別荘にて、二週間程度そこで過ごす。そこには、俺を肉食獣のような目で見つめる複数の乙女たち。
「………………」
これ本気でフェンリル研究所潰し回っていた方がいいのでは?本気で少しそう思ってしまった。
「はぁ、とりあえず帰るか」
もうどうにでもなーれ。当日以降は、殆ど死んでいる性欲が暴走しないように祈るのみである。
「うーーーーみーーーーー!!!」
「いやー、本当にいい天気だな。太陽滅べばいいのに」
「暑さに弱いというのを超えてませんかそれ……」
夏休みが始まって二週間。各々の帰省も充分に堪能したということもあり、奏多の別荘に集合した俺たち。
ちなみに、この際俺は瑠璃学園から一歩も出れなかったし、なんならずっと花火様が着いていた。
その間に、またもや俺の三大欲求周期が来てしまい、花火様相手に暴発してしまって真っ白になったのはご愛嬌………ご愛嬌?である。
とまぁ、そんなことがあったので性欲については何も問題は無い。俺はこの夏、賢者モードで過ごす。
もう何も怖くない。水着美女だろうが誘惑する美女だろうが、誰だってかかっこいやあぁぁ!!!
ザクリ、と女子たちがはしゃいでいる間に、ビーチパラソルを砂浜へと突き刺す。この体になって、こういう重たいものも簡単に持ち運べるようになったからすっごい楽だ。
あんまり不謹慎だから言いたくないけど……この体、意外といいんじゃね?(ボソッ)
だって、疑似瞬間記憶もあって実質的に頭も良くなってるし、力も強くなったし、女の子達を守ることもできるし。食べることは好きだったので、そこだけは残念だが……。
「………いやいやいや、そんなこと考えたらダメだろ俺」
俺の体はアビスによって生かされてるんだ。俺を殺した敵に感謝?そんなものはありえない。
「あ、あつい……やばい」
「ひづみ?」
ビーチパラソル、横になれるタイプの名前知らないよくプールサイドとかにありそうな椅子を設置し、休憩ゾーンが出来上がった頃、ふらふらなひづみが足を引きずりながらやってきた。
彼女は、周りの子と比べたらスレンダーだが、黄色のパレオを見事に着こなしており、全く引けを取らない。俺の性欲が健在なら、もう遠慮なく胸の谷間ガン見してるね。
「ご、ごめん裕樹。私休憩」
「大丈夫か?ほれ、ドリンク」
「さんきゅ」
設置した椅子に横たわり、クーラーボックスでキンキンに冷えているドリンクを投げ渡す。見事にキャッチし、見事な速さでキャップを上げてそのまま流し込む。
「ふぅ……あー、生き返るぅぅぅ」
「現役JKとは思えないくらいおっさん臭いな」
「夏だけはどうにも苦手なんだ。海なら行けるかとは思ったが……」
「あんま無理しないようにな」
「んっ……」
ポンっ、といたわるようにひづみの頭を撫でてから、はしゃいでいる奏多たちの所へ向かう。
さて、ここで一つ問題があることをお気づきだろうか。
そう、俺の体ってそもそも今泳げるんか?
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