第5話

「花火様」


「はい」


 そして花火様は小学生の頃から、ヒロインとなるべく英才教育を受けてきた人の一人だ。きっと、世間一般が夏休みで遊んでいるあいだ、恐らく訓練や座学に明け暮れていたのだろう。


「素敵な夏休みにしてあげます」


「────それはもう……はい。楽しみにしてます」


 この人を楽しませたい。ただただ純粋に、そう思った。










(主に凛のみが頭を抱えていた)定期テストが終わった。


 昼休みを挟み、午後には全教科の採点が終わり、学年順位までが発表される。なんて素早さだ。


 教科は国、古、数A、数1、化、英、社の基本五教科五科目に加え、ヒロイン特有の『戦闘術』が加わりMAX800点満点の内容だ。


 個人的な主観としては、国語、古典、化学、英語、社会、戦闘術は擬似完全記憶により満点であると言えるが、数学はなぁ……。


 公式は完全に覚えてるんだが、応用となるとちょっと難しくなる。確率がなぁ……ちょっとめんどくさいんだよなアレ。


 恐らく80後半か、運が良ければ90点台に乗っているだろう。


「ぷへ~」


 そして昼休み。もはやいつものメンバーと言っても過言では無い五人で、食堂のテーブルに囲んで座った瞬間、凛が頭から湯気を出しながら突っ伏した。


「必要十分条件………?真?偽?なんでわざわざ難しく表そうとするの……?」


「それはそう。私は解けたけど」


「私は余裕でした」


「ひづみちゃんも胡桃ちゃんも意地悪っ!」


「あんまいじめてやんなって二人とも」


 ほーれ、よしよーしと若干幼児退行し始めた凛の頭をわしゃわしゃと撫でてメンタルケア。ちなみに、凛の前では言わないけど俺も余裕だった。


「奏多……は聞かないでもいいか。どうせ全教科満点だろうし」


「あの……裕樹さん?少しは構ってくれないと私、少し寂しいです」


「じゃあちなみに聞くけど、テストどうだった?」


「余裕でした」


「「「知ってた」」」


 だってあなた前の中間テスト800満点でしたもんね。学年一位さん。


「しかし、テストも終わったしこれから夏休みだな」


 7月21日から、8月31日までの長い長ーい夏休み期間。この間の哨戒任務及び防衛任務は、前々から学園に残るヒロインでローテーションを組み、必要最低限で回している。


 そして、長月さん直々に夏休みを取れと命令が下された俺氏。学園長より直々に言い渡された場所は────


「バカンス、楽しみですね裕樹さん♡」


「ウン、ソウダネ」


 ────奏多が長月さんに直談判したことにより、奏多の別荘で過ごすことになった。


 別に、過ごすことは何も問題は無いのだ。そのことを花火様に伝えた時は、少し楽しみにしていたし、奏多の厚意でひづみや、実家に一度帰る組も招待してもらえるようになっている。


 問題は俺の貞操がめちゃくちゃ危ないという点ですねえぇ。一度花火様相手にやらかしといて何言ってんだと思うかもしれんが、まだ童貞だから(小声)。


 見ろよ、奏多の目。かんっぜんに捕食者の目をしている。油断すれば、すぐさまパクッと喰われてそのまま既成事実を作られるだろう。怖い。


 ……向こうにいる時は常に花火様に傍にいてもらおう。さすがに花火様がいれば無理やりなんて起こらないだろう。多分。


 なんて会話をしていると、昼休み終了のチャイムがなった。この後各々で廊下に張り出されたテスト結果を見てから解散。そのまま夏休みだ。


「さて……まずは当たり前のように一位が奏多と」


 ででん!と奏多の名前の上に満点を示す800と、一位の数字がある。


 そのまま目線をスライドさせ、自分、もしくは知り合いの名前を探していく。


 俺の名前……俺の名前……お、あった。


「17位か」


「おめでとうございます。前回よりも上がりましたね」


 総合得点は784点。皆頭が良すぎるっぴ……っ!。


 順位順に言うと、胡桃が753点で34位。ひづみが746点で48位。


 そして、凛が735点で97位。やはり苦手科目の数学が足を引っ張りまくっているようだった。


「数学なんて嫌いー!!」


 そんな凛の叫び声が、虚しく一年の廊下に響くのだった。




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こちらの作品ではお久しぶりですね。コツコツコツコツ書いて何とか出せました(途中の構想を忘れたなんて言えない)

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