第4話
「続いて第三位ですが────」
「え、この流れまだ続くの?」
結局、第二十位まで発表された。
「……なんで俺こんな疲れてるんだろ」
あの謎のアンケート発表から半日。太陽が赤くなり、空が夕焼けに染まる景色を見ながら、俺は帰路についていた。
結局、あのアンケート発表はおよそ三時間程度続き、濃いに濃すぎる内容を延々と聞かされたため、あまり疲れにくい俺の体も疲労感が溜まっている。
しかも、あのアンケート発表が終わったあと────
『罰として、裕樹さんは監視役の方も含めて、ここにいる皆と水着デートしましょうね』
────と、それはもうとてもとても素敵な笑顔で言ったのだった。よく、笑顔は元々威嚇の意味が含まれているとか聞くが、間違ってはないと感じた瞬間だった。
「裕樹さん」
「?」
校舎を出ようとした直後、名前を呼ばれたので振り返る。そこには、肩ら辺で小さく手を振りながらこちらへ歩いてくる花火様がいた。
「花火様。今日は早いんですね」
「この時期はあまり仕事がありませんから。定期テストが終わるまでなら、毎日一緒に帰れますね」
「……ッスゥー」
唐突なセリフに、息を吸い顔を逸らす。こうでもしないと、花火様の言動にドキドキしてしまうからだ。
今の俺は、前よりかは感情の蓄積により少し態度に現れるようになったのだが、我慢すれば普通に抑え切れる。何故抑えているのかというと、最近の花火様がめちゃくちゃ積極的だからである。
まじで、うっかりすると惚れる。そのくらい、感情がほぼ死んでた頃から惹かれているのだ。
「……そうですね。では、明日から待ち合わせとかします?」
「それは素晴らしい提案ですね。では、この時間帯くらいに玄関でどうで────裕樹さん」
「?どうしま────おっと」
中庭を歩いていると、花火様が急にしゃがみ、咲いている花に隠れるようにした。俺も事情を察知し、同じようにしゃがみ込んでから、草と草の間から覗き込んだ。
なんとそこには、めちゃくちゃいい感じに木の陰でイチャついている百合ップルの姿が!
「微笑ましいですね」
「えぇ。まだ確認はされてないですけど、百合はいずれ癌にも効きますから」
ちなみに俺は、頭痛が治ったことがあります。マジすげぇから百合って。あれ絶対万病に効く薬だよ。
夕焼けに照らされながら、両手を繋ぎ、おでこを合わせている百合ップル。いいものが見れました。
「邪魔しちゃ悪いですから、なるべく静かに移動しましょう」
「了解です」
そして、中庭を抜けるまでしゃがみながら移動する俺たちであった。
「そういえば、ですが」
「?」
その後、何事もなく家に帰り、花火様の夕食を作り終えて皿洗い中。リビングで寛いでいた花火様が声を上げた。
「夏休み、裕樹さんの監視役は私が着くことになりした」
「……あー、まぁでしょうね」
専用機を手に入れたことにより、完全に俺を実力で御せる人が花火様しかいない以上、こうなることは分かっていた。
「ですが、花火様は実家に帰らなくて大丈夫なんですか?」
「えぇ。そもそも私は瑠璃学園が実家みたいなものですから、問題はないです」
「……?」
花火様の言葉に首を傾げる俺。どういう事なのか聞こうと思ったが、直ぐに意味を理解した。
「その……すみません花火様」
「別に気にしてはいませんよ。瑠璃学園に拾われたのは物心着く前からでしたし……それに、貴方に出会えましたから」
花火様は、襲災孤児であるのだろう。この時代では特に、珍しくもない。アビスに両親が殺され、子供だけが生き残ってしまう。
瑠璃学園含む、多数の『エルドラド』は、女子限定ではあるのだが、こうした襲災孤児を積極的に受け入れて、ヒロインとしての適正を示した子供には、希望すれば幼少期の頃から英才教育が行われる。
小学生。早ければ幼稚舎の時からジャガーノートを握り、魔力の使い方やギフトの覚醒、軽い戦闘訓練などが行われ、中等部に移動する頃には既に同い年とは実力が頭二つくらい飛び抜け、早くからヒロインとして名を挙げていく。
もちろん、適正のない子やヒロインになることを拒否した子にも、独り立ちできるまで十全なサポートもされている。本土の方には、瑠璃学園初等部があり、孤児の子はそこで小学校課程を学ぶのである。
それと並行して、里親探しもしているので、瑠璃学園を運営している人達は、恐らく聖人か何かである。
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先週は熱中症っでぶっ倒れてしまい、更新が出来ませんでした。何度も言いますが、エタっていることは絶対ないので、のんびりお待ちしていただければ幸いです。
熱中症対策、マジで徹底してくださいね。久しぶりですよ、39度以上の熱出たの。死にそうでした。
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