第3話
「コイツ、本当にどれだけのヒロイン堕とせば気が済むんだ?」
「いつかジャガーノートで背中刺されそう」
「いや、俺の場合刺された所ですぐさま再成す────ってそうじゃないそうじゃない」
流れでノリツッコミ的なことをしてしまったが、一つ言いたい。
「別に俺、そんな堕としてるとかしてないぞ?」
「「異議あり」」
否定した瞬間否定返された。
「はい。それでは今から裕樹さん裁判を始めます。被告人は裕樹さんで、検察官はひづみさんです。弁護士はいません」
「検察官のひづみです」
「いきなり俺にとって不利すぎる裁判始まったんだが」
ダンダン、と胡桃さんが机を素手で叩く。あの名称不明のハンマー的なヤツの代わりなのだろうか。
「それではひづみさん。裕樹さんの罪状をどうぞ」
「裕樹は、ここ二ヶ月の間で一年生の約七割のヒロインを惚れさせました。一部にはガーディアンガチ勢もいましたが、全くもって関係なしです」
「異議あり!」
「却下です」
「おいコラ裁判長!」
「その中には当然胡桃も────」
「すとっぷ!すとっぷひづみさん!」
一瞬で場がカオスになった。とりあえず、一つずつ確認させて欲しい。
ぜぇぜぇ、と赤い顔で息を吐いてる胡桃。静かになったタイミングで口を開いた。
「まず、俺は自発的に惚れさせた覚えは無い。確かにここ最近同級生と会話する機会も増えたし、なんかちょっと距離近いなーと感じることもあるが、まだスキンシップの範囲内だろ?それに、女の子はそう易々と惚れない」
「お前それ花火様のお見合い決闘で負けた同級生の子達に面と向かって言えるのかそのセリフ」
スっ、とゆっくり顔を逸らした。そういえば即落ち二コマ並の速度で口説いていた先輩と堕ちた同級生がいたな。
「……い、いや……アレは同性だし……」
「そもそも、恋愛対象が同性の子も例外なくお前に気がある、もしくは惚れているのどちらかだ。ここまで来たら、もうお前からヒロイン絶対惚れさせるフェロモンが出てるって言われても信じるレベル」
「いや、さすがにそれはないだろ……」
今では同級生とそれなりに話せるが、最初は少し嫌悪感を出てた子も居たんだぞ?今は態度が軟化してるけど、舌打ちとかされたし。
あの時はちょっと心が傷んだ。
「ここで私からですが、新聞部の友達がアンケートをお見せします」
どこから取り出したのか。というかそもそもなんでアンケートなんか準備されているのか。ツッコミたい所は色々とあったが、胡桃さんがクリアファイルから出した紙を受け取る。
「こちら、『ぶっちゃけ裕樹さんの好きなところor魅力を感じるところ』アンケートとなってます」
「なんて???」
いや、正直聞き取れてはいたんだが、脳が言葉を受け付けなかった。
「対象は一年生全員の250名です。第一位は『なんと言ってもふとした時に見てしまう驚きの吸引力』です」
「ダイ〇ン以上だな」
「吸引力の変わらない掃除機じゃねぇよ」
チラリと渡された紙を見る。……確かに、第一位にはそう書いてあるな。
だがしかし、前にも言ったとは思うが、俺の顔は超絶イケメンって訳じゃないぞ?普通よりは整っていると言われたことは中学生の時にあるが、もっとモテてるやつが友達にいたぞ?
それこそ、周囲の視線を集めてしまうような飛び切りイケメンなやつが。
「なぜかは分からないけど見ちゃう。視線があって笑顔向けられたら鼻血もの。滲み出るエロスなどなど、沢山の意見がありました」
「あ、それちょっと分かるかも」
「確かに、最初に出会った時は裕樹さんから目が離せませんでした」
「おいそこ二人」
いつの間にやら、凛と奏多が勉強を中断してこっちに来ていた。
「勉強はどうした?」
「今は休憩中です。それに、何やら裕樹さんの魅力を語っているとしたら私は外せないでしょう」
「裕樹くんの友達一号の私も外せないよね!」
「これ検察官側が増えただけでは?」
ボブは訝しんだ。
「第二位は『やることなすこと性癖ストレートすぎる。こんなん惚れるわ』です」
「「「あぁ~」」」
「待て待て待て待て待て」
ツッコミたい。色々とツッコミたい。
まずそこ三人。どうして声を合わせて納得した。別に、俺としては普通に接しているだけだぞ?
確かに、たまーになんで俺こんな行動してんだろーなーと思う時はあるが、まだ常識の範囲内だろ。
「裕樹さんの行動は、いちいちいちいちキュンキュンさせるものが多いんです。さり気なく守るために抱きしめてくれたり、困ってる時は自然と手伝ってくれたり、ピンチの時は助けてくれたり……なんなんですか?惚れさせたいんですか?」
「断じて違うが???」
あと奏多。そういうことを顔を見ながらまじまじと言わないでくれ。少し恥ずかしい。俺としては普通にしているだけなんだけどな。
だって、いくらヒロインと言っても困ってたら助けるなんて当たり前だし、守る時は身を呈すなんて当然だろ?
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